研究員ブログ

総合防災フォーラム ~地域防災力を考える~

去る9月4日(火)愛媛大学防災情報研究センター主催により愛媛県民文化会館真珠の間で開催されました。

まず、「地震災害から命を守る」というテーマで内閣府参事官(地震・火山対策担当)菊池良介氏が基調講演され、第二部は、防災教育、要援護者支援、事業継続計画(BCP)、防災地図、災害伝承について事例紹介され、それぞれの発表について行政の長や担当者から貴重なコメントをいただきました。今回は、基調講演の内容を紹介します。

【基調講演の要約】
 「地震災害から命を守る」 東南海・南海地震対策のポイント
 わが国は、環太平洋地震帯に位置し、地殻変動が激しく地震活動が活発。世界のマグニチュード6以上の地震の2割は日本周辺で発生しています。地震は、日本列島の太平洋プレートと陸側のプレートとが引き起こし周期的に発生するプレート型と、内部の活断層が活動して発生する直下型とに分類できます。なお、日本全国にわかっているだけでも活断層は、2,000以上あり直下型地震は、いつでもどこでも発生する可能性があります。

 政府として、東海地震、東南海・南海地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震と首都直下地震、中部圏・近畿圏直下型地震への対策を講じています。
 特に今世紀前半での発生が懸念されている東南海・南海地震については、関東から九州にかけての広域防災対策を早急に確立していく必要があります。
 そのためには、わが国の地震防災に関する法律体系を整備し、地震対策に関する計画フローに沿って、今後10年間で被害を半減する目標を立て防災戦略や応急対策活動要領などを計画しています。
 また、地震発生に伴う津波についても予報の精度向上、避難勧告・指示の住民への的確な伝達、避難場所・避難路、堤防の整備、津波に備えた訓練・啓発などを実施しています。
 津波から生命を守るためには、揺れたら、勧告・指示に従って安全な場所へ自らがまず逃げることであります。

 続いて、先日発生しました新潟県中越沖地震の現地状況を紹介します。
 今回の直下型地震では次のような特徴が見られました。

 第一に、あちらこちらで液状化現象が見られ多くの家屋、歩道、下水道などが被害を受けました。
 第二に、能登半島地震では、比較的同じ地区内に倒壊家屋の被害が集中する傾向がありましたが今回の地震では、同じ町内でも、無傷の建物と完全に倒壊した建物と混在している地区が多く見られました。

 次に避難所を視察して感じたことは、マスメディアで紹介されない地域の避難所は、場所により待遇に大きな差が出ていました。
 また、公共施設(特に学校)避難所の耐震化が遅れているため避難所として利用できないところもありました。
 ホテルや民間施設を避難所として利用できることが周知徹底されていないため有効に使われませんでした。
 飲料水は、援助物資などで十分確保されていましたが、トイレや洗濯などの生活用水の確保ができていなかったことが今後の課題となりました。
 トイレの絶対数が少なかったため不便を感じました。
 また仮設トイレは照明がないため夜間の使用は不便なことがわかりました。
 災害用の備蓄医薬品の使用期限が切れていたため使い物になりませんでした。

 今後、以上の教訓を活かして避難生活の見直しを行うとともに、災害被害を軽減するためには、地域の人たちの防災力が重要であることを再確認しました。

 「天災いは忘れた頃にやってくる」の諺があるように、いつ・どこでも・どんな災害に見舞われるかもしれません。大切な命や財産を守るために、日頃から個々の防災に対する意識を高め、地域内のコミュニティを活発にして、地域ぐるみで「自分たちの町は自分たちで守る」という自主防災活動が大切ではないでしょうか。

(文責 企画研究部門 研究員 秋山照彦)