研究員ブログ

ジャズと日本酒に心癒されるひととき

去る8月25日(土)午後6時30分から、上浮穴郡久万高原町のふるさと旅行村で「古民家でジャズと日本酒を」が開催され、町内外から約80人が訪れました。
私にとって町GT協議会の事務局である久万高原町産業振興課が前任部署ということに加えて、古民家とジャズという、ある意味異色の組み合わせがどのようなハーモニーを奏でるのかに興味もあって参加してきました。 

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このイベントは、自然をはじめとする久万高原町の魅力に触れてもらおうと、昨年12月に発足した「久万高原町グリーンツーリズム(GT)推進協議会」が手がける初めてのイベントです。
初開催にも関わらず、その手際の良さに驚かされましたが、町内で農家民宿を営んでいる方や、久万農業公園のクラインガルテン(市民農園)利用者、Iターンされた青年農業者など、協議会を構成する町内外の多様なメンバーの創意工夫・入念な打合せによって成り立っており、この催しを何とか成功させようという、協議会メンバーの強い意志が伝わってきました。

さて、会場となったふるさと村の「渡邊家」は明治12年建築(築128年!)、わら葺屋根の風格ある佇まいが特徴の古民家です。
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当日は久万高原町GT協議会のアドバイザーを務めていただいている香川大学の原直行助教授のお計らいで、沢山の学生さんが準備から運営、後片付けまでご協力いただきました。
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ご馳走の登場!
※久万高原町産にこだわった、高原の自然に育まれた魚や肉、野菜をつかった料理に舌鼓を打ちました。
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地元の酒造会社が限定で用意した3つの味が楽しめる日本酒セット
”利き酒”気分で楽しめました。
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もうひとつのご馳走、松山を拠点に活動するアマチュアバンド「グレッチ」によるジャズ演奏です。迫力ある、そして心に染みわたる演奏に参加者は聞き入り、ときには全員で手拍子を送って盛り上がりました。
およそ2時間ほどのイベント、意外な組み合わせに思えた「古民家とジャズ」ですが、涼しい風が吹き抜ける古民家での演奏は、初体験の音響効果(独特の雰囲気)があり、山の幸をふんだんに使った料理とともに、非常に満足感の高いイベントでした。
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松山から参加された女性の方に、次回開催への参加希望をお聞きしたところ、「美味しいお酒と料理、心のこもったもてなしに感激しました。次も必ず参加します!」との言葉をいただきました。

最近よく目にするライトアップ、空港の滑走路をイメージさせる演出です。今後のGT協議会による取り組みが、文字どおり久万高原町の「未来へ続く滑走路」になりそうな予感を感じた、夏の夜のひとときでした。
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なお、本イベントに関するご意見や、次回開催の予定などは久万高原町役場産業振興課までお問い合わせ下さい。
電話  0892-21-1111(同課 農業振興班)

(文責 まちづくり活動部門 研究員 坂本 耕紀)

人が集まる!行列ができる!講座、イベントの作り方

行政関係者のみなさん、講座やイベントの人集めで四苦八苦したことがありませんか? 人集めで動員をかけずに定員をオーバーしたことが何回ありますか? そんなイベント時の「人集め」に困っている方に強い味方となってくれる「本」が現れました。

それが、タイトルにもある「人が集まる!行列ができる!講座、イベントの作り方」という本です。著者は東京都大田区立男女平等推進センター、愛称「エセナおおた」と呼ばれる施設を指定管理者として運営しているNPO法人「男女共同参画おおた」の理事をしている「牟田静香(むたしずか)」さん。福岡県出身で元CA(キャビンアテンダント)という異色の経歴をもつ方です。

牟田さんの著書

※牟田さんの本

その牟田さんがおもに行政関係者を対象にして行う講演等で決まって使う「殺し文句(笑)」に、

「主催した講座やイベントで定員割れしたら、それは税金の無駄遣いであり、企画や広報が悪いので人が集まらない」

という言葉があります。私も含めてですが行政関係者としては耳が痛い言葉として受け止めましょう。

では、牟田さんが勤務している「エセナおおた」ではどうなのか。牟田さんの著書にはこう書かれています。

「年間の申込数約1300名、平均申込倍率3.3倍。しかもその講座はすべて男女共同参画社会の実現のための講座」

平均申込倍率が1倍を超える(しかも動員無し)という人気の講座を、いったいどのようにしたらつくることができるのでしょうか。そこにはどんな秘密が隠されているのでしょうか。詳しくは実際に本を手に取っていただいて、ご購入の上、ご覧ください(決して著者の回し者ではないですが)。

