研究員ブログ

バイオマス未活用エネルギー導入促進セミナー

 12月18日に開催された木質バイオマス導入促進関連セミナーに参加しました。

 セミナーでは、広島大学の松村教授による木質バイオマスの事業化に向けた課題と展望について総括的なお話の後、高知県での木質バイオマス利用状況についての報告がありました。

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 石油ショックの際、木質バイオマスへの注目が高まり燃料であるペレットの製造施設が全国で立ち上げられたものの、石油価格の安定とともに急速にその数を減らし、現在まで続いているのは3箇所のみとのこと。うち2箇所が四国にあり、ひとつは徳島、もうひとつが高知です。

 高知県は県土に占める森林率が84%で全国一。豊かではあるものの十分に活用されていない森林資源をいかに利用するかが永年の課題となっていますが、昨今の地球温暖化対策の動きや原油価格高騰により、少し明るい兆しが見えつつある状況です。高知県産業振興センターの松崎コーディネーターによると、計画中も含めると高知県内のペレット工場は近いうちに11箇所になる見込みとのことです。

 高知県ではハウスでの施設園芸が盛んですが、このところの石油高騰によりハウス加温用の燃料価格が上昇し苦戦を強いられています。豊かな森林資源の活用と地域産業の課題解決が一挙両得で実現できる新しい地域社会システムが構築できれば、地域活性化への効果はとても大きなものとなるでしょう。

 一方、木質バイオマスの活用には様々な課題が山積しているのも事実です。森林資源を取り出し運搬するコストをどうするかという問題がありますし、ペレットボイラーなどの設備もまだまだ高価です。最近では安価な海外製ペレット輸入の動きや、大手商社による国内大規模ペレット工場建設の動きもあり、地域の製造施設が対抗できるのか、懸念する声も聞かれます。

 しかし、エネルギーの地産地消が図られれば、地域のみならず地球全体でも大きなメリットが生まれることは間違いありません。愛媛県内でもバイオマスペレットの利活用に向けた取組みが進められています。豊かな地域づくり実現のためにも、今後の動きに注目したいところです。

(文責 企画研究部門 主任研究員 武智公博)