6月3日(日)には、前日の四万十市に引き続いて松野町目黒地区において「街道灯籠祭り 蛍の畦道をゆく」ということで、田んぼの畦道を灯籠でライトアップされるイベントが行われました。
この日はちょうど、四国風景街道交流会と畦道コンサートも同時開催され、会場の松野南小学校体育館では、四国風景づくりの会の代表をつとめる羽藤英二東京大学准教授さんの司会のもとで、四国西南地域各地の「美しい風景づくり各地の事例紹介」が行われた後、会場となった松野南小学校児童の皆さんによる風景づくり活動の発表報告が行われました。
各地の事例報告では、それぞれの地域づくり団体が実施しているイベント報告、四国風景づくりの会のみなさんと一緒に実施したワークショップの紹介(これを会では「風景づくり活動」と呼んでいます)がメインでしたが、それぞれが地域の特徴を活かしながら風景づくり活動、地域づくり活動を実践されていることが会場で紹介されており、各地区での取り組みの情報交換を図っていたようです。
その後、本来であれば目黒川付近の特設会場での「畦道コンサート」が行われる予定でしたが、あいにく前日からの雨で松野南小学校でのコンサート開催となりました。
そして、コンサートが終わる頃になると、それまで降っていた雨があがり、ライトアップができる状態になったので、子どもたちが点灯式を行った後に、いよいよ畦道にある灯籠を点灯していました。
ちょうど、この日は雨上がりということで、蛍も飛んでおり、文字通り「蛍の畦道」となっていたようです。なお、このイベントは2回目だそうで昨年度は蛍が飛ばなかったとのこと。今年は、蛍と灯籠のおりなす優しい光りが訪れた人の心を癒していたようで、主催者である「目黒の里ホタル愛好会」のみなさんもたいへん喜ばれていたようです。
松野町のイベントについては、前日に行われた四万十のイベントとはやや異なり、四国風景づくりの会のみなさんが会場設営など、事業全般にわたりボランティアスタッフとして関わっている様子が見受けられ、地元への関わりが強いのが特徴のようで、地元の人たちと一緒に活動をしながら事業を展開しているようでした。
また、「街道灯篭祭り」というネーミングからして、この名前を付けた方は司馬遼太郎さんの影響を受けているのではないかと勝手に想像してしましたが、そのあたりについてはまったく確認が取れておりませんので、次回行われるイベント取材時の課題としたいと思います。
さて、この次なる「街道灯籠祭りイベント」ですが、各地の予定は以下のとおりになっています。
6月9日 海街道をゆく 愛南町僧都川(ぞうづがわ)河口
7月7日 酒蔵の道をゆく 愛南町小西酒造周辺
8月5日 水面の道をゆく 四万十市佐田沈下橋
8月7日 天涯の道をゆく 宇和島市遊子水荷浦段畑
8月16日 行灯回廊をゆく 宇和島市岩松地区
8月25日 山街道をゆく 愛南町山出地区
イベント詳細については、四国風景づくりの会まで。HPはコチラです。
このイベントについてのお問い合わせは、松野町役場 蛍の畦道プロジェクト事務局(0895-42-1111)まで。
(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)
6月2日(土)に愛媛県のお隣である高知県四万十市安並地区で開催されたロウソクでライトアップする「あじさいプロムナード」(主催:四万十かいどう推進協議会)を取材しました。このイベントは「四万十・南伊予風景街道 街道灯籠祭り」と銘打って、「灯籠」というひとつの共通項により、四国西南地域の地域づくりイベントを連携して発信しようという狙いで行われているもののひとつのイベントとして位置づけられています。
そして、この日ライトアップの会場となった安並地区は「水車」と「紫陽花」で有名なところで、水車は「四ヶ村溝(しかむらみぞ)の水車」と呼ばれ歴史は古く江戸時代からの由来があり、現在は観光用に保存されているそうです(下の写真を参照)。
この風景を3000本のロウソクを使ってライトアップして、夜の水車と紫陽花の風景をあじわおうという試みです。
ライトアップ当日、この日はかなりの悪天候。しかし、午後3時過ぎから地元の自治会のみなさんや小学生のみなさんが集まって、3000個のロウソクを設置するための準備をしていました。
主催者の「四万十かいどう推進協議会(事務局:中村商工会議所)」の方にお伺いすると、この安並地区でライトアップを行うのははじめてだそうで、このライトアップ設置作業は地元住民の有志のみなさんと一緒にやるということでして、ゆくゆくは地元の皆さんが主催ということでやるという方向性をもちながら事業をすすめているそうです。
