研究員ブログ

建築物に見る愛媛の近代

(財)えひめ地域政策研究センターの事業に「まちづくり活動アシスト事業」があります。この事業は、まちづくり活動の活性化、地域の活性化を促進するために、県内で地域づくりのためのワークショップやイベントの開催、広報資料の作成などの活動を行っているまちづくりグループに対して、活動費の一部を助成するものです。今年度も5団体への助成が決まっており、それぞれの研究員がサポートしながら事業を実施しています。

私がサポートしている団体は「久米はいじの会」です。既にこのブログで紹介しましたが、今年7月に 来住廃寺まつりのプレイベントとして「シタール演奏の夕べ」を実施しました。

その久米はいじの会が、久米公民館とタイアップして「久米文化講座」を開催していることを聞きつけました。また、今回の講座は、当センターやえひめ地域づくり研究会議とも関わりの深い松山東雲短期大学の犬伏武彦教授の講話でもありましたので、興味津々参加してきました。

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「はいじの会」門田会長から犬伏先生を紹介

犬伏先生の講話は、「建物からは、時代が見える、生活が見える、文化が見える。そして、人間の姿が見える」とのお話から始まりました。

来住村(現久米地区)に明治4年に建てられた「伊勢屋」は、伊勢神宮への伊勢参り、伊勢神道が広がり、来住村伊勢講が結成されたことにより、神事や講員の宿泊のために、多数の信者緒方の百姓町人から寄進を受けて建ったものだそうです。明治6年に伊勢講の制度は廃止されましたが、神宮司丁という役所が置かれ、旧6月20日には大祭が昭和の支那事変まで続き、以降も青年団により伊勢屋祭り(夏祭り)が行われていたそうです。

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今の伊勢屋の外観

その他にも、明治初期の建物として、「広瀬邸」「開明学校」「道後温泉」(すべて重要文化財)を紹介して頂きました。犬伏先生は、世界的に見て2,300件しかない重要文化財の数から「日本は文化財貧困」と言われていました。ただ、その件数からも「選ばれた文化財」として、どれも貴重価値の高いものであり、新居浜の「銅山」、松山の「温泉」、宇和の「教育」と、それぞれの地域の明治初期の生活文化がよく現れていると述べられました。

明治6年に建設された釣島の灯台は、「愛媛の近代」の最たる建築物だそうで、イギリス人のリチャード・ヘンリー・ブラントン氏によるものだそうです。この灯台は、江戸から明治、鎖国から開国、近代日本へと国が生まれ変わるモニュメントであり、小さな島から愛媛の近代化が始まったそうです。

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分かり易くお話していただいた犬伏先生

はいじの会は、「国史跡久米官衛遺跡(来住廃寺)に興味を持ち、遺跡を通して久米地区の活性化」のために活動しています。埋蔵文化財の活用ですので、なかなか難しいようですが、今回の文化講座のように、広く地域住民に文化財について興味を持ってもらう機会を提供することは重要なことだと思います。

講座終了後、はいじの会のメンバーは、11月に開催する文化財を巡る「ウォークラリー」と「ネーチャーゲーム」(久米地区文化祭同時開催)の打ち合わせを行いました。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 松本 宏)