研究員ブログ

0.1トンの体!?

職場柄、さまざまなところで名刺交換やら自己紹介をする機会が多い。そのときに相手に覚えてもらうためにはいささかのテクニックが必要となってくる。そのテクニックが上手なのが松本研究員である。

松本研究員は伊予市からの派遣職員で、自己紹介をこのようにつづっている。

はじめまして。4月1日付けでえひめ地域政策研究センターに来ました松本 宏です。伊予市(旧双海町)出身です。えひめ地域づくり研究会議の事務局を担当させていただきます。県内まちづくり活動の猛者の皆さんに‘厳しく’そしてたまに‘優しく’接していただければ幸いです。

と、ここまでは普通なのだが、最後の文章が非常に印象深い。

0.1トンの体を俊敏に動かして頑張りますので、よろしくお願いします。

確実に最後の文章で「どんな人なのだろう?」と思う人が多いはずだ。実際にセンターにやってきた人はたいていすぐに松本さんの名前は覚えていただいている。100キロは0.1トンであるから、まったく間違っていないわけで、これを100キロと出しても良かったのに、あえて0.1トンとしたところが非常にユニークであり、たいへんインパクトのある表現になっている。こういう言葉のマジックって意外と大事だなと思った。

そして、この松本研究員の自己紹介を受けて、「さおだけ屋はなぜつぶれないのか?」というベストセラーとなった本の「航空料金の割引サービス」についての事例紹介のことを思い出した。

[問] 

同じ目的地に行く航空会社が2社(A社・B社)がある。どちらもキャンペーン期間中ということで以下のサービスを行っている。どちらの航空会社を乗客は多く利用しただろうか? 

A社「乗客100人のうち、10人の方を運賃1万円を無料とさせていただきます!」

B社「乗客100人全員を運賃1万円のところを10%割引運賃とさせていただきます!」

この2つのうち、人々が実際に選んだ会社はA社が多かったという結果があがったそうである。10分の1の確率で0円になるかもしれない人々の期待により、A社を選んだわけである。でも、ようく考えてみると、9割のほうが大多数であり、10分の9の確率で10,000円を支払うのであり、1割しかサービスの恩恵が無い。それよりも、100%の確率で全員が9000円の運賃で乗れることのほうが実は全員がお得になっているわけであるし、サービスの恩恵を受けていることが確実に実感できる。

ここで、もうちょっと考えていきたいのは、各社の収益である。

A社・・・10,000円×(100ー10)人 =900,000円

B社・・・(10,000-1,000)円×100人=900,000円

A社もB社も実は同じ収益なのだ。それなのに、A社のほうが乗客が殺到したという。このあたりに「数字のマジック」があり、心理的なインパクトが与える影響の差がでるのだ。このカラクリに気づける人が数字に強い人というのであろう。

さて、話がすこしずれたが、このように同じ内容のことを言っているんだけれども、言い換えることによって「印象度」がかわってくることにより人に与える影響というものが大きくかわってくるということである。そういった意味において「プレゼンテーション」というものの奥深さということを教えていただいたように思う。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

四国経済連合会産業委員会主催講演会

29日(火)、四国経済連合会産業委員会主催の講演会が松山全日空ホテルを会場に行われました。テーマは「地域イノベーションと産学連携」。地域イノベーションや起業家形成にくわしい横浜国立大学大学院教授の三井逸友教授を講師に、「今日における地域イノベーションの可能性-地域の再生に四国の強みを活かす」という演題で講演をしていただきました。

講演では、まず「『地域問題』の現実」ということで、現在の地域間格差(高齢化、所得、失業率、経済指標など)の現状説明があったのち、それぞれの背景には例えば「経済のグローバル化」や「生活様式の変化」、「バブル崩壊による地域振興策の破綻」、「地方分権化の停滞」、「地域コミュニティの崩壊」などがあると述べられていました。

このような経済面でのグローバル化が見られるようになると、今までの「ものづくりの経済(=画一化された商品を大量かつ安価に作る経済)」では立ち行かなくなることが予想され(たとえば、安価な労働力の地域へどんどん工場が移転してしまう)、「量」や「値段」でない、「質」や「オリジナリティ」といった新しい価値で勝負することが求められ、多様化した人々の好みにあわせて新しい商品や新しい製造方法を創り出す必要がでてきます。