で、気になる作業の様子をご紹介し、その後のライトアップされた風景をご覧ください。
ロウソクは100円ショップで購入したもの、ロウソクを入れる器はお酒を入れていた空き瓶を酒屋さんから無償で提供してもらったものということで、このイベントの最大の特徴はほとんど経費がかかっていないことです。それに3分の1くらいまで砂を入れて(真ん中の写真)、ロウソクを入れれば灯籠の完成(右の写真)です。この砂も無償提供だそうです。
それを道路沿いに並べてあとは日が落ちて点火すれば「プロムナード」の完成です。
といいたいところだったのですが、ここからがこのイベントが大変でした。点火したらすぐに雨が降ってきて、ロウソクの火が消えてしまい、再度点火するという作業を何回か繰り返すというかなりたいへんな作業にもかかわらず、スタッフのみなさんの努力の甲斐もあり、すべてのロウソクとはいかないまでも訪れたみなさんもたいへん感動するような空間ができあがっていたようです。
※デジカメの性能と撮影者の技術不足により雰囲気が十分に伝えきれないことをお詫び申し上げます。
さて、この取り組みの特徴は大きく二つだと思います。
ひとつは、前にも書きましたが「ライトアップ経費がほとんどかからない」ということがあげられます。ロウソクのほかにも懐中電灯も設置していましたがそれも100円ショップで購入ということで3000個のライトアップにかかる経費はほぼロウソク代のみということで、どこの地域でもできるイベントであることが大きな特徴でしょう。
そして、もうひとつは地域の人たちの参加できる仕組みがあるイベントであるということでしょうか。ロウソク設置の準備を子どもから高齢者まで地域の人たちが参加してロウソクを並べるという仕組みは、地域づくりにおける『公共性や協働性』といった点においてもかなり有効な取組であるといえます。
このイベントについてのお問い合わせは「四万十かいどう推進協議会」まで。関連HPはコチラです。
なお、この「街道灯籠祭り」に関するホームページはコチラです。うちの地域でも灯籠イベントをと考えておられる方は「四国風景づくりの会」にお問い合わせをしてみてはどうでしょうか?
(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)
29日(火)、四国経済連合会産業委員会主催の講演会が松山全日空ホテルを会場に行われました。テーマは「地域イノベーションと産学連携」。地域イノベーションや起業家形成にくわしい横浜国立大学大学院教授の三井逸友教授を講師に、「今日における地域イノベーションの可能性-地域の再生に四国の強みを活かす」という演題で講演をしていただきました。
講演では、まず「『地域問題』の現実」ということで、現在の地域間格差(高齢化、所得、失業率、経済指標など)の現状説明があったのち、それぞれの背景には例えば「経済のグローバル化」や「生活様式の変化」、「バブル崩壊による地域振興策の破綻」、「地方分権化の停滞」、「地域コミュニティの崩壊」などがあると述べられていました。
このような経済面でのグローバル化が見られるようになると、今までの「ものづくりの経済(=画一化された商品を大量かつ安価に作る経済)」では立ち行かなくなることが予想され(たとえば、安価な労働力の地域へどんどん工場が移転してしまう)、「量」や「値段」でない、「質」や「オリジナリティ」といった新しい価値で勝負することが求められ、多様化した人々の好みにあわせて新しい商品や新しい製造方法を創り出す必要がでてきます。
そういう「新しい価値を創り出す(=イノベーション)」経済社会のことを知識基盤経済(=研究開発などによって生み出される知識をいかに新しいプロダクト(商品やサービス)やプロセスに結びつけて市場や企業に導入し、経済成長を維持し持続的発展を可能にしようとする経済)」といい、知識基盤経済においては「地域こそが創造と革新の原点」であり、「新しい価値を創造した経済活動は地域で生まれる」と述べられていました。
なぜ、地域こそが創造と革新の原点となりうるのか。それは地域にこそ「新しい価値の創造の源泉」があるからです。たとえば、普段ある何気ないモノが実は価値があったりして、それがビジネスのチャンスとなるという流れの中で、普段ある何気ないものとはまさしく「地域にある」わけです。
