研究員ブログ

ノベルツーリズムはいかが?

現在、映画のロケ地としてフィルムコミッションが全国各地に設立されています。愛媛県においても「えひめフィルムコミッション」や「NPO法人アジアフィルムネットワーク(松山市)」などが、映画やドラマ、はたまたCMや報道番組まで、さまざまな撮影現場のアシストをしています。

そして、その映画やドラマのロケ地を巡る旅のことを「フィルムツーリズム」と呼んでいるそうで、特に若い世代の人にけっこう人気だそうですが、その大きなきっかけとなったのは何と言っても映画「世界の中心で、愛をさけぶ」でしょうか。

愛媛県も一部ロケ地にはなっていますが、メインのロケ地となった香川県高松市庵治町は「純愛の聖地」として今も多くの若いカップルが訪れているそうです。

さて、知らない人がいると思いますので念のため申し上げておきますが、その「世界の中心で、愛をさけぶ」の原作である小説の舞台は、作者である片山恭一さんのふるさとでもある宇和島市とされており、作品中に登場する「城下町」という喫茶店は実際に宇和島市内にありまして、常連のお客さんとは別にたまに小説を持ったお客さんがやってくることがあるそうです。

このほかにもよく考えてみると、「坊っちゃん」や「がんばっていきまっしょい」、「しまなみ幻想」などに代表されるように愛媛県内が小説のおもな舞台となっている作品をはじめ、小説の舞台とは言わないまでも「永遠の仔」や「花神」のようにその小説の一部にでも登場する作品なども含めて数えると結構多くあるのではないでしょうか。

また、小説の舞台に限らず、ノーベル賞作家の大江健三郎さんのふるさとである内子町大瀬地区や、数多くの文人が訪れた西予市宇和町卯之町の松屋旅館、宇和島市の木屋旅館など、著名な作家たちが訪れたとされる「作家ゆかりのある場所」などを加えるとますます増えると思います。

先日、「四国旅マガジンGaja」という雑誌に「小説の舞台」となったところの特集記事がありましたが、そういった小説の舞台となったところや著名な作家にゆかりのある場所を、その小説を片手にもちながらめぐる「名作の旅」とも言える「ノベルツーリズム(筆者が勝手に命名)」というのもひとつの旅の形として悪くはないのではないでしょうか?

そうだ!本を持って愛媛へ出かけよう!

<参考情報> 

作品中に愛媛県内の場所が登場するおもな小説

・夏目漱石「坊っちゃん(松山市)」 
・敷村良子「がんばっていきまっしょい(松山市)」
・片山恭一「世界の中心で、愛をさけぶ(宇和島市)」
・司馬遼太郎「坂の上の雲(松山市)」
・獅子文六「てんやわんや(宇和島市津島町)」
・天童荒太「永遠の仔(伊予市双海町)」
・司馬遼太郎「花神(宇和島市、西予市)」
・司馬遼太郎「伊達の黒船(宇和島市、八幡浜市)」
・吉村昭「ふぉん・しいほるとの娘(宇和島市・西予市)」
・松本清張「草の陰刻(宇和島市)」
・内田康夫「坊っちゃん殺人事件(松山市、内子町ほか)」
・内田康夫「しまなみ幻想(今治市)」
・宮本輝「流転の海(愛南町)」

探せばまだまだあると思いますが、私はこれくらいしか思いつかなかったです。
ちょっと南予の作品が多いのは私が地元が宇和島ということで東予地方のことを知らないだけですので、東予地方についてももっと調査して「作家ゆかりのところ」も付けくわえたりすると、南予一円から愛媛一円に広がるものと思われます。ちょっと視点を変えた「ひとつのツーリズムの形」して成立するのではないかと思ったりしましたが、みなさんいかがでしょうか?

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)