研究員ブログ

30年後の姿を考えながら今の施策をやる

12月9日(日)放送の「サンデープロジェクト(テレビ朝日)」という番組を見ていると、「都市型の限界集落」という聞きなれない言葉が登場したので視聴することにした。

いわゆる「限界集落」といえば、高齢化率が50%以上で冠婚葬祭などの社会的な共同生活の維持が困難な集落のことをいうが、それが都市にも広がっているという。

放送の中で登場した地域は、「多摩ニュータウン」などの、いわゆる国策によるニュータウン構想でつくられた団地でであり、これらの団塊世代が多く在住している都市のニュータウンでも、いわゆる「限界集落」の傾向が進んでいるという現実があることを全く知らなかった。つまりは、いわゆる「限界集落」は中山間地域だけの問題ではないということである。

また平成の市町村合併による地域の変容事例として広島県の旧作木村(現在の三次市)の事例が紹介され、合併前にはあった住民のにぎわいや健康福祉サービスが合併により低下してしまったこと、また山間部の公共交通機関の事例として高知県の大豊町の事例が紹介されて、財政難による公共交通機関の撤退や廃止を受けて、代替措置によるものの公共サービスが低下し、小集落に住む地域住民の負担が増えているということも紹介されていた。

それに対する課題解決の取り組みとして、放送の中では、岡山県の旧哲西町のコンパクトシティー化と富山県富山市の公共交通政策の2つの事例が紹介されていた。

岡山県旧哲西町は、町中心部に保健施設、図書館、役場、生涯学習センターなど、様々な公共施設をひとつ屋根の下に集約させるという取り組みを市町村合併前に自主財源で実施した。

そのことにより、町民が一同に集まる場を創出し、このほかにもJAや消防署、郵便局などの施設もその付近に集まることにより、住民同士のあらたな交流が生まれ、町のにぎわいを取り戻しており、それは合併後においても合併による取り決めによって変化は見られないそうである。いわゆる「コンパクトシティー化」を図った事例である。

そして、いま公共交通政策で全国の自治体から注目を集めている富山市は、赤字廃止路線だったJRの路線を路面電車化し、それぞれの集落を路面電車やバス路線で結び、そこに行政が補助を出すことによってむしろ便数を増やすなどの措置を行って、町と町を団子の串のようにつなぐ取り組みを行っている。

路面電車やバス路線で集落と集落をつなぐことを通して、これから少子高齢化社会を迎えて車を運転しない人が増えていく地域課題に備えていまのうちから対策を練っているということである。これは住民を一箇所に集めるという発想ではなく、いまある地域と地域を公共交通機関でつなぐという違う切り口の取り組みであるが、このことからその「地域の実情にあった取り組み」をしていくことが重要だということがいえそうだ。

今の現状ではなく、「30年後の地域社会はどうなっているか」を考えて、今からやれることをコツコツとやっていくことが重要であるという富山市長の話は非常に印象的だった。目先の「財政難」という課題解決もたいへん重要だが、30年後の地域社会の課題解決という「先を見据えた施策」もまた重要ということであり、自治体が策定する「長期総合計画の意義」というものをもう一度問い直すよいきっかけとなったような気がした。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)