研究員ブログ

人が集まる!行列ができる!講座、イベントの作り方

行政関係者のみなさん、講座やイベントの人集めで四苦八苦したことがありませんか? 人集めで動員をかけずに定員をオーバーしたことが何回ありますか? そんなイベント時の「人集め」に困っている方に強い味方となってくれる「本」が現れました。

それが、タイトルにもある「人が集まる!行列ができる!講座、イベントの作り方」という本です。著者は東京都大田区立男女平等推進センター、愛称「エセナおおた」と呼ばれる施設を指定管理者として運営しているNPO法人「男女共同参画おおた」の理事をしている「牟田静香(むたしずか)」さん。福岡県出身で元CA(キャビンアテンダント)という異色の経歴をもつ方です。

牟田さんの著書

※牟田さんの本

その牟田さんがおもに行政関係者を対象にして行う講演等で決まって使う「殺し文句(笑)」に、

「主催した講座やイベントで定員割れしたら、それは税金の無駄遣いであり、企画や広報が悪いので人が集まらない」

という言葉があります。私も含めてですが行政関係者としては耳が痛い言葉として受け止めましょう。

では、牟田さんが勤務している「エセナおおた」ではどうなのか。牟田さんの著書にはこう書かれています。

「年間の申込数約1300名、平均申込倍率3.3倍。しかもその講座はすべて男女共同参画社会の実現のための講座」

平均申込倍率が1倍を超える(しかも動員無し)という人気の講座を、いったいどのようにしたらつくることができるのでしょうか。そこにはどんな秘密が隠されているのでしょうか。詳しくは実際に本を手に取っていただいて、ご購入の上、ご覧ください(決して著者の回し者ではないですが)。

ここでは、牟田さんの著書の中で、とっても痛快な文章がありましたので一部分だけご紹介いたします。

これは、自治体の講座の担当者の人が集まらなかったときの言い訳と、その言い訳に対して牟田さんが返した言葉です。

言い訳①「ここは人口が少ないから」

→人口は関係ありません。

言い訳②「当日天気が悪かったので、人が来なかった。天気がよすぎて、みんなほかへ行ってしまった」

→天気のせいではありません。

言い訳③「住民の方の意識が低くて」

→意識を高めるための講座をやっているので、本末転倒な言い方です。人権や男女参画など意識改革を目的とした講座なのにこういういいわけが非常に多いのです。逆に「意識の高い」人だけが来る講座でよいのでしょうか? さらに言えば、意識が高い、低いではなく、意識のない人に参加してもらうことが必要なのではないでしょうか。

言い訳④「人が来なくてもよい、核となる人が育てばよい」

→人が来ない講座なのにどうして核となる人を発掘することができるのでしょうか。

言い訳⑤「人が来ないからこそ行政でやる意義がある」

→講座に人が集まらなければ税金の無駄遣いです。企画と広報が悪いので人が集まらないのです。人が集まらなかった言い訳を探すよりも、どうやったら人が集まる講座を作ることができるのかを考えましょう。

筆者も公民館主事をしていたこともあり、講座やイベントを企画・実施していた経験もありましたので、どの言い訳(特に⑤)に対する言葉を見ても耳が痛い思いがいたしますが、みなさんはいかがでしょうか?

特に講座やイベントの告知をするときのチラシのタイトルは重要で、これで人がやってくるかどうか決まるといっても過言ではないそうです。牟田さんの著書の中から「悪いタイトルの一例」をあげてみましょう。

①法律、条令の文言や講座目的そのまんまのタイトル
→目的を前面に出しすぎるとかえって目的が達成できない。

「明るいまちづくりへの参画」
「男性の家庭参画セミナー」
「男女共同参画セミナー」

②社会背景表現型
→受講する「私」に関係する内容がタイトルに表現されていないと、わざわざ講座に足を運ぶ気になれない。

「晩婚化と男女のゆくえ」
「男女共生社会を生きるわたし」
「変わりゆく社会と男女(ひと)」

その他、③疑問を投げかけるスタイル、④認知度の低い言葉を使っている、⑤受講者の立場を否定するスタイル、⑥レッツ系、⑦人に言えないタイトル、といったものを悪い一例としてあげられています。これを読んで「ドキ!?」とした人もきっと多いはずです。

よく「行政関係者」は「市民(国民)の目線に立って・・・」という言葉を使いますが、講座やイベントの企画・実施においては「自分が市民だったら自分がつくったチラシを見て、その講座やイベントに参加するか」ということであると牟田さんは述べられています。

さあ、国や県、市、町等の行政関係者で、講座・イベントの企画・実施を担当しているみなさん、自分が担当している講座やイベントの広報や企画をもう一度見直してみましょう。「定員割れは税金の無駄遣い」ですよ!

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)