ここでは、牟田さんの著書の中で、とっても痛快な文章がありましたので一部分だけご紹介いたします。

これは、自治体の講座の担当者の人が集まらなかったときの言い訳と、その言い訳に対して牟田さんが返した言葉です。

言い訳①「ここは人口が少ないから」

→人口は関係ありません。

言い訳②「当日天気が悪かったので、人が来なかった。天気がよすぎて、みんなほかへ行ってしまった」

→天気のせいではありません。

言い訳③「住民の方の意識が低くて」

→意識を高めるための講座をやっているので、本末転倒な言い方です。人権や男女参画など意識改革を目的とした講座なのにこういういいわけが非常に多いのです。逆に「意識の高い」人だけが来る講座でよいのでしょうか? さらに言えば、意識が高い、低いではなく、意識のない人に参加してもらうことが必要なのではないでしょうか。

言い訳④「人が来なくてもよい、核となる人が育てばよい」

→人が来ない講座なのにどうして核となる人を発掘することができるのでしょうか。

言い訳⑤「人が来ないからこそ行政でやる意義がある」

→講座に人が集まらなければ税金の無駄遣いです。企画と広報が悪いので人が集まらないのです。人が集まらなかった言い訳を探すよりも、どうやったら人が集まる講座を作ることができるのかを考えましょう。

筆者も公民館主事をしていたこともあり、講座やイベントを企画・実施していた経験もありましたので、どの言い訳(特に⑤)に対する言葉を見ても耳が痛い思いがいたしますが、みなさんはいかがでしょうか?

特に講座やイベントの告知をするときのチラシのタイトルは重要で、これで人がやってくるかどうか決まるといっても過言ではないそうです。牟田さんの著書の中から「悪いタイトルの一例」をあげてみましょう。

①法律、条令の文言や講座目的そのまんまのタイトル
→目的を前面に出しすぎるとかえって目的が達成できない。

「明るいまちづくりへの参画」
「男性の家庭参画セミナー」
「男女共同参画セミナー」

②社会背景表現型
→受講する「私」に関係する内容がタイトルに表現されていないと、わざわざ講座に足を運ぶ気になれない。

「晩婚化と男女のゆくえ」
「男女共生社会を生きるわたし」
「変わりゆく社会と男女(ひと)」

その他、③疑問を投げかけるスタイル、④認知度の低い言葉を使っている、⑤受講者の立場を否定するスタイル、⑥レッツ系、⑦人に言えないタイトル、といったものを悪い一例としてあげられています。これを読んで「ドキ!?」とした人もきっと多いはずです。

よく「行政関係者」は「市民(国民)の目線に立って・・・」という言葉を使いますが、講座やイベントの企画・実施においては「自分が市民だったら自分がつくったチラシを見て、その講座やイベントに参加するか」ということであると牟田さんは述べられています。

さあ、国や県、市、町等の行政関係者で、講座・イベントの企画・実施を担当しているみなさん、自分が担当している講座やイベントの広報や企画をもう一度見直してみましょう。「定員割れは税金の無駄遣い」ですよ!

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

2007なんよ地域づくり事例発表会

 平成19年9月6日、西予市の愛媛県歴史文化博物館で「2007なんよ地域づくり事例発表会」(第26回政策研究セミナー)が行われました。今回は愛媛県と当センターが主催、愛媛大学が共催で開催されました。当日は行政やまちづくり関係者など約200名にご来場いただき、会場となった多目的ホールはほぼ満席となりました。

 はじめに県外先進地での取り組み事例の紹介として島根県江津市のNPO法人結まーるプラス理事長かわべまゆみ氏に、「無人駅が観光・定住・ITのサービス拠点に」と題して講演していただきました。島根県江津市へIターンした経緯やインターネットを利用した地場産品販売の秘訣などマーケティンのプロならではの貴重なお話を聞くことができました。

 その後、愛媛大学の有馬准教授から(財)えひめ産業振興財団や愛媛大学、井関農機などが連携して取り組んでいる「植物工場の現状」についての説明や他地域の植物工場の事例紹介がありました。

