研究員ブログ

崩れゆく記憶

映画「ALWAYS続・三丁目の夕日」が先月公開された。舞台は昭和34年の東京。日本橋の上には高速道路がなく、空が広い。消えた風景が最近のデジタル映像技術でよみがえる。食品会社が当時の黄色いカレーを復刻発売するなど食品や学校給食の再現も話題になっている。

「昭和の古き良き時代」は1960年前後の昭和30年代を指している。高度経済成長で町並みや人の心が大きく変わる前の日本。大分県豊後高田市 の昭和の 町は「商店街が最後に元気だった」同年代のにぎわいを取り戻すのが目標だという。「昭和が売り物になる」のもこの時代だ。町ばかりではなく、高度経済成長 で景観が様変わりした農村も、同じ年代を懐かしんでいる。段畑や棚田、里山を保全し農村風景の保存活用を目指している所も多い。

地域の記憶がなくなりつつある。変化や効率、グローバル化などを進めていくうちに、本来、私たちががもっていた自然や地域の記憶や、受け継がれて きた仕 事や暮らしの記憶などが受け継がれることなく途絶えていく時代になってしまった。地域に保存されていた記憶が途切れはじめ、受け継いできた記憶が壊れたと き、地域が歴史や文化も継承できずに風化する。

なぜか「昭和の古き良き時代」の当時を知らない若者にも、こうした昭和を体験する施設や商品は人気らしい。せめて豊かな白然や人のつながりを取り戻すきっかけになればいいのだが。

(文責:まちづくり活動部門 研究員 清水和繁)