研究員ブログ

預金の金利

 先日、約30年前の昭和55年(1980年)に1億円を拾って、一躍時の人になった大貫久男のことが、マスコミで報道されていました。

 1980年4月25日、トラック運転手をしていた大貫さんが、東京都中央区銀座3丁目の道路脇で現金1億円入りの風呂敷包みを発見し、これを拾得物として警察に届け出て、このことが全国に報道されました。

 11月9日が、落とし主は現れなかったため旧遺失物法にもとづき6ヶ月(当時。2007年12月以降、現在は原則3ヶ月)の届け出期間を経て、拾った1億円が、大貫さんに所有権が移った日となったため、過去のトピックとしての報道でした。
 なお、最終的に所得税法による所得税約3,400万円を国家に納付し、実質約6,600万円が大貫さんのものとなりました。

 当時、宝くじの1等が3000万円の時代。1億円は大金と呼ぶにふさわしく、落とし主として名乗り出ると、資金の出処を警察に明かさなくてはならず、名乗り出なかったのは問題のある金では?と推測され、落とし主の詮索も世間を賑わせたとの内容でした。

 このニュースを聞いて、1億円の預金があれば、預金利息だけでどんな生活ができたのだろうかと思い、少し調べてみました。

 現在の高齢者世代が働き盛りであった昭和55年当時、郵便貯金の10年定期預金の金利が、実に8%前後もあり、現在の銀行の10年定期預金の金利が0.60%前後であるのを考えると、隔世の感があります。

 この定期預金は、投資と異なり「元本割れしない」「預けておけば、何もしないでも金利分の利益が得られる」今でもある金融商品ですが、当時の金利(8%)で、1億円を10年定期預金にすると、何もしなくても毎年800万円、10年間で8000万円の利息を得ることができたことになります。

 その後、日本はバブル崩壊に見舞われ、長く不景気の時代が続き、定期預金の金利は現在では、銀行の10年定期預金の金利が0.60% まで低下しています。
 つまり、1億円を10年定期で銀行に預けても、利子はなんと年間60万円で、そこから更に20%の税金を引かれるため、年間の手取りは48万円にしかなりません。

 長く続いている超低金利時代の今からすると信じられませんが、昭和55年当時、定期預金は立派な資産運用であり、「億万長者」という言葉は、「働かなくても預金利息で生活できる人」であったことを改めて実感しました。

(まちづくり活動部門 主任研究員 小方 悟)