研究員ブログ

地域SNSの可能性

最近、自治体の間でも独自にSNS(ソーシャルネットワーキングサイト)を構築して、それをまちづくりに活用している事例がある。この取り組みを最初に行ったのは熊本県八代市。現在、このケースをモデルケースとして総務省はシステムプログラムを配付している。

SNSとは、社会的なネットワークをインターネット上で構築するサービスのことで、人と人とのつながりを促進・サポートする、コミュニティ型の会員制のサービスである。登録制や招待制などのいくつかの仕組みがあり、日本で一番代表的なSNSといえば「mixi(ミクシィ)」であろうか。

といってもインターネットに詳しくない人は何のことかよくわからないと思うのでもう少し説明しよう。

通常、インターネット上で掲示板(BBS)などを設置しても、特に制限をかけない限り不特定多数の世界中の人たちが閲覧して意見を出すことが可能であるが、ミクシィのようなSNSの場合、会員になっている人から招待されないかぎり、絶対にミクシィを利用できないという前提があり、招待されて会員になると自分の個人情報を記入することになるが、もともとが知っている人から紹介されているので、まず匿名性が低くなる。

次に、ミクシィ内でも「自分の知っている友人だけに公開してもよい情報」、「友人以外にも公開してもよい情報」などの情報の振り分けが可能となり、信用度があがる一方でこれまた匿名性が低くなり、お互いの顔がみやすい形をとることが可能で、わりと個人的な情報も交換しやすくなるという利点がある。

また、さまざまなトピックに沿って集まったコミュニティ、たとえば松山市出身で野球好きが集まっているコミュニティがあるとすると、そこに自分がそのコミュニティに加わって松山市出身の人たちと野球についてインターネット上で会話をすることができるというサービスもあり、そのコミュニティに加わった仲間同士がネット上で会話することによって、新しい人的ネットワークが生まれたりすることもある。

そんなSNSを熊本県八代市では職員が業務の合い間に自前でシステムプログラムをして、自前のサーバー内にSNSを開設して2004年11月に本格導入した。

八代市のSNS「ごろっとやっちろ」には、イベントの告知などに使える掲示板、趣味や目的別のサークルをネット上に作れる機能、写メールで撮った写真を掲載できる機能、簡単に自分のWEBページをつくれる機能、日記(ブログ)機能など、いわゆるSNSと呼ばれる機能の標準的なものはすべて揃っている。

このサービスを導入してから八代市のアクセス数は急増し、市内のサークル活動や情報などローカル情報が飛び交うようになり、また市民同士の交流も深まって、あわせて市の情報発信効果も現れてきているという。

この成功例に触発されて全国的に「地域SNS」を利用する自治体が増えているらしく、地域SNSに限らずITをつかったコミュニティづくりの一例として注目されているようである。

たとえば和歌山県北山村では、「田舎の暮らしと街の暮らしをつなぐ」というコンセプトのもとで、「村ブロ」と呼ばれるインターネット上に自治体発の「田舎暮らし専門」のポータルブログサイトをつくっている。無料登録で村民になるとブログをつくることができるようになるが、その村人も北は北海道から南は沖縄まで全国的にいて、実は愛媛県にもひとりだけ村人がいる。

さて、県内に目を向けると、四国中央市ではSNS「よらんかほい!」、新居浜市では「eにいはま」を開設しており、またSNSではないけれども、教育に利用した「子供向け」のネットサービスを西条市が開始したという新聞記事が掲載されていた。この「西条市あしたね」と名づけられたサイトは起業家教育に取り組んでいる西条市が仕事や職業に関する情報を提供するサービスをインターネット上で行うというもので、市内の仕事人のインタビュー記事がメインの記事となっているが、こういった子ども向けのサイトを自治体が構築するのは全国初だそうである。

このサイトは、閲覧は公開されているけれども記事への投稿などについては、あらかじめ割り振られたパスワードを使ってログインする必要があり、そのパスワードは西条市の小学校5年生以上の児童・生徒しか与えられないようになっており、いたずらや中傷などを防ぐ役割を持っている。

いずれにせよ、ITをツールにした地域づくり・コミュニティづくりはこれから隆盛を極めていくはずであるが、ここで考えておきたいのはブロードバンド時代になったとはいえ、情報基盤整備のインフラ格差がまだまだあるということである。筆者がかつて勤務していた地区は現在もISDN回線しかないのである。そういった場所によってはまだまだナローバンドのところもあるという事実を踏まえつつ、ITをつかった施策をしなければならないだろう。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)