研究員ブログ

北川正恭講演会

 去る8月23日(木)ジョブカフェ愛work主催により松山全日空ホテルで開催されました。北川正恭氏は、皆さんも良くご存知のことと思いますが、政権公約としての「マニフェスト」を提言し、三重県知事在任中は、地方分権の旗手として活動。現在は、早稲田大学大学院教授をなされるなかテレビ報道番組ではコメンテーターとして活躍されています。
今回は、三重県知事時代の取り組みについて講演されました。

【講演の要約】
 まず、1868年までは幕藩体制による地方分権が確立されており、人口は、石川県は183万人で全国1位、愛媛県は144万人で第3位と各地方に分散されていました。しかし、維新政府は「富国強兵」「殖産興業」をスローガンに近代国家建設のために、中央集権化による政府の地方支配強化を推進してきました。その結果、現在のような中央一極集中となっております。
 しかし、1985年のプラザ合意以降、低金利政策による景気の過熱があり、その後バブル崩壊、産業の空洞化が始まり約10年間は、中央集権制度で努力しましたが、構造改革などにより地方産業の衰退、雇用への悪影響など地域間格差が見られるようになりました。
 最近では、夕張市の財政破綻があります。国の政策が石炭から石油にエネルギー転換されたことにより「炭鉱から観光へ」の町づくりを行いました。これが財政を圧迫し、今後18年間で約350億円の負債を17,000人の住民で返済することとなりました。補助金行政から自立しなければいけないと思います。
 ここで、地方を元気にするために三重県で取り組んだ事例を紹介いたします。まず、行政改革ですが、政策を策定するときに前例主義をやめて、マネジメントサイクルを取り入れ、知事が県民と約束したビジョンをトップダウンで施策に、基本事業に、事務事業に落とし込み進めていくことにしました。こうすることにより、やっている仕事の評価ができます。これを「価値前提主義」と呼んでいます。これを徹底していけば、ビジョン達成に貢献したかどうかによって、予算、組織、定数、人事を評価することができます。地方財政が厳しいなか、これからの地方行政には価値前提に立った政策推進が必要だと思います。
 次に、トップセールスによりシャープの工場建設を積極的に誘致したことです。亀山市とあわせて135億円の補助金を提供しました。この企業誘致で12,000人の雇用と9,000億円の生産額を実現することになりました。公金を動かすときは、情報公開を徹底すれば問題はないと考えています。
 これからは、地方分権の時代であります。地方が変わるために、今までの思い込みを棄て、行政の目線から市民の目線へ変える必要があると思います。

 今回の講演で個人的に感じたことは、国への依存から脱却して地方が自立する時代を創らなければならない。地域が生き残っていくためには「ないものねだり」をやめて「あるもの探し」をしていくべきだと思います。地方で行う「ある物探し」は、地域の特性に合わせて何かしらアイデアを生み出す「人材=お宝」が重要ではないかと考えます。

(注)プラザ合意:1985年9月22日、アメリカ合衆国ニューヨークの「プラザホテル」で行われたG5(先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議)により発表された、為替レートに関する合意。

マネジメントサイクル:計画(PLAN)、実行(DO)、評価(CHECK)、改善(ACT)の4段階を順次行って一周したら、最後の改善を次の計画につなげて、継続的な業務改善をしていくこと。

(文責 企画研究部門 研究員 秋山照彦)