そういう「新しい価値を創り出す(=イノベーション)」経済社会のことを知識基盤経済(=研究開発などによって生み出される知識をいかに新しいプロダクト(商品やサービス)やプロセスに結びつけて市場や企業に導入し、経済成長を維持し持続的発展を可能にしようとする経済)」といい、知識基盤経済においては「地域こそが創造と革新の原点」であり、「新しい価値を創造した経済活動は地域で生まれる」と述べられていました。

なぜ、地域こそが創造と革新の原点となりうるのか。それは地域にこそ「新しい価値の創造の源泉」があるからです。たとえば、普段ある何気ないモノが実は価値があったりして、それがビジネスのチャンスとなるという流れの中で、普段ある何気ないものとはまさしく「地域にある」わけです。

問題はその地域の何気ないモノ(=これを「暗黙知」ともいいます)に価値を見出すのは「地域の人間」です。ただ、その価値を見出すのは非常に難しい。そのためには見出す能力といったものが必要になってきます。それを身に着けるためのものが「地域を知るための学習」となるわけです。

ただ、たったひとりが地域にあるモノの価値に気づき、それを活かして起業しようとしても、いろいろと不都合や困難な面がでてきます。それを克服するのに必要なのが「人的ネットワーク」です。

たとえば、これまでにはないモノをつくる際に、自分では解決できずに、どうしてもこえなければならない新しい技術が必要になってきたとします。その技術を開発してもらうために必要な研究者や技術者を自分が知っておかなければ前に進みません。しかも、その研究者や技術者は自分が見出した新しい価値について理解してもらう必要があるわけです。そうなると、遠くの人よりもより地元に密着している人物のほうがわかりやすくなります。

また、資金援助をお願いしたいと思っても、遠くの金融機関よりも近くで地域に密着している金融機関を選んだほうが話がしやすくなります。それだけ地域のことを知っているからです。また、それにかかるさまざまな規制などを撤廃するためには行政の協力も必要になってきます。そうなると国よりは地方自治体のほうが都合が良くなってきます。

そうした地域を軸とした住民、行政、企業、研究者や金融機関といった枠組みで産業をおこすことができる環境や状態のことを「産業クラスター」と呼び、それが「地域イノベーション」を促進する環境となるわけです。

ただ、研究者側も金融機関側、行政の側も、ただ待っているだけではだめで、攻めの姿勢というか、積極的に地域のことを知り、連携していくことを通せば、また新しい価値を見出し、起業家精神をもつ人材育成を図ることにもつながりますし、あわせて人的ネットワークを広げることにより、自分たち自身も研究活動やビジネスチャンスをつかむことが重要になってくるということです。ゆえに、「産官学」の連携が叫ばれているのでしょう。

しかしながら、ここでの最大の問題点は、地域に関心や問題意識を持ち、新しい価値に気がつき、起業家精神をもつ人材をどれだけより多く育成、輩出、発掘するかという根本なことでしょう。残念ながら時間の都合で講演の中では多くは語られなかったのですが、「起業をした人はその地域で高い教育を受けて、一度外へでて地域に帰ってきた人材が多い」というお話しは、過疎で苦しむ地域にとっては非常に勇気付けられる内容だったように思います。地元で起業したいと思えるような教育を行えば、都会に出て行った人が地域へ帰ってくるということにつながるというのはちょっと言い過ぎでしょうか?

「まちづくりは人づくり」、「まちづくりには『よそもの』『ばかもの』『わかもの』」とよく言われますが、どんなことでもやはり人材育成ということが大きな鍵を握るということなのでしょうか。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

環境自治体会議うちこ会議

5月23日から25日の3日間、「第15回環境自治体会議うちこ会議」がエコロジータウンを目指す愛媛県内子町で開催されました。

環境自治体会議とは、環境自治体をめざす自治体同士が、情報交換や相互交流、研究・実践活動を進める場として創られたネットワーク組織です。今回は、地球に生命のあるもの全てに影響を与える環境問題の発生に、持続可能な社会を目指し、環境に配慮した暮らしを実践するとともに、全国の環境先進自治体や団体等との交流及び情報交換の場を設けることにより、国民、環境団体、自治体関係者等の環境に対する意識の高揚を図るために開催されました。