問題はその地域の何気ないモノ(=これを「暗黙知」ともいいます)に価値を見出すのは「地域の人間」です。ただ、その価値を見出すのは非常に難しい。そのためには見出す能力といったものが必要になってきます。それを身に着けるためのものが「地域を知るための学習」となるわけです。
ただ、たったひとりが地域にあるモノの価値に気づき、それを活かして起業しようとしても、いろいろと不都合や困難な面がでてきます。それを克服するのに必要なのが「人的ネットワーク」です。
たとえば、これまでにはないモノをつくる際に、自分では解決できずに、どうしてもこえなければならない新しい技術が必要になってきたとします。その技術を開発してもらうために必要な研究者や技術者を自分が知っておかなければ前に進みません。しかも、その研究者や技術者は自分が見出した新しい価値について理解してもらう必要があるわけです。そうなると、遠くの人よりもより地元に密着している人物のほうがわかりやすくなります。
また、資金援助をお願いしたいと思っても、遠くの金融機関よりも近くで地域に密着している金融機関を選んだほうが話がしやすくなります。それだけ地域のことを知っているからです。また、それにかかるさまざまな規制などを撤廃するためには行政の協力も必要になってきます。そうなると国よりは地方自治体のほうが都合が良くなってきます。
そうした地域を軸とした住民、行政、企業、研究者や金融機関といった枠組みで産業をおこすことができる環境や状態のことを「産業クラスター」と呼び、それが「地域イノベーション」を促進する環境となるわけです。
ただ、研究者側も金融機関側、行政の側も、ただ待っているだけではだめで、攻めの姿勢というか、積極的に地域のことを知り、連携していくことを通せば、また新しい価値を見出し、起業家精神をもつ人材育成を図ることにもつながりますし、あわせて人的ネットワークを広げることにより、自分たち自身も研究活動やビジネスチャンスをつかむことが重要になってくるということです。ゆえに、「産官学」の連携が叫ばれているのでしょう。
しかしながら、ここでの最大の問題点は、地域に関心や問題意識を持ち、新しい価値に気がつき、起業家精神をもつ人材をどれだけより多く育成、輩出、発掘するかという根本なことでしょう。残念ながら時間の都合で講演の中では多くは語られなかったのですが、「起業をした人はその地域で高い教育を受けて、一度外へでて地域に帰ってきた人材が多い」というお話しは、過疎で苦しむ地域にとっては非常に勇気付けられる内容だったように思います。地元で起業したいと思えるような教育を行えば、都会に出て行った人が地域へ帰ってくるということにつながるというのはちょっと言い過ぎでしょうか?
「まちづくりは人づくり」、「まちづくりには『よそもの』『ばかもの』『わかもの』」とよく言われますが、どんなことでもやはり人材育成ということが大きな鍵を握るということなのでしょうか。
(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)
5月23日から25日の3日間、「第15回環境自治体会議うちこ会議」がエコロジータウンを目指す愛媛県内子町で開催されました。
環境自治体会議とは、環境自治体をめざす自治体同士が、情報交換や相互交流、研究・実践活動を進める場として創られたネットワーク組織です。今回は、地球に生命のあるもの全てに影響を与える環境問題の発生に、持続可能な社会を目指し、環境に配慮した暮らしを実践するとともに、全国の環境先進自治体や団体等との交流及び情報交換の場を設けることにより、国民、環境団体、自治体関係者等の環境に対する意識の高揚を図るために開催されました。
第15回目の環境自治体会議は初めて四国で開催され、「暮らし再考 自然再生 ~今見つめなおそう 真のエコロジー~」のテーマで、環境自治体会議の会員(59自治体)や県内外から約750名の参加がありました。
初日は、地元“劇団オーガンス”が環境問題を表現した「僕らもみんな生きている」の公演で幕を開けました。全体会第1部では、地元内子町長が話題提供者となり、「歴史的景観保全が果たしたもの」について4名の論者により、歴史的景観の重要性、原風景の共有化などについて討論がなされました。第2部では、「エコロジーのまちづくり 四国から発信!」をテーマにパネルディスカッションが行われました。東京都日野市長がコーディネート役を務め、徳島県上勝町長、高知県梼原町長、高知県馬路村長、愛媛県新居浜市長より、それぞれの市町村のおかれている立場での環境問題への取組や環境に配慮したまちづくりについて報告がありました。ゼロ・ウェイスト宣言(上勝町)、風・光・水・森を生かしたまちづくり(梼原町)地域資源のまるごと活用術(馬路村)マイ箸運動(新居浜市)など先進的な取組の発表がありました。
