研究員ブログ

希望の島フォーラム

だいぶ日が過ぎてしまいましたが、2月16日(土)に上島町で行われました地域ミニフォーラム「希望の島フォーラム」の模様をご紹介いたします。

地域ミニフォーラムは、えひめ地域づくり研究会議と(財)えひめ地域政策研究センターが共催して、県内各地でまちづくりをテーマにしたフォーラムを開催しており、今年度は今月の伊予市のフォーラムを入れて4回開催しました。

その三回目となった上島町でのミニフォーラムは、財団法人松下政経塾とえひめ地域づくり研究会議が主となって「希望の島フォーラム」と銘打って、今後の魅力ある島づくりについて、島内外から150名ほどの参加者が意見を交換しました。

さて、なぜ今回のミニフォーラムに財団法人松下政経塾が関わっていたかと申しますと、今回の仕掛け人である兼頭一司さんが松下政経塾の26期生ということもあり、兼頭さんの卒業フォーラムをも兼ねてということで実現しました。

また、兼頭さんは当センターとも深いつながりがあり、昨年の1月から2月にかけて当センターでインターンシップをした経験もあります。詳しくは舞たうん92号で若松進一さんがエッセイで紹介していただいていますのでご覧ください。

そんな関係もあって、財団法人松下政経塾とのコラボによるミニフォーラムの実現となったわけです。

今回の希望の島フォーラムでは以下のことが行われました。一日のフォーラムのメニューにしてはかなりのボリュームでしたが、いずれも内容の濃いものばかりだったように思います。

Ⅰ講演 神野直彦さん(東京大学教授)による講演
Ⅱ寄席 若松進一さんによる笑いの夕日寄席
Ⅲ報告 兼頭さんの成果報告
Ⅳ休憩 摘み菜料理の試食
Ⅴ発表 地元学の成果を子どもたちが発表
     (会場とのトークセッション形式)
Ⅵ反省 有志による交流会

順に写真を交えて簡単にご紹介いたしましょう。

1.神野先生の講演会

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神野先生からは、「地域と人間の回復」と題して、これからの持続可能な地域づくりを行うために、北欧諸国などの外国の事例をあげながら、これまでの工業化社会の中でおざなりにされてきてしまった「環境と文化」による地域の再生をと述べられました。

2.若松進一さんによる夕日寄席

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神野先生の講演の後は、えひめ地域づくり研究会議の若松代表運営委員による夕日寄席。会場を笑いの渦にひきこみつつ、参加者に元気をあたえていたように思います。

3.兼頭さんの報告

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つづいて兼頭さんも若松さんに触発されて(?)落語をする格好で登場。けっこうさまになってます。なぜ自分が上島町に移住してがんばろうとしているのか、そういった兼頭さんの思いを語ってくれました。堂々の「地域づくり人」宣言といったところでしょうか。

4.摘み菜料理の試食

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休憩時間には弓削でとれた野草(摘み菜)をつかったお菓子やお茶を試食するコーナーが設置されました。素朴な味でおいしゅうございました。

5.地元学の成果を子どもたちが発表

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前の週に実施した地元学の成果を子どもたちが発表してくれました。その発表を受けて兼頭さんの司会のもとで子どもたちと神野先生、若松代表をまじえて会場とのトークセッションを行いました。また、会場の壁には地元学で学習した成果を子どもたちがまとめた壁新聞が掲示されていました。地元学の様子は研究員ブログを参照してください。

6.反省会 

反省会の様子を写真撮影しておりませんでした・・・。すいません(汗)
反省会では、島へ移住して地域づくり活動をがんばる兼頭さんご一家に対して関係者でエールを送りました。がんばってください!センターも応援しております。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

壁がない教室

先日、取材で山梨県早川町というところに行ってきました。その際に、早川北小学校という小学校を訪問したのですが、とてもユニークなところでしたのでご紹介いたします。

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この日はあいにくの雪。上流文化圏研究所から早川北小学校までの道中は雪一色でかなりたいへんでした。ま、私が運転したわけではないんですけど。

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校庭に雪の中で寒そうに立っているひとつの銅像を発見しました。近づいてよく見てみると↓

