研究員ブログ

持続可能な観光と地域づくりを考える

えひめ地域づくり研究会議が主催している今年度最後の「地域ミニフォーラム」が伊予市で開催されました。

これは、伊予市が1市2町で合併したのを機に、あらたに制作した観光ガイドブックである「い~よぐるっと88」が発刊されたことにともない、「持続可能な観光と地域づくりを考える」フォーラムと題して開催されました。

このフォーラムでは、地域の歴史・文化遺産を見直すツーリズムや環境・景観保全、農漁村との交流を求めるグリーン・ツーリズムに対する関心が高くなる中、固有の地域資源に光をあて、これからの魅力ある地域づくりと持続可能な観光政策のあり方を模索するため、以下のスケジュールで行われました。

①基調講演
②スライド解説
③パネルディスカッション

p1050501.JPG p1050503.JPG

①の基調講演では、松山大学経済学部の鈴木茂教授が「『観光立国』と地域観光政策」~愛媛の観光の課題~と題して、愛媛県の現状や海外の事例をもとにお話をされました。

先生の話の中で特に印象的だったのは、都市と農村の格差のお話です。
日本の場合、農村は都市に人、物を供給している割に都市から農村へはあまり供給されていないという事実がある一方で、欧米の場合は都市住民は余暇を農村で過ごすというライフスタイルが定着して経済活動として農村も潤っており、日本も余暇を農村で過ごすというライフスタイルが確立されれば、「都市と農村の格差」という問題もなくなってくるのではないかというお話が印象的でした。

p1050504.JPG p1050507.JPG

②のスライド解説では、えひめ地域づくり研究会議の岡崎事務局長が、伊予市歴史街道と題して、伊予市のあまり知られていない文化財を紹介し、「埋蔵文化財」とは土の中に埋まっている文化財のことをさすが、それとは別に住民自身がものの価値に気が付いていない文化財もまた、「埋蔵」文化財であるというお話は、みなさん納得されていたように思います。

p1050520.JPG p1050568.JPG

③では、えひめ地域づくり研究会議の運営委員をされている門田さんがコーディネーター役、基調講演をされた鈴木先生がコメンテーター役として、「い~よぐるっと88」の執筆に関わった伊予市の住民の方3名(旧伊予市、旧中山町、旧双海町からそれぞれ1名ずつ)と、観光カリスマでもある若松進一さん、伊予市産業経済課の米湊さんをパネリストとして、「これからの伊予市・観光まちづくりへの提案」と題して、パネルディスカッションが行われました。

p1050570.JPG

パネルディスカッションでは、実際に本の編集に携わった方の苦労話や、編集の成果などが話し合われ、なかなか活発な議論ができていたように思いますし、途中に笑いもおきるなど参加者も非常に身近に感じながらのパネルディスカッションができたのではないでしょうか。

その議論をごく簡単にまとめますと、以下の5つになるでしょうか。

(1)行政と民間が協力してつくることができた(協働の視点)
(2)普段何気ないものに価値があることがわかった(発見と再発見)
(3)高齢者の知的エネルギーをもっと活用すべき
(4)新しい観光メニューの可能性を感じることができた
(5)伊予市の観光情報が発信できた

もっとも印象的なのは、これまで市町村合併でメリットよりもデメリットばかり表面化されている中で、伊予市の場合は住民自身が調査をし、文化財を発掘して整理を行うという行為そのものが、地域づくりを行う上でもたいへん重要であるということでしょう。

また伊予市は市町が合併したことによって「町(旧伊予市)」・「山(旧中山町)」・「海(双海町)」という、それぞれ異なる地理的な特徴をもつ自治体が合併しており、それをうまく活かさない手はないということです。

今後の伊予市は「観光」という側面で、合併した強みを見出していくということがうかがうことができたフォーラムだったように思います。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)