研究員ブログ

壁がない教室

先日、取材で山梨県早川町というところに行ってきました。その際に、早川北小学校という小学校を訪問したのですが、とてもユニークなところでしたのでご紹介いたします。

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この日はあいにくの雪。上流文化圏研究所から早川北小学校までの道中は雪一色でかなりたいへんでした。ま、私が運転したわけではないんですけど。

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校庭に雪の中で寒そうに立っているひとつの銅像を発見しました。近づいてよく見てみると↓

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学校の銅像の定番でもある「二宮金次郎(尊徳)像」でした。
ちなみにおまけ情報ですが、尊徳は「そんとく」ではなく「たかのり」と呼ぶのが正しく、「金次郎」は通称で正確に言えば「金治郎」と書きます。

二宮尊徳は、江戸時代後期の現在の神奈川県小田原市の人で、農村復興のために「報徳思想」と呼ばれる思想をもとにした実践をした(これを報徳思想といいます)ことで知られる偉人です。

これはおまけ情報ですが、子どものころに薪を背負いながら寸暇を惜しんで読書をしたというエピソードは、薪を拾ってそれをお金に換えて、そのお金を勉強に費やしたのは事実ですが、その薪を背負っての姿で勉強したという事実はないというのが通説です。

ちなみに二宮尊徳は一時期「お札」になっていたことを知っていましたか?

とまあ、ウンチクはこれくらいにしておきまして、この二宮金次郎像の持っている本は何という本でしょうか? おっと、またウンチクになってしまった。これについては若松進一さんのブログでも紹介されているので知っている人も多いでしょうね。「大学」と呼ばれる中国の古書をもっているんです。

なお、二宮金次郎の像が持っている書「大学」には、たいてい次の文が書かれています(書かれていない像もありますので要注意!)。

一家仁 一國興仁(一家仁なれば一国仁に興り)
一家讓 一國興讓(一家譲なれば一国譲に興り)
一人貪戻 一國作亂(一人貪戻なれば一国乱を作す)
其機如此(その機かくのごとし。)

※意味については調べてみましょう。

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二宮金次郎像を離れて、階段に来てみると、先生方が階段を利用して雪の滑り台をつくっていました。この早川町がある地域は山間部なので積雪が多いためにできることなんですよと教えていただきました。愛媛県でも久万高原町とかの小学校でもやってるんでしょうか?

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今度は屋内の紹介です。職員室はなんとガラス張りで廊下からすべてが見えます。こんな小学校ははじめてです。児童と保護者、教師、地域の人たちのお互いの顔が見えるということを重視しているそうです。

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お次は教室。教室と教室の間仕切りがないところは知っていましたが、それは廊下と教室の間の壁がないところであり、この早川小学校のようにワンフロアを棚やホワイトボードで仕切っているという何とも珍しいタイプの教室になっています。

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この早川北小学校は「地域の中の小学校」、子どもは全体で育てるという理念のもとで教育実践をされており、校舎もその理念の下でつくられているとのことでした。特に早川北小学校のHPには先生方のブログもあり、けっこう町民の方には人気だとか。

また、この早川町は複式学級を設置せず、町独自で教職員を採用して、かならず各学年に担任をしいています。ですから児童が1人に対して先生1人という学年もあります。

聞いたところによると、これは「施設の改修などにお金をつかうのであれば子どもたちのためになることにお金をつかう」という町長さんの方針だそうで(実際に役場の庁舎もたいへん老朽化していた印象がありました)、教育や人材育成を重視する町の姿勢をうかがうことができたように思います。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)