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学校の銅像の定番でもある「二宮金次郎(尊徳)像」でした。
ちなみにおまけ情報ですが、尊徳は「そんとく」ではなく「たかのり」と呼ぶのが正しく、「金次郎」は通称で正確に言えば「金治郎」と書きます。

二宮尊徳は、江戸時代後期の現在の神奈川県小田原市の人で、農村復興のために「報徳思想」と呼ばれる思想をもとにした実践をした(これを報徳思想といいます)ことで知られる偉人です。

これはおまけ情報ですが、子どものころに薪を背負いながら寸暇を惜しんで読書をしたというエピソードは、薪を拾ってそれをお金に換えて、そのお金を勉強に費やしたのは事実ですが、その薪を背負っての姿で勉強したという事実はないというのが通説です。

ちなみに二宮尊徳は一時期「お札」になっていたことを知っていましたか?

とまあ、ウンチクはこれくらいにしておきまして、この二宮金次郎像の持っている本は何という本でしょうか? おっと、またウンチクになってしまった。これについては若松進一さんのブログでも紹介されているので知っている人も多いでしょうね。「大学」と呼ばれる中国の古書をもっているんです。

なお、二宮金次郎の像が持っている書「大学」には、たいてい次の文が書かれています(書かれていない像もありますので要注意!)。

一家仁 一國興仁(一家仁なれば一国仁に興り)
一家讓 一國興讓(一家譲なれば一国譲に興り)
一人貪戻 一國作亂(一人貪戻なれば一国乱を作す)
其機如此(その機かくのごとし。)

※意味については調べてみましょう。

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二宮金次郎像を離れて、階段に来てみると、先生方が階段を利用して雪の滑り台をつくっていました。この早川町がある地域は山間部なので積雪が多いためにできることなんですよと教えていただきました。愛媛県でも久万高原町とかの小学校でもやってるんでしょうか?

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今度は屋内の紹介です。職員室はなんとガラス張りで廊下からすべてが見えます。こんな小学校ははじめてです。児童と保護者、教師、地域の人たちのお互いの顔が見えるということを重視しているそうです。

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お次は教室。教室と教室の間仕切りがないところは知っていましたが、それは廊下と教室の間の壁がないところであり、この早川小学校のようにワンフロアを棚やホワイトボードで仕切っているという何とも珍しいタイプの教室になっています。

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この早川北小学校は「地域の中の小学校」、子どもは全体で育てるという理念のもとで教育実践をされており、校舎もその理念の下でつくられているとのことでした。特に早川北小学校のHPには先生方のブログもあり、けっこう町民の方には人気だとか。

また、この早川町は複式学級を設置せず、町独自で教職員を採用して、かならず各学年に担任をしいています。ですから児童が1人に対して先生1人という学年もあります。

聞いたところによると、これは「施設の改修などにお金をつかうのであれば子どもたちのためになることにお金をつかう」という町長さんの方針だそうで(実際に役場の庁舎もたいへん老朽化していた印象がありました)、教育や人材育成を重視する町の姿勢をうかがうことができたように思います。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

アンテナショップ訪問

2月5日(火)から7日(木)にかけて東京方面に出張いたしましたので、空き時間を利用して各県のアンテナショップを訪問いたしました。

1.せとうち旬彩館(香川県・愛媛県)

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まずは外せないのが新橋にある愛媛県と香川県の共同アンテナショップ「せとうち旬彩館」ですね。愛媛県と香川県の魅力あふれる商品がたくさん棚に並んでいました。知らない特産品も多く、お勉強になります。

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二階には愛媛県と香川県の観光情報満載のパンフレットや加工品コーナーもありました。

ここでは二階にある「かおりひめ」で昼食をとりましたが、ちょうど訪問した時間帯がランチタイムでしたので付近のビジネスマンやOLさんでにぎわっていました。順番待ちのOLさんのグループに「なぜ、食べにくるのか?」「利用頻度は?」と軽く質問いたしましたところ、「勤務先が近くにあってグループのひとりの方が新居浜市出身ということもありよく利用している」、「うどんが好きだから」、「ここ(=かおりひめ)はけっこう人気」とのお返事を頂戴しました。

