研究員ブログ

地域づくり全国交流会議四万十大会(2)

四万十大会2日目は、4班に分かれての現地研修ということで、1班の「四万十川佐田の沈下橋散策・屋形船体験コース」に参加してきました。

まずバスの中で四万十市というよりも、旧中村市の市街地の地理的なことを郷土の歴史に詳しい方から資料を交えて教えていただきました。この旧中村市は、かつて京都の公家の一條氏が治めたところで知られる地域で、公家が治めた地域だけあって、中村の町割りも京都になぞらえたつくりになっているとの説明がありました。ゆえに、四万十市(旧中村市)は「土佐の小京都」と呼ばれています。

次に、佐田沈下橋へとバスで移動し、四万十川の川に関するお話を聞かせていただきました。

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※佐田の沈下橋 

その後、大川筋にある「四万十カヌーとキャンプの里かわらっこ」へ移動し、「かわらっこ」を指定管理者として運営している地元の振興組合の方から「かわらっこ」の取り組みや今後の事業展開について説明をしていただきました。

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※かわらっこ

お話を聞いていて思ったのですが、高知はさすが四万十ブランドがあることもあり、修学旅行生が多くやってきているようです。そのあたりが同じ四国西南地域といっても愛媛県南予地方とは異なるところかなあと思いました。また、幡多地域はあわせてグリーンツーリズムも盛んのようです。

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※この日乗った屋形船

そして、いよいよ四万十川の屋形船に乗って四万十川を遊覧し、ゆったりとした四万十川の流れに揺られながら昼食をとりました。途中、船頭さんのたいへん巧みなトークで参加者一同、たいへん満足できたのではないかと思います。こういうおもてなしの質って大事だと思います。そういえば、この船長さんの巧みなトークを聞いていると、東京ディズニーランドのジャングルクルーズを思い出しました。

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※屋形船は沈下橋の下をくぐることができます。

この屋形船も最初はほとんどお客がくることがなかったそうですが、今では数多くの人たちが利用するようになり、この地域のひとつの観光産業となっているそうで、四万十川の人気の高さをうかがうことができた時間でした。

さて、2日間を通して感じたことは幡多地域はいま、地域づくりにがんばっているということがよくわかりました。愛媛県も負けていられません。来年の愛媛大会は参加者に愛媛に、そして南予に来てよかったと思われるような大会、そして、参加者がそれぞれの地域に、あんなことがあった、こんなことがあったとたくさんのお土産話をもってかえれる、そんな大会にしたいと考えておりますので、愛媛大会の分科会を運営する地域づくり団体のみなさん、いまから張り切ってまいりましょう。

なお、来年のこの「地域づくり全国交流会議」は、富山県の高岡市で開催される予定です。

残りの2回は、地域づくり表彰を受けた地域づくり団体の中で、どの団体もすばらしい取り組みをされているのですが、その中で筆者が非常に参考になった地域づくり団体の活動について御紹介いたします。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

地域づくり全国交流会議四万十大会(1)

11月15日、16日の両日にわたって、高知県四万十市で開催されました「地域づくり全国交流会議四万十大会」に参加してまいりましたので、4回にわけて参加の報告をこの研究員ブログで行いたいと思います。

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この大会は、国土交通省が所管する地域づくりの全国大会で、来年度に愛媛県で開催されます「地域づくり団体全国研修交流会」は総務省所管の地域づくりの全国大会となります。

別の大会とはいえ、そこはやはり「地域づくり」の全国大会ですので、愛媛大会の運営の参考になればということで取材を兼ねての参加となりました。

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※受付の様子

この日、集まったのはおよそ300人ほどの地域づくりに関わる方たち。県外からの参加者は北は北海道から南は鹿児島までと全国各地から参加されていたようです。そのうち、およそ4割ほどが地域づくり団体の方々だったそうですが、高知県外からの参加者はそのほとんどが行政関係者の方が多かったような印象があります。

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※幡多地域の名産品がずらりと並んでいました。

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※PRブースの様子

会場付近には、地域づくり表彰候補となっている8つの地域づくり団体の活動紹介ブースが設置され、また四万十市付近の高知県幡多地域の名産品を販売するブースもありました。

