研究員ブログ

二酸化炭素

 6億年前、地球は氷の星であった。微生物が酸素をせっせと排出し、温室効果が二酸化炭素の20倍もあるメタンガスを中和させてしまったことが原因だ。氷河の厚みは標高1000m以上に達し、地球は赤道付近に至るまで氷河で覆われる状態となった。全球凍結、スノーボールアースと呼ばれる仮説である。
 
 この全球凍結状態を解消したのは二酸化炭素であった。地下の火山から排出された二酸化炭素が地球内部の温度を高めて氷河を溶かし、一気に温暖な世界を創りあげた。また、こうした一連の地球の活動は、微生物が大型生物へと爆発的な進化を遂げた引き金ともされており、今日の人類繁栄には欠かせない出来事だったといえる。

 時は移り、現在、この二酸化炭素は温暖化の根源で、人類にとって悪の親玉のような存在として扱われている。一方で、二酸化炭素をはじめとする温暖化ガス削減の取り組みは、世界的な経済危機を脱出する起爆剤として大いに期待されている。低炭素革命を通じた産業構造の転換や新たな需要の創出は本当に成し遂げられるだろうか、様々な要因が重なり合い追い風が吹いている今しかチャンスはないように思われる。

 なお、我が家も常に経済危機、平和的危機に瀕している。この難況を脱出できる起爆剤がどこかからやって来ないものかと切に願って久しい。 

(企画研究部門 主任研究員 高市孝一)