 そして休憩をはさみ「これからの南予の地域づくりについて」をテーマに地域づくり実践者によるパネルディスカッションが行われました。パネリストは八幡浜ちゃんぽんプロジェクトの仕掛人である八幡浜商工会議所青年部前会長の伊藤篤司氏と宇和島市の岩松地区でどぶろくの製造などで町づくりに取り組んでいる宇和島市役所津島支所の森田浩二氏に結まーるプラスのかわべ氏が加わり3名で行われました。八幡浜ちゃんぽんプロジェクトとどぶろく製造の取り組みについての苦労話や今後の展開などについて説明があり、最後に今後の南予地域活性化にむけての地域資源活用のポイントやネックなどについて意見交換が行われました。

 印象に残ったのはかわべ氏がIターンされた時の話でした。かわべ氏は、東京でマーケティングの仕事をしながら都会での生活を送っていましたが、夫の希望もあり夫の里にIターンされました。ただその時にはかわべ氏自身は田舎暮らしに何の興味もなかったとのことでした。ただ地方都市で生まれ、大都会の生活も経験したので、あと経験していないのは田舎の生活だけだから、それを経験できる良いチャンスだと考えたとのことでした。

 この発想の転換というか前向きの姿勢というか思い切りの良さは、なかなか真似ができないことだと思います。講演からは、かわべ氏のパワフルなオーラとプロ意識の高さが伝わってきました。

 もう一つ印象に残ったのは、マーティングの大切さです。同じ商品でもパッケージなどの見せ方次第で売れ行きが変わります。もちろん品質は大事ですが、良い商品を作りさえすれば売れるというものではありません。買う側がその商品を見て何を感じるかが重要です。これは売れないと思っても違う感性で見ると魅力的な商品になります。

 たとえば“一番”とか“大和魂”とか書かれた日本語のTシャツを私は買いませんが、外国人は日本のお土産として買っていくというようなことです。地域資源を地域ブランドとして売っていくためには、熱い思いだけではなくクールな感性と分析力も必要だと思いました。

(文責 企画研究部門 研究員 河野 洋) 

通学合宿「夕焼け村」

来年度から農水省、文部科学省、総務省の3省が連携し、「子ども農山村交流プロジェクト」が始まるそうです。この事業は、 小学校高学年の児童が、1学年単位で農山漁村を1週間ほど訪れ、農家や民宿に泊まりながら農林漁業を体験するそうです。将来は、全国にある国公私立すべての小学校で行うことを目標にしているそうです。

こういった子どもたちの体験活動の中に「通学合宿」があります。親元を離れ、学校に通いながら生活するもので、愛媛県内でも多くの公民館や社会教育団体が実施しており、大きな成果を挙げています。

全国的には福岡県の庄内町(現飯塚市)が有名で、体験施設「生活体験学校」があり、年間を通して通学合宿を行っています。

双海町(現伊予市)でも平成12年度から通学合宿「夕焼け村」に取り組んでます。私が双海町教育委員会在職時に始めた事業ですので、思い入れも強く、先週の9月2日から8日までの1週間実施された通学合宿に参加してきました。

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(ふたみ潮風ふれあいの館「夕焼け村」が1週間の我が家です。)

仕事を終えた6日(木)の夜、会場である「ふたみ潮風ふれあいの館」を訪問すると、子どもたちは、研修室でのふれあいタイム中であり、各班で「双海新聞」を作っていました。食堂を覗くと、毎年お世話になる更生保護女性部の方々が、子どもたちがした夕食の後片付けを今一度丁寧に片付けてくれていました。

ふれあいタイムの指導は、東雲大学のボランティア学生で、今年も3名の女子大生が1週間子どもたちと一緒に過ごしてくれていました。学校の先生も頻繁に訪問していただいているようで、毎年のことながら多くの方の協力に感謝しています。

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(各班で「双海新聞」を作りました。)

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(毎朝6時に起きて、自分たちで朝食を作ります。)

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(双海町内3つの小学校から参加しています。
下灘小学校の児童は汽車で通学しました。)

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(子どもたちが寝静まった後、スタッフ会議が行われています。)

この「夕焼け村」の特長は、子どもと保護者を完全に隔離するところにあります。他市町での実施状況を聞くと、運営に保護者が参加しているところがほとんどですが、「夕焼け村」では、よほどのことがない限り、1週間は子どもにも、保護者にも会えない環境を作っています。唯一、子どもから親へのハガキで近況を報告するだけです。

最終夜には、保護者から子どもに宛てられた手紙を渡しますが、1週間保護者と会えなかった子どもたちは普段もらうことのない保護者からの手紙を涙しながら何回も読み返しています。感動的な瞬間です。 1週間の「夕焼け村」で、保護者は子離れを、子どもは保護者の有り難さを改めて感じ取るのです。