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※全体会場の様子

初日の日程としては、初日の午前中に全体会を開催し、午後からは基調講演の後に3つの分科会を開催しました。

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※全体会の様子

午前中の全体会では、開会のあいさつがあったのち、地域づくり表彰審査会が開催されました。

この地域づくり表彰制度は、「創意と工夫を活かした広域的な地域づくりを通して、個性ある地域の整備・育成に顕著な功績があった優良事例を表彰することで、地域づくり活動の奨励を図ることを目的に、昭和59年度より実施(国交省HP引用)」されているそうで、この四万十大会の全体会では、書類審査や審査委員による現地審査といった事前選考によって選ばれた8つの団体が審査対象となり、それぞれの団体の最終プレゼンを経て、四万十大会会場の参加者の投票などを経てこの会場の場において決定されました。

この日、四万十大会の最終選考にノミネートされた8つの団体を紹介します。

NPO法人霧多布湿原トラスト(北海道浜中町)
桐生からくり人形保存会(群馬県桐生市)
ハッピーロード大山商店街振興組合(東京都板橋区)
NPO法人ながおか生活情報交流ねっと「そいが」(新潟県長岡市)
NPO法人蒲生野考現倶楽部(滋賀県日野町)
NPO法人かさおか島づくり海社(岡山県笠岡市)
財団法人清和文楽の里協会(熊本県山都町)
大隈の国やっちく松山藩(鹿児島県志布志市) 

それぞれの団体の活動概要については、それぞれのリンク先のHPを参考にしていただくことで省略することとし、一部の団体の取り組みについては「研究員ブログ」の別記事で掲載したいと思います。

そして、昼食をはさんだ後、午後からは当センターもお世話になっている高知大学の坂本世津夫先生の講演ののち、分科会が開催されました。

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※第2分科会の様子

分科会は3つの分科会にわかれ、第1分科会では「地域の歴史に根ざしたふるさとづくり」をテーマに、第2分科会では「新しい地域資源によるふるさとづくり」をテーマに、第3分科会では「幡多地域の体験型観光と連携したふるさとづくり」をテーマに、それぞれ高知県幡多地域の地域づくり団体が事例発表を行い、その事例報告とテーマにもとづいて研究協議を行いました。

3つの分科会どれも魅力溢れる事例報告だったのですが、宇和島市津島町岩松地区で濁酒「なっそ」がえひめ夢提案制度により今年からつくられたこともあって、「三原村のどぶろく特区」の取り組みについてお話を聞きたいと思い、第2分科会に参加してみました。

第2分科会では、この三原村のどぶろく特区の取り組みと、黒潮町のTシャツアートの取組が報告され、参加者から質問や意見、提言が報告者に寄せられるなど、たいへん活発な議論がなされていました。

分科会の終了後、会場をうつして午前中に行われた「地域づくり表彰」の表彰式が行われ、参加者の投票による四万十大会実行委員会会長賞には岡山県笠岡市の「NPO法人かさおか島づくり海社」が選ばれていました。

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※表彰式の様子

その後、交流会が行われ、宿毛市の子どもたちによる太鼓演奏のアトラクションののち、幡多地域の郷土料理などがふるまわれ、参加者同士の交流を深めていたようです。

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※アトラクションの太鼓演奏の様子

2日目は、現地研修が行われました。その様子は次回の研究員ブログで御紹介いたします。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

夕日寄席初演、夕日亭大根心師匠快演!

国土交通省主催の「観光カリスマ塾」が11月15・16日に人間牧場(伊予市双海町)で開催され、ついに「夕日寄席」の初演が実現しました。

夕日寄席の初演は夕方ならぬ朝方に開演。
出演は、落伍家「夕日亭大根心」師匠。

松本宏大番頭の拍子木と口上に始まり、出囃子にのって、拍手と笑いの渦のなかを大根心師匠が登場。高知県馬路村産から運んだという150年生の魚梁瀬杉(やなせすぎ)の切り株の上に、座布団を敷いて話がスタート。

夕日寄席

演目は「まちづくり小話」。夕日寄席の高座本である「夕やけ徒然草」から、第5話「ハーモニカが吹けた」、第10話「外からみないと中は見えない」、第 28話「四つの願望」を切り株から落伍もせずに次々と披露。師匠ならではのお惚けとユーモラスな話術で観客を煙に巻き、爆笑の中を”ひょっこりひょうたん 島”のテーマで飄々と退場。笑いとともに、師匠の体験を通した地域づくりが語られ、う~んとうなずく一幕もありました。

