研究員ブログ

愛媛大学観光まちづくりコース開設記念シンポ

去る12月13日に愛媛大学で開催されました「観光まちづくりコース開設記念シンポジウム」に参加してきました。

これは愛媛大学法文学部に来年度から設置される「観光まちづくりコース」を記念して開催され、県内の観光関係者やAO入試に合格した高校生などがあつまり、これからの観光とまちづくりの在り方について考え合いました。

冒頭、愛媛大学の小松学長や愛媛県の加戸知事(副知事代読)、松山市の中村市長よりご挨拶があったのち、広島大学大学院総合科学研究科准教授のフンク・カロリンさんが「観光には、なぜ、まちづくりが必要なのか?」という演題で講演をしていただきました。

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フンクさんは、もともと松山市とも縁があり、松山市の姉妹都市であるフライブルク市の出身で、留学生として松山にも住んだ経験があり、日本と海外との比較において、おもに瀬戸内海をフィールドに「観光とまちづくり」の関係についてお話をしていただきました。

ドイツの場合、地域計画や都市計画の線引きはかなり厳しく、その結果、集落と建物を一切たてない地域がうまれ、町と町との境がはっきりしているそうですが、日本の場合は、道路沿いに集落や店舗が立つということで、町と町との間にも道路沿いに建築物がたっているということが多く、境があいまいになっているところが多いのが現状です。

また、山村や農村であってもドイツの場合は規制が敷かれていて、景観にあった建物しか建てることが出来ないようになっているため、ドイツは緑が多く、景色がきれいといわれる所以であり、ドイツの場合はメリハリのあるはっきりした都市・農村風景を構成していることが特徴だそうです。

いっぽう日本の場合は、これまで法規制がありませんでしたが、平成16年に景観法が制定され、法律よりも地方自治体が条例によって法規制が強めることができるようになったため、これからどう「景観まちづくり」を行っていくか、地方自治体が求められるようになりました。

たとえば内子町のように町並みから村並み、山並みへという動きや、飛騨高山のように町並み保存からバリアフリーの福祉都市のまちづくりへという動きもあるなど、これからは地方の独自性=カラーが問われるようになってきていると述べられていました。

最後にまとめとして、観光まちづくりの目的は「場所に力を創り、維持し、演じること」であり、その場所がもつ「力」こそが人を引き付けることになり、そこが観光資源となります。また、その場所がひきつける力の要因はさまざまであり、裏返すと、いかに人を引き付ける力をもつ場所を創り、維持し、演じることができるか、ということが観光まちづくりの意義と言えると述べられていました。

講演会終了後、観光関係者によるシンポジウムも行われ、愛媛大学の藤目教授のコーディネートのもと、江藤訓重さん(星野村副村長)、奥村武久さん(前愛媛県観光協会長)、河内紘一さん(内子町長)、陶山哲夫さん(小豆島ふるさと村公社専務理事)、松田清宏さん(JR四国代表取締役社長)、宇都宮千穂さん(愛媛大学講師)がパネリストとして登壇し、「わが四国は美しくーまちづくりから観光へー」と題したシンポジウムが開催され、討議が行われました。

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シンポジウムではそれぞれが活発な意見を述べられていましたが、江藤さんの財団法人阿蘇地域振興デザインセンターの事例を紹介しながら、「これからは地域づくりをやっているコーディネーター役がいる地域が強く、都会からそういった能力のある若い人たちを招き、その人たちが食べていける環境を用意さえすることができれば、これからの地域づくりに地域は発展する可能性が大いにある」という言葉と、松田さんの「住みたい地域(誇れる地域)」と「訪れたい地域」との調和をいかに図るか、そこには住民合意が必要であり、そこをうまくコーディネートできる存在がいるかどうか、そこに地域力を高める要素があるのではないかという言葉が印象的でした。

最後に、AO入試で合格し、来年度入学予定の高校生2名の方からの決意発表がありましたが、お二人ともとてもすばらしい発表だったように思います。4月からの大学生生活を楽しみながら地域発展のための研究努力に励んでください。これからの活躍を大いに期待しております。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)