研究員ブログ

井の中の蛙(かわず)

そろそろ梅雨の時期。子どもの頃によく聞こえてきたカエルの鳴き声を、最近聞いた覚えがないのは私だけだろうか。私は「カエル」というと、「井の中の蛙」という言葉を思い出す。この言葉は中国の故事「井の中の蛙、大海を知らず」(荘子)に由来する言葉で、意味について敢えて説明するまでもないが、一般的には「世間知らず」という意味で使われている。 

さて、この「井の中の蛙、大海を知らず」という言葉。この言葉は中国の言葉であるが、その続きを後世の日本人が創作しているのをご存知だろうか。そのうちの1つを紹介したい。

「井の中の蛙、大海を知らず。されど空の蒼さを知る]

この続きの「されど空の蒼さを知る」という言葉を誰がつけたのかはわからなかったが、なんともすがすがしい気分になるのは私だけだろうか。

私はこの4月より宇和島市よりセンターに派遣されてきた。これまで派遣元の自治体のことしか知らないうえに、まちづくりについての知識もほとんどない。そうだ。私はまさしく「井の中の蛙」状態なのだ。

そんな私は、センターに派遣されてから、「まちづくり」に携わるさまざまな方々と出会い、たくさんの刺激を受けながら勉強する日々を送っている。

その際に、自分がいかに知らないことが多いのか、狭い視野でしか物事を考えていなかったかといった、「大海を知らない」自分に落ち込んでしまうこともあるのだが、落ち込むたびにこの言葉の「カエル」がひっそりと私に元気を与えてくれるのだ。

「でも、いいじゃない。それが気づくことが出来ただけでも」

と。井戸の中の蛙だって、大海という外の世界を知らないということはあるけれど、空が青いということは知ったんだよ。まだまだの自分であることを認識すれば一歩進めることができるんだよ。そんなことを井戸の中のカエルたちは私に教えてくれている。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)