研究員ブログ

割り箸はもったいない?

森林保護の観点から飲食店で使い捨ての割りばしを使わないという「マイ箸(はし)運動」が、マスコミで取り上げられる機会が最近多い。森林破壊による地球温暖化などの環境被害を、割り箸の使用をやめ、「マイ箸」を使うことにより環境問題に興味を持ってもらう運動となっている。

こうした一連の報道を見聞きする時に、私の中では、「何か」釈然としない感情が絶えずあった。なぜならば、数年前に仕事の関係で、南予に割り箸工場ができる際、原料となる木材は、市場では流通しない間伐材や端材が使われるとの話しを聞いた覚えがあり、その時は、割り箸は日本人の「もったいない」精神の賜物ではないかと、妙に納得した気分になった記憶があるからである。

平成19年6月10日付けの毎日新聞に、田中淳夫著「割り箸はもったいない?」の藤森照信評が掲載されており、それを読んで、私の中の釈然としない「何か」が見事に解決していると妙に納得してしまった。

記事の関係箇所を抜粋すると、概ね次のような記載である。
「割り箸に関する今後の研究の展開によっては、江戸時代に新たに成立した日本独自の食文化を割り箸が支えた可能性も出てくる。」
「割り箸が森林を壊す説の根拠は、いまだにハッキリしていない。」
「東南アジア諸国から日本に輸出される木材のうち、割り箸用の割合は1%を切り誤差の範囲というしかない。」
「建築用や紙パルプ用に使用される木材量に比べれば、割り箸のそれは誤差の範囲を出ることはない。」
「定性的(性質としては)には箸は森林を壊す。しかし、定量的(量としては)には問題はない。」

日本の食文化として定着している割り箸を、森林(環境)破壊と考え、「マイ箸運動」するぐらいなら、床の食べこぼしを拭くときにティッシュペーパーの使用を止めて、使い古したタオルを雑巾としてリサイクル(再商品化)し、リユース(繰り返し使う)した方が、よほど環境のためになるのではないかと思うのは、私だけなのだろうか。
また、世論の動向に大きな影響力を持つ新聞等は、何を根拠に「マイ箸運動」を取り上げるのか、十分な検証を行った上で報道すべきでないのだろうか。

(文責 まちづくり活動部門 主任研究員 小方 悟)