夕日寄席 夕日亭大根心師匠

もうお分かりですね。「夕日亭大根心」とは、観光カリスマで夕日のまちづくりで有名な「若松進一」さんの芸名です。

今回は、”落語家”ならぬ” 落伍家” としての初舞台でした。この寄席は地域づくり人の養成プログラムです。

当センター主催の地域づくり人養成講座を通して、まちづくりや地域づくりに携わる人の養成に携わるうちに、講演や講義、ワークショップとも違う、楽しくてタメになる新しい養成スタイルはないかと考えるようになりました。

この夕日寄席は、 若松さんとずっと温めてきた地域づくり人養成プログラムです。全国広しといえど、まちづくり人自らが噺家となって体験談を小話化し実演する寄席なとどいう のは、なかなかできません。

高座の台本である「夕やけ徒然草」は、宮本武蔵の「五輪の書」にあやかり、今回の「地の書、水の書、風の書、火の書、空の書とシリーズで出版。さらに魚梁瀬杉の年輪にあやかって150話完結の予定です。

夕日寄席の木戸銭は500円。高座台本のお足ということになっています。これからの地域づくりは「笑いと経済」がポイントです。大根心師匠の出前寄席も、受け付けております。

お問い合わせは、人間牧場または当センター 松本宏大番頭までお願いします。 皆さん、夕日寄席にいらっしゃ~い!

(文責 まちづくり活動部門 研究員 清水和繁)

県内の移住関連調査をしてみて

現在、愛媛県内への団塊の世代の移住・交流促進のため、県内にすでに移住された方や移住・交流に関する施設を取材していますが、先週、愛媛県南予地方の施設および場所を訪問・取材いたしました。

今回、訪問した先は大洲市の「ふるさとの宿」(旧河辺村)、西予市の「小松山荘」(旧野村町)、北宇和郡鬼北町の「市民農園」(旧日吉村)と「旧アルコール工場跡地の宅地分譲団地」(旧広見町)の4箇所です。

訪問した先のレポートについては、「移住案内人レポート」で写真を交えて順次御紹介することとして、訪問してみて思った感想をこの研究員ブログで徒然なるままに綴ってみたいと思います。

まず、河辺地区の「ふるさとの宿」。これは以前、当センターが主催した「地域づくり人養成講座」で訪問した内子町大瀬地区にある「いかだや」さんと同じ、もともと小学校だった施設を改修してできた宿泊施設です。

ただ、河辺地区と内子町大瀬との大きな違いは、いわゆる中心市街地との距離でしょうか。どちらも小田川、肱川と美しい川のせせらぎが聞くことのできる自然豊かな里山ですが、内子町大瀬地区の場合は内子町の市街地まで車で20分もかからないですが、河辺地区の場合は大洲市の市街地から車で50分ほどかかります。ですから、本当に交通の便はあまりよくないというのが現状で、特に車がないとたいへんな地域ですが、これを裏返して考えると「都会の喧騒をより忘れられる」ともいえます。そのあたりは個人の嗜好の問題なのかもしれませんね。

次に訪問した西予市野村町の「小松山荘」。西予市旧野村町の中心部からおよそ車で40分ほどの「小松地区」と呼ばれるところにあり、西予市の中心部である宇和町まではおよそ車で1時間以上はかかります。この小松地区はほとんど四国カルストに近いような位置にあるたいへん山奥にある地区です。といっても四国カルストがどんなところかわからない人もいると思うので説明いたしますと、一言で言えば「愛媛の小さい北海道」です(たぶん)。ここでは大多数の方が酪農農家をされています。

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※四国カルスト

この「小松山荘」がある西予市野村町の小松地区というところは近くに大きな集落もなく、いわゆる「限界集落」という言葉が脳裏に浮かぶような地域でした。この「小松山荘」があるような地域に移住をということになれば、かなりの覚悟が必要ではないかと思ってしまったのが私の偽わらざる心境です。

