研究員ブログ

地域づくり全国交流会議四万十大会(4)

この連載企画もこれで最後。最後にお届けするのは、地域づくり表彰で四万十大会実行委員会会長賞を受賞したNPO法人「かさおか島づくり海社」さんの活動紹介です。

NPO法人「かさおか島づくり海社」

岡山県笠岡市にあるNPO法人「かさおか島づくり海社」は、平成18年9月に法人格を取得した島おこしを行っている団体です。岡山県笠岡市には、高島、白石島、北木島、大飛島、小飛島、真鍋島、六島の7つの有人島があり、昭和30年代には全島あわせて10,000人あまりの人口がありましたが、現在はわずか2900人と3分の1に激減し、高齢化率も55%と、いわゆる少子高齢化の先進地というべきところのようです。

その島嶼部の過疎高齢化は、島嶼部を抱える自治体のいずれもがかかえる大きな行政課題でもありますが、この笠岡市の島嶼部のみなさんは、島の活性化を図るために平成10年から6島合同の「島の大運動会」を開催して6つの島全体で連携を図っていこうとしました。

また、地元から地域活性化のために市職員を派遣してほしいという要望を受けて、行政も平成13年4月から島専属の市の応援隊「島おこし海援隊」を組織して、市長が3名の職員に対して「島民になれ」という命令のもと、島に住居を置き住民とともに汗を流しながら島づくりを勧めていく体制づくりを行うことになったそうです。この「島民になれ」という市長さんのエピソードがとてもユニークだと感じました。

そして、平成14年には島おこしの島民組織「電脳笠岡ふるさと島づくり海社」を設立し、平成18年9月に法人格を取得し「NPO法人かさおか島づくり海社」と改称し、現在は行政と地域との協働事業の推進を行っています。

このNPO法人は北木島に本社をおき、6つの島それぞれに支社を設置して、それぞれが地域活性化の取り組みを行う形態をとって事業の推進をしているそうで、それぞれで行っているおもな事業を紹介します。

1.空家対策事業

平成14年にスタートしたこの事業は、団塊の世代の田舎暮らし志向もあり、平成19年10月現在で21世帯46人のIターン者を島に受け入れした実績があるそうです。団塊の世代に限らず、仕事を作っての若年世帯の移住も多く、小中学校の子どもの確保にも大きく貢献し、かつて児童数の減少で休校になった小学校が再開された島もあるそうです。

2.しまべん事業

島の特徴としての「海の食材」をアピールして観光の資源とするとともに地域の食のサービス向上を目的に、島の人が、島の食材で、島でつくるお弁当の開発を行いました。しかも、6島それぞれが開発をしているそうで、特に真鍋島では空き家対策事業でIターンされた方がすし職人さんだったこともあり、その方が職として「しまべん」づくりを行い、島での食のサービス維持のために「観光客への食の提供」「福祉的に島の高齢者への給食サービス」もあわせて行っているそうです。
この「しまべん」は、島の特産品として陸地部のアンテナショップや各種イベントで定期的に販売しているそうで、全日空の「翼の王国」などの雑誌にもとりあげられるなど、「しまべん」の認知度もあがっており、平成19年9月5日に笠岡市の駅前商店街に笠岡諸島の特産品を販売するアンテナショップが誕生するなど、島から陸地部へと活動の場に広がりを見せています。

3.廃校利用

北木島では廃校となった小学校を利用して、中学校の夏季研修を平成17年から受け入れを開始し、平成19年には3団体の研修受け入れを行ったそうです。
また、白石島では平成13年から廃校になった小学校の講堂を利用して、機織り工房として再生をおこない、体験メニューとして白石島の観光プランに組み込まれるようになっています。

このほかにも多くの事業を行っているそうですが、ここでは文章も長くなってきているので割愛させていただきます。詳しくはHPをご覧ください。HPはコチラです。

さて、この取り組みを聞かせていただいて、地元の地域活性化にはコーディネーター役が必要であるとよく言われています。笠岡市の場合は、そのコーディネーター役に行政職員を派遣し、行政職員が地域活性化のために住民と汗を流すというスタイルは、たいへんユニークであると感じましたし、これからの「協働」の地域づくりに求められるスタイルのひとつなのかもしれないなあと思いました。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)