第15回目の環境自治体会議は初めて四国で開催され、「暮らし再考 自然再生 ~今見つめなおそう 真のエコロジー~」のテーマで、環境自治体会議の会員(59自治体)や県内外から約750名の参加がありました。

初日は、地元“劇団オーガンス”が環境問題を表現した「僕らもみんな生きている」の公演で幕を開けました。全体会第1部では、地元内子町長が話題提供者となり、「歴史的景観保全が果たしたもの」について4名の論者により、歴史的景観の重要性、原風景の共有化などについて討論がなされました。第2部では、「エコロジーのまちづくり 四国から発信!」をテーマにパネルディスカッションが行われました。東京都日野市長がコーディネート役を務め、徳島県上勝町長、高知県梼原町長、高知県馬路村長、愛媛県新居浜市長より、それぞれの市町村のおかれている立場での環境問題への取組や環境に配慮したまちづくりについて報告がありました。ゼロ・ウェイスト宣言(上勝町)、風・光・水・森を生かしたまちづくり(梼原町)地域資源のまるごと活用術(馬路村)マイ箸運動(新居浜市)など先進的な取組の発表がありました。

全体会

2日目は内子町全域で、「石畳・むらの風景づくり」「バイオマスペレットの今と未来」「食の安全から考える農業」など14のテーマで分科会が行われました。私は「近自然工法に見る自然環境保全」の分科会に参加しました。午前中はフィールドワークで、近自然河川工法地、有形民俗文化財の石垣、成留屋の住環境と河川周辺の見学をしました。昼食は小田川のシンボル“榎”の下でとり、地元愛媛大学生の「小田川を守れよもだおやじの挑戦」の紙芝居と国の河川行政の考え方を変る一助になった「五十崎シンポの会」の取組経緯が報告されました。その後、場所を五十崎凧博物館に移し、5人の話題提供者からの発表とコーディネーターを務めた㈱西日本科学技術研究所の福留氏の講話など、環境保全と土木事業、国と地方、町民(企業)と行政などあらゆる観点から再考しながら、水辺環境と土木事業について研鑽を深めました。

榎

※小田川のシンボル“榎”

 

3日目は、内子の伝統的建造物である「内子座」で全体会が行われ、前日の各分科会の報告がありました。どの分科会も“内子らしさ”が随所に見られ、全国から集まった参加者も「町並み・村並み・山並み」を満喫するとともに「暮らし再考 自然再考」されたようでした。最後に、「自らの地域の資源を再考し、豊かな社会を子どもたちへ引き継ぐための新たな一歩を踏み出す」ことを宣言し、全日程を終了しました。

1日目の歓迎レセプション、2日目の交流会と両日に渡り、地元色(食)を出した宴を催すなど、官民一体となってもてなしていただきました内子町の皆さんに心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。そして、お疲れさまでした。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 松本 宏)

研究員の休日

5月26日(土)、まちづくり活動部門の松本、坂本、谷本の各研究員、企画研究部門の渡邊研究員の4名で、伊予市双海町にある若松進一さんの別荘「人間牧場」を訪問しました。

この日、「人間牧場」では、「双海町少年少女おもしろ教室(事務局:伊予市教育委員会社会教育課双海分室)」と呼ばれる公民館を中心とした地域づくり事業が行われており、研究員4名もお手伝いということで参加しました。

この「少年少女おもしろ教室(以下、おもしろ教室)」は、伊予市双海町の小学生を対象に、学校間、異年齢の年間の体験学習(農作業、漁業体験、野外活動など)を通して、3F(ふるさとを知り、ふるさとを誇り、ふるさとを語れる)の子どもたちの育成を図ることを目的とした事業で、子どもたちに大変人気もあり、今年の教室は多数の応募が寄せられて抽選になったそうです。

