研究員ブログ

トークサロン「近代化遺産と地域づくり」を開催しました

こんにちは。研究員の檜垣です(^^)
しばらく研究員ブログの更新が遅れておりました・・・申し訳ありません。
いよいよ12月。2013年も残すところあと少しになりました。今年1年のまとめを行う時期ですね。
ECPRでも、平成23年度より行ってきました近代化遺産調査事業の総括として、トークサロン「近代化遺産と地域づくり」を開催しました!
今回はそのトークサロンの内容についてご報告します。

県庁本館(縮小)

近代化遺産の1つ、愛媛県庁舎本館

1.近代化遺産とは
研究員ブログや当センターのfacebookページでも何度か取り上げてきた近代化遺産ですが、おさらいとして簡単に説明します。
近代化遺産とは幕末から第二次世界大戦終了時までの日本の近代化を支えてきた産業・交通・土木などに関わる建造物の事を指します。
愛媛県内では例えば、愛媛県庁舎の本館や大洲市の長浜大橋、他にも砥部町外山のみかん小屋群や別子銅山の旧端出場(はでば)水力発電所、かつての愛媛鉄道の隧道(トンネル)群などが挙げられます。
つまり、その土地に根付いた産業や当時の人々の生き方を今に伝えている建造物が近代化遺産と言えます。

2.今回のトークサロンの意義
DSC_0005えひめ地域政策研究センターでは、平成13年度からの2年間と上記の通り平成23年度からの2年間の合計2回に渡り、愛媛県より委託を受けて近代化遺産の調査を行いました。
そして、平成25年にはそれらの成果をできるだけ多くの皆さんに知っていただくため、『えひめの近代化遺産』という冊子を発行いたしました。
今回のトークサロンでは、調査に当たってご尽力をいただきました先生方をお招きし、「近代化遺産を地域資源としてどう活用していくべきか?」といった内容についてお伺いしました。

 

3.トークサロンの内容
さて、では肝心の内容です(前置きが長い!)

まず最初に、産業考古学会会長・日本大学理工学部上席研究員の伊東孝 氏から『近代化遺産と地域活性化』と題した基調講演を伺いました。

基調講演1基調講演では2回行われた調査の概要説明や専門の土木遺産の説明、近代化遺産の保存については使い続けることが大事で、そのためにヒトやモノのネットワーク作りなどが必要になってくるといったお話を伺いました。また、気づいたヒトが気づいた時に活動することが重要であると、近代化遺産の活用に対してエールをいただきました。

 

その後、伊東先生に加えて二村悟 氏(工学院大学建築学部建築デザイン学科客員研究員)と曲田清維 氏(愛媛大学教育学部教授・副学長)、そして当センターの近代化遺産主任調査員である岡崎直司 氏の4名によるトークセッションが行われました。 コーディネーターの岡崎氏が時にユーモアを交えながら、県内の近代化遺産に関する所見などを伺っていきました。

トークセッション1

二村先生からは産業遺産の主だったものの説明および、近代化遺産は実物に触れながら県下の産業を学ぶことができる生きた学習教材であるため、今後もこれらを県民の財産として後世に残していく活動にもぜひご協力いただきたいといったお話を伺いました。

また、曲田先生からは愛媛県の学校建築を中心にご紹介いただき、積極的に公開したり、使い続けることで大事にしていく工夫が必要だと伺いました。

岡崎さんからは、落穂ひろいとしてお2人が紹介された以外の近代化遺産について補足説明を受け、将来への危惧と保存の重要性を伺いました。

伊東先生からは文化財の広がりについて戦後の物件を含めて保存や登録対象をどうやって広げていくかが大切であること、また対岸の広島県や岡山県との情報連携を行うことも大事であると伺いました。また地域活性化については愛媛県として独自の実施条例を作れば日本全国への影響も与えることができ、新しい切り口となることで市民の方も含めて活性化していくのではないかとのお話でした。総括としては以下の3点が近代化遺産を活用した地域活性化に必要とのことでした。

  • ●行政・大学・住民など役割分担を自覚し実施すること
  • ●オンリーワンを目指すことが大切
  • ●大切に使い続ける工夫が大事

また、会場から今後近代化遺産を活用するにはどうすれば良いかといった質問に対して、まずは現地の人々に会いに行き、良く話をすることだという回答が出されるなど、来場者との意見交換も行われました。

 

お越しいただいた皆様からも概ね好意的な評価をいただき、近代化遺産のPRにも役立つことができたトークサロンとなりました。 個人的には、使い続けること、人々に愛されることが最も良い保存であるというお話を新鮮に感じました。 単に「良いものがある」ということを知らせるだけではなく、良いものを磨き、高めていくことが大切というのは他の地域資源にも当てはまる内容だと思います。

文中でもご紹介しました『えひめの近代化遺産』はまだ在庫がありますので、ご興味を持たれた方は下記のお問い合わせ先までお電話ください。 またトークセッションでコーディネーターを務めた岡崎氏が近代化遺産など地域の建築について紹介する「歩キ目デス&足ラテス」を連載している地域情報誌『舞たうん』は当センターのホームページからバックナンバーをご覧いただけます。

 

■お問い合わせ先

(公財)えひめ地域政策研究センター

〒790-0065 松山市宮西1丁目5-19 3階

TEL:089-926-2200

(月~金の8:30~17:00)

HP:http://www.ecpr.or.jp/