今年で8回目を終えた「夕焼け村」ですが、担当している伊予市教育委員会社会教育課双海事務所の職員に聞くと、今いる4人の職員も来年度は更に減少するのではないかと言っていました。いつまでこの「夕焼け村」が続けられるか心配しています。

冒頭にお伝えしました「子ども農山漁村プロジェクト」が通学合宿の代替事業になるかはわかりませんが、やり方によっては今以上に地域を巻き込んだ事業になるかも知れません。「子ども農山漁村プロジェクト」は、農山漁村にとっては、地域の活性化や都市との相互交流、子どもたちにとっては、自立心や社会性を育てられることだと期待しています。

 特に、生命を大切にし、親や地域の方々に感謝する子どもたちが一人でも多く育つことを願ってやみません。何はともあれ、「夕焼け村」に関わっていただいた皆さん、今年もありがとうございました。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 松本 宏)

総合防災フォーラム ~地域防災力を考える~

去る9月4日(火)愛媛大学防災情報研究センター主催により愛媛県民文化会館真珠の間で開催されました。

まず、「地震災害から命を守る」というテーマで内閣府参事官(地震・火山対策担当)菊池良介氏が基調講演され、第二部は、防災教育、要援護者支援、事業継続計画(BCP)、防災地図、災害伝承について事例紹介され、それぞれの発表について行政の長や担当者から貴重なコメントをいただきました。今回は、基調講演の内容を紹介します。

【基調講演の要約】
 「地震災害から命を守る」 東南海・南海地震対策のポイント
 わが国は、環太平洋地震帯に位置し、地殻変動が激しく地震活動が活発。世界のマグニチュード6以上の地震の2割は日本周辺で発生しています。地震は、日本列島の太平洋プレートと陸側のプレートとが引き起こし周期的に発生するプレート型と、内部の活断層が活動して発生する直下型とに分類できます。なお、日本全国にわかっているだけでも活断層は、2,000以上あり直下型地震は、いつでもどこでも発生する可能性があります。

 政府として、東海地震、東南海・南海地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震と首都直下地震、中部圏・近畿圏直下型地震への対策を講じています。
 特に今世紀前半での発生が懸念されている東南海・南海地震については、関東から九州にかけての広域防災対策を早急に確立していく必要があります。
 そのためには、わが国の地震防災に関する法律体系を整備し、地震対策に関する計画フローに沿って、今後10年間で被害を半減する目標を立て防災戦略や応急対策活動要領などを計画しています。
 また、地震発生に伴う津波についても予報の精度向上、避難勧告・指示の住民への的確な伝達、避難場所・避難路、堤防の整備、津波に備えた訓練・啓発などを実施しています。
 津波から生命を守るためには、揺れたら、勧告・指示に従って安全な場所へ自らがまず逃げることであります。

 続いて、先日発生しました新潟県中越沖地震の現地状況を紹介します。
 今回の直下型地震では次のような特徴が見られました。

 第一に、あちらこちらで液状化現象が見られ多くの家屋、歩道、下水道などが被害を受けました。
 第二に、能登半島地震では、比較的同じ地区内に倒壊家屋の被害が集中する傾向がありましたが今回の地震では、同じ町内でも、無傷の建物と完全に倒壊した建物と混在している地区が多く見られました。

 次に避難所を視察して感じたことは、マスメディアで紹介されない地域の避難所は、場所により待遇に大きな差が出ていました。
 また、公共施設(特に学校)避難所の耐震化が遅れているため避難所として利用できないところもありました。
 ホテルや民間施設を避難所として利用できることが周知徹底されていないため有効に使われませんでした。
 飲料水は、援助物資などで十分確保されていましたが、トイレや洗濯などの生活用水の確保ができていなかったことが今後の課題となりました。
 トイレの絶対数が少なかったため不便を感じました。
 また仮設トイレは照明がないため夜間の使用は不便なことがわかりました。
 災害用の備蓄医薬品の使用期限が切れていたため使い物になりませんでした。

 今後、以上の教訓を活かして避難生活の見直しを行うとともに、災害被害を軽減するためには、地域の人たちの防災力が重要であることを再確認しました。

 「天災いは忘れた頃にやってくる」の諺があるように、いつ・どこでも・どんな災害に見舞われるかもしれません。大切な命や財産を守るために、日頃から個々の防災に対する意識を高め、地域内のコミュニティを活発にして、地域ぐるみで「自分たちの町は自分たちで守る」という自主防災活動が大切ではないでしょうか。

(文責 企画研究部門 研究員 秋山照彦)