さて、この日のおもしろ教室では「人間牧場で芋植え体験」ということで、人間牧場の下にある畑に「サツマイモ」を植える農業体験を行いました。昨年度もこの事業を行ったそうですが、イノシシの被害にあったということもあり、イノシシ除けの防御柵をあわせて設置する作業となりました。子どもたちは、ミミズなどの虫に驚きを見せつつも、スタッフの大人の人の指導をうけながら楽しそうに、元気に農作業をし、当センター研究員も、スタッフとして柵の杭打ちやら畑の耕しなど、子どもたちと一緒に汗を流して、子どもたちの元気をもらい、山と海の新鮮な空気を吸い込んでリフレッシュしたようです。

人間牧場から見る双海の海

人間牧場から見た双海町の風景

※ちょっとこの日は黄砂がひどかったです

人間牧場

人間牧場・・・うつっている人物は研究員です

※いわずとしれた若松進一さんの別荘

農作業の様子

農作業をしていい汗をかいた研究員約2名

※松本研究員は「まっちゃん」と呼ばれて、渡邊研究員は「おなべちゃん(なぜか『なべちゃん』ではなく『お』がついていました)」と呼ばれて、子どもたちに大人気でした。

さて、現在、学校現場、社会教育の現場では子どもたちの教育、いわゆる「青少年健全育成」においては「学社融合が欠かせない」と盛んに言われています。

学校だけでなく、家庭や地域と連携をしながら子どもたちを育てていくという「コミュニティーによる教育(地域教育力)」の醸成を図らなければ、いじめや防犯といった子どもたちの教育的諸課題を解決することはたいへん困難な状況、時代になってきており、学校と地域の連携の議論が避けては通れないようになっています。

その学校と地域をつなぐ役割を担うのが社会教育である「公民館」だということが以前から言われています。このおもしろ教室はそういう学社融合の典型的な一つの具体例と言えるかもしれません。

 

なお、若松進一さんのブログ(5月27日の記事)にもこの様子は紹介されています。

http://ameblo.jp/shin-1/day-20070527.html

 

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

地域活性化応援隊派遣相談会の開催について

本日、政府、愛媛県主催による「地域活性化応援隊in愛媛」が西予市米博物館講堂で開催されました。

この相談会は、政府が取りまとめた「地域活性化政策体系~「魅力ある地域」への変革に向けて~」の周知を図るとともに、地域の取組みが具体的かつ実質的なものとなるよう後押しするために開催されたものです。

相談会では、第1部として、事務局から「地域活性化策の推進に関する政府の取り組みについて」の概要説明の後、渡邊地域活性化担当大臣のビデオメッセージ、「えひめ夢提案制度」の説明(愛媛県企画調整課)があったのち、地域活性化取組事例紹介として、「地域活性化伝道師」と呼ばれる二人の方のお話しを聴講しました。

この「地域活性化伝道師」とは、「地域からの相談に対し、適切な助言や取組事例の紹介を行うことのできる民間専門家、行政関係者及び政府関係機関職員を対象として登録された「地域活性化応援隊」の方のうち、民間専門家や一部の行政関係者等について、地域活性化応援隊の中核を担う人材のことをいいます。

今回、愛媛で地域活性化の取組事例紹介をしていただいた「伝道師」の方は、

生重 幸恵(いくしげ ゆきえ)さん
(NPOスクール・アドバイス・ネットワーク理事長、杉並区学校教育コーディネーター)

川又 順次(かわまた じゅんじ)さん
(別府市ONSENツーリズム局観光まちづくり室主幹)

のお二人でした。

生重さんのお話は、ご自分が運営されているNPOが小学校における総合学習の地域指導者の紹介、放課後児童の学校開放といった事業を行い、学校と地域、家庭をつなぐ役割をNPOが担うことで、コミュニティの再生を図ることを通して地域が活性化した事例を紹介していただき、川又さんのお話は、政府が実施している地域活性化に関する事業をうけての別府市における観光事業の紹介をしていただきました。

第2部では、関係省庁の担当者が、個別の地域活性化の取り組みについて相談に応じる相談会が行われ、県内のいくつかの団体が熱心に相談をしていたようです。

まちづくり、地域づくりをやっているんだけど、このあたりが困っているんだけどなあ・・・という方、お問い合わせしてみてはどうでしょうか。お問合せ先は県庁企画調整課または都市再生本部まで。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)