研究員ブログ

土井中照さんのお話を聞きました

去る11月3日の文化の日に、今治市在住のフリーライター土井中照さんのお話を聞く機会がありました。

土井中照さんは、今治をやきとりの町にした方としても知られており、現在は全国やきとり連絡協議会の事務局長兼後援会長としてもご活躍されています。

ところで、みなさんは「焼き鳥」の定義って、みなさんご存知ですか? 広辞苑にはこのように書いてあります。

鳥肉に、たれ・塩などをつけてあぶり焼いたもの。牛・豚などの臓物を串焼にしたものにもいう。

そうなんです。やき鳥と言っているのにもかかわらず、「牛」や「豚」の臓物を串焼きにしたものも「やきとり」っていうんです。しかも俳句で言うと「焼き鳥」の季語は「冬」って知ってましたか?? ちなみに、今治市は純粋に「鳥をつかったやきとりの消費が日本一」だそうです。

土井中さんからは、そんな焼き鳥の定義のお話から、今治の独特の鉄板で焼く「やきとり」文化についてのお話をしていただき、今治が焼き鳥日本一の宣言をしたら全国にそれが波及して、「うちが日本一だ」と宣言したやきとりの街が7都市集まって現在は「全国やきとり連絡協議会」という組織をつくり、毎年「やきとリンピック」というサミットのような形でもちまわりで「やきとり」のイベントを開催したり、世界一長いやきとりを競う「セカチョー」というイベントを実施しているそうです。

このように全国的にも知られるようになった鉄板で焼く今治スタイルの焼き鳥ですが、土井中さんは大学で京都に行くまで「やきとりは鉄板で焼くものだ」と思っていたそうで、はじめて京都のやきとり屋さんで「焼き鳥は通常は串にさして出てくるものであり、今治のほうが通常ではない」ということを知ったそうで、「ヨソモノ」の視点をここで思い出しました。

また、今治では「やきとり」については市民それぞれにやきとりに対する「こだわり」があり、すでに食文化というべき存在になっています。ただ、このような市民こだわりの「食」というものはどの地域でも絶対にあるんだけど、地元の人たちは日常生活の中で当たり前と思っていて、それに大きな価値があることに気がついていない、そんなことが多いんですよと土井中さんは述べられていました。

また、なぜ、「食」というものにこだわったのかということについても、土井中さんは「その地域のことをもっとも親しみやすく抵抗なく知ることができることのひとつが「食」である」と述べられていました。歴史や文化といったものは本などで勉強しないとその地域のことを知ることができないが、地域独特の食べ物や食べ方というものは、ほかとの違いがすぐにわかりその地域の特性や文化を手軽に知ることできるということなのでしょう。

土井中さんはもともとは広告マンということで、広告の仕方や人へのPRの仕方に長けていることもあり、「ワンフレーズ」や「シンプル」さ、「一目瞭然」ということがいかに重要であるかということについても述べられ、話を聞きながら「食」というものはまさしくそれに合致するし、地域づくりにおいて「食」というものは重要な要素なのだなあと思いました。

土井中さんのお話はとてもユニークなもので、さすがフリーライターさんだけあって丹念に調査をされており、資料的な裏づけもあわせて説明していただき、たいへん有意義なお話をおうかがいすることができました。

最後に、街を元気にするための法則として二つを教えていただきました。

ひとつめは、「あいしてる」の法則です。

あ・・・愛の力を信じる

い・・・1番をめざす

し・・・システムをつくる

て・・・手塩にかけて考える

る・・・類をみないことをする

そして、もうひとつの法則は「やさしくね」の法則です。

や・・・役者になろう(役割を自覚する)

さ・・・サービスめいっぱい(外部マスコミの活用)

し・・・私物化しない(組織の円滑な運営)

く・・・苦労はいっしょに(それぞれの立場を理解)

ね・・・念には念を入れる(運営トラブルの回避) 

若松進一さんも「地域づくり失敗の10か条」という言葉を述べられていますが、土井中さんの言葉にも含蓄がありますね。また、土井中さんは愛媛に関するさまざまなユニークな著書も書かれていますので、興味のある方はこちらをご覧ください。特に愛媛の校歌はたいへんおすすめとのことで、郷土愛あふれた一冊になっているそうです。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)