研究員ブログ

温暖化の影響でクマゼミが北上?は本当か

 8月初旬、新空港通り沿いのコンビニで買い物をしていた時に、何げに道路沿いの街路樹を見ると、クマゼミが気持ち悪いぐらいにびっしりと止まっていました。5メートル間隔で植えている他の街路樹も何本か見てみましたが同様の光景でした。

 男性なら誰でも子供の頃に、網と虫籠を持ってセミを採った記憶があると思いますが、私が幼少の頃に最も採れていたセミはアブラゼミで、クマゼミを採集するのは難しかったように思います。

 そんな折、気になるニュースがありました。クマゼミの生息分布に異変が起きており、以前は生息しなかった北関東などでもクマゼミが確認され、地球温暖化の影響でクマゼミの生息地が北上しているのではないかというものです。先に述べた体験があった私もなるほどと思い、その時は私自身が子供の頃と比べると地球は温暖化に向かっているんだなと納得させられました。

 ただ、少しだけ心に引っかかるものがあり、セミについて調べてみると、セミは移動力に乏しい、せいぜい5キロ程しか移動出来ない昆虫ということが分かりました。そのため沖縄では島ごとにセミの種類が違っていたりするそうです。また、セミにとってちょうど良い気候であるはずの鹿児島では、ここ数年クマゼミが激減している等、温暖化説では説明不可能な部分もあるとのことでした。

 更に調べてみると、他に有力な説として樹木の移植説がありました。これは樹木の移植の際に根の周囲に幼虫が混入しており各地に広がったという説で、これにはアオマツムシという前例があります。明治時代に中国から入ってきた外来種のアオマツムシは、街路樹や公園の樹木を移植する際に苗木にくっついて各地へと広がりました。その後、高度経済成長に伴い各地の道路整備が進むにつれて、道路沿いの街路樹や街灯を伝って都市部を中心にどんどん分布を広げていったのが分かっています。クマゼミもこのケースと同じではないかという事です。

 私にはどちらが真実かは分かりませんが、少なくとも全て温暖化が原因だと結論づける事は出来ないのではないかと思います。

      (企画研究部門 研究員 向井浩司)