そして、鬼北町で訪問をしたのは、旧日吉村にある「市民農園」と旧広見町にある「旧アルコール工場の分譲地」の二つです。

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旧日吉村にある市民農園は、道の駅「日吉夢産地」に隣接しています。コテージ数は6戸、農園の13区画で1区画あたりおよそ 35㎡~38㎡あります。このコテージにはミニキッチンなどもありますが、お風呂はなく、トイレも集合トイレになっています。

この市民農園ですが、すでに申込者で一杯の状況で遠くは松山市から借りている人もおられるとか。田舎にはこれくらいの広さの畑ならいくらでもあるのに、都会の人はわざわざどうして借りようとするのかと失礼ながら思ってしまいましたが、それが「田舎の常識」と「都会の常識」のズレというか、価値観の違いなのだ思うと妙に納得してしまいました。

旧アルコール工場跡地の宅地分譲は、ちょうど宅地の造成中で地ならしをしている最中でしたが、第一印象は「広い」というものです。もともと工場があったところを見ていたこともあり、それを取り壊して地ならしするとこんなに広いものなのかと驚いたのが最初の感想です。

北宇和郡鬼北町も高速道路が宇和島市三間町に開通する(平成23年度供用予定)と、十分に県都松山市へのアクセスもよくなりますし、宅地造成されている地区は鬼北町の中心部ということである程度の人口規模もあります。

また、造成されている地区がひとつの集落となりますので、いわゆる「既存のコミュニティ」に新たに移住者として加わるということではなく、新しく転居してきた住民だけで組織されるコミュニティができあがるということになるので、その点においても通常の移住とは違う特徴があるのかなと思いました。

とまあ、徒然なるままに綴ってみましたが、「県内への移住」とひとことで言っても、多種多様であり、自分の嗜好(志向)と置かれている状況を踏まえて、じっくりと答えを出していかないといけないのだなと実感しました。

また、それと同時に、「だからこそ移住のお手伝いやお世話をする側の人間も、しっかりと移住先の状況や移住者の声を踏まえた対応やお手伝い(=マッチング)をしなければならない」との思いを新たにした取材となりました。

それぞれの取材地のレポートは、順次「えひめ移住案内人レポート」で御紹介していきます。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

大学の地域貢献

秋といえば「食欲の秋」を私は真っ先に思い出してしまいますが、「読書の秋」でもあります。みなさんは、秋の夜長にどんな本を読みますか?

さて、最近ですが個人的に調査・研究しているテーマの関係で「大学の地域貢献」について読んでいる本があるので、みなさんにご紹介します。

 大学と連携した地域再生戦略 (大宮登・磐田正 編著)

書籍
(ぎょうせい 3,500円税込)

 大学と地域の連携によるまちづくり

 この本は群馬県高崎市にある公立大学「高崎経済大学」の地域貢献に関するおよそ10年の取り組みをふり返り、いわゆる「大学の地域貢献」のあり方について書かれた本です。

 以前、筆者がこの研究員ブログでも指摘しましたが、かつての「産官学」連携は、「工業系」の技術開発などの産業振興に対する寄与がたいへん大きく、それにより地域が活性化してきました。ゆえに企業と大学がタッグを組む=技術開発といったイメージがあり、実際にそれにより技術革新がおき日本が経済発展してきたのは事実です。

 ですが、現在の「産官学連携」におけるモデルは、地域をとりまく状況の変化や行政の役割の変化(協働の理念など)を踏まえた取り組みであったり、地方のシンクタンクともいうべき「知の拠点」づくりを目的とするものまで、以前に比べて非常に多様性に富んできました。

 これは安価に大量生産を行い、そしてそれを大量消費する時代から、経済のグローバル化をうけて「ものの価値に見出す」、つまり「量から質の時代」へと社会が変容してきたこととも関連しているでしょう。

 この本の主なテーマは、大学が主体となった地域づくりと地域再生です。

 特に、冒頭の地方大学が自治体や地域から求められている地域貢献のあり方と、大学が考えている地域貢献のあり方のギャップについてアンケートの結果については大学関係者、自治体関係者の方は必見です。

 大学の地域貢献ランキングで常に上位にランクされている「高崎経済大学」が実際に行った取り組みを通して、大学が地域に果たす役割についてたいへん詳細に、そしてわかりやすく書かれています。興味のある方、ぜひご一読ください。

 なお、この本の購入をお考えの方は「ぎょうせい」のHPまで。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)