2日目は内子町全域で、「石畳・むらの風景づくり」「バイオマスペレットの今と未来」「食の安全から考える農業」など14のテーマで分科会が行われました。私は「近自然工法に見る自然環境保全」の分科会に参加しました。午前中はフィールドワークで、近自然河川工法地、有形民俗文化財の石垣、成留屋の住環境と河川周辺の見学をしました。昼食は小田川のシンボル“榎”の下でとり、地元愛媛大学生の「小田川を守れよもだおやじの挑戦」の紙芝居と国の河川行政の考え方を変る一助になった「五十崎シンポの会」の取組経緯が報告されました。その後、場所を五十崎凧博物館に移し、5人の話題提供者からの発表とコーディネーターを務めた㈱西日本科学技術研究所の福留氏の講話など、環境保全と土木事業、国と地方、町民(企業)と行政などあらゆる観点から再考しながら、水辺環境と土木事業について研鑽を深めました。
※小田川のシンボル“榎”
3日目は、内子の伝統的建造物である「内子座」で全体会が行われ、前日の各分科会の報告がありました。どの分科会も“内子らしさ”が随所に見られ、全国から集まった参加者も「町並み・村並み・山並み」を満喫するとともに「暮らし再考 自然再考」されたようでした。最後に、「自らの地域の資源を再考し、豊かな社会を子どもたちへ引き継ぐための新たな一歩を踏み出す」ことを宣言し、全日程を終了しました。
1日目の歓迎レセプション、2日目の交流会と両日に渡り、地元色(食)を出した宴を催すなど、官民一体となってもてなしていただきました内子町の皆さんに心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。そして、お疲れさまでした。
(文責 まちづくり活動部門 研究員 松本 宏)
本日、政府、愛媛県主催による「地域活性化応援隊in愛媛」が西予市米博物館講堂で開催されました。
この相談会は、政府が取りまとめた「地域活性化政策体系~「魅力ある地域」への変革に向けて~」の周知を図るとともに、地域の取組みが具体的かつ実質的なものとなるよう後押しするために開催されたものです。
相談会では、第1部として、事務局から「地域活性化策の推進に関する政府の取り組みについて」の概要説明の後、渡邊地域活性化担当大臣のビデオメッセージ、「えひめ夢提案制度」の説明(愛媛県企画調整課)があったのち、地域活性化取組事例紹介として、「地域活性化伝道師」と呼ばれる二人の方のお話しを聴講しました。
この「地域活性化伝道師」とは、「地域からの相談に対し、適切な助言や取組事例の紹介を行うことのできる民間専門家、行政関係者及び政府関係機関職員を対象として登録された「地域活性化応援隊」の方のうち、民間専門家や一部の行政関係者等について、地域活性化応援隊の中核を担う人材のことをいいます。
今回、愛媛で地域活性化の取組事例紹介をしていただいた「伝道師」の方は、
生重 幸恵(いくしげ ゆきえ)さん
(NPOスクール・アドバイス・ネットワーク理事長、杉並区学校教育コーディネーター)
と
川又 順次(かわまた じゅんじ)さん
(別府市ONSENツーリズム局観光まちづくり室主幹)
のお二人でした。
生重さんのお話は、ご自分が運営されているNPOが小学校における総合学習の地域指導者の紹介、放課後児童の学校開放といった事業を行い、学校と地域、家庭をつなぐ役割をNPOが担うことで、コミュニティの再生を図ることを通して地域が活性化した事例を紹介していただき、川又さんのお話は、政府が実施している地域活性化に関する事業をうけての別府市における観光事業の紹介をしていただきました。
第2部では、関係省庁の担当者が、個別の地域活性化の取り組みについて相談に応じる相談会が行われ、県内のいくつかの団体が熱心に相談をしていたようです。
まちづくり、地域づくりをやっているんだけど、このあたりが困っているんだけどなあ・・・という方、お問い合わせしてみてはどうでしょうか。お問合せ先は県庁企画調整課または都市再生本部まで。
(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)