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この日、注文したのはランチタイム限定の鯛飯(ミニうどんつき)。最近、宇和島鯛飯のほうが注目されていますがオーソドックスな鯛飯もこれまた美味です。

2.宮城ふるさと情報プラザ(宮城県)

次に訪問したのが宮城県のアンテナショップ「宮城ふるさと情報プラザ」。JR池袋駅の近くになります。この日に宿泊する場所がたまたま池袋だったので、通りすがりに発見いたしました。

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夕方だった(18時頃)のですでにネオンがついていましたが、仕事帰りのビジネスマンや主婦の方が多数来店されており、この日は牛タンの試食販売などをやっていた関係でかなりにぎわいを見せていたようです。

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二階には宮城の地酒紹介コーナーのほか、観光情報コーナーがありました。宮城県は移住・交流・田舎暮らし専門のブース(といっても単なるパンフレット設置コーナーですが)があり、なかなかの充実度でした。愛媛県のアンテナショップと比べて。宮城県のアンテナショップは飲食店が併設されていないようです。

3.山梨県アンテナショップ、山口県アンテナショップ

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※山梨県のアンテナショップにはワインの特設コーナーも。

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※山口県のアンテナショップはかなり商品が多かったです。 

事務局日誌でも紹介しましたが、東京駅の近くには山口県と山梨県のアンテナショップがあります。そうほうともに飲食店は併設されていません。
ちなみにこのアンテナショップの同じビルの13階に(財)地域活性化センターがあります。

4.ふるさと情報プラザ

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(財)地域活性化センターがらみということで、有楽町にある「ふるさと情報プラザ」も訪問しました。ここは(財)地域活性化センターが運営するアンテナショップで、日本全国の観光パンフなども設置されているほか、毎回どこかの自治体のフェアが実施されており、訪問した日には福岡県北九州市が特産品フェアを実施していました。

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試食品を食べてアンケートに答えると、北九州のお土産ももらえるということで、さっそくアンケートに答えてしまいました・・・。

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観光パンフのコーナーのところで愛媛県のところをみていると、ありました!愛媛県への移住パンフレット「おかえり愛媛」。みなさん、愛媛にきてくださーい!

今回、訪問したアンテナショップのうち、飲食店が併設されていたのは「せとうち旬彩館」だけでしたので、ちょっと調べてみると全国の都道府県のアンテナショップのうち、飲食店を併設していないところのほうが多いようです。やはりスペースの関係でしょうか。アンテナショップも奥が深いですね。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

年の暮れに夕日寄席を開催

またもや年末の話題で恐縮です。昨年の御用納め(12月28日)の終了後、若松進一さんが当センター職員に対して「夕日寄席」を行ってくださいました。

この夕日寄席とは、若松進一さんが11月に開催されました観光カリスマ塾(詳しくは研究員ブログを参照してください)で行ったもので、地域づくりに関する話題を小噺にして落語のようにお話しする講演会の形式で、そのお題についても配付された「夕やけ徒然草」という高座本の中から、聞き手側がリクエストできるという仕組みになっています。

今回の夕日寄席では、時間の都合により「お題をお客からのリクエスト」という形の寄席ではなく、若松さん、いやいや「夕日亭大根心師匠」自身が数あるお題のうち、「ハーモニカが吹けた」「外から見ないと中は見えない」「四つの願望」の3つを選んでお話していただくという形になりました。

大根心師匠!

最初のお題である「ハーモニカが吹けた」では、子どもの頃から音楽が苦手だった自分が、今では150以上もの楽曲をハーモニカで吹けるようになったことを通して、「努力することの大切さ」を教えていただきました。

ハーモニカ

※ハーモニカも御披露いただきました。 

次のお題の「外から見ないと中は見えない」では、学校の校庭などによく設置されている「二宮金次郎(尊徳)の像」が持っている本には何と書かれているのかというエピソードから、中にいるとなかなか分からないことも、外から教えてもらって分かることは多いということを教えていただきました。そして、その教えてもらったことを謙虚に受け止めて、それをどう生かしていくかも大事であることを教えていただきました。

ちなみに、この二宮金次郎の像が持っている本には、中国の古書である「大学」の一節が刻まれています。

最後のお題の「四つの願望」では、人間には「幸せになりたい」「お金持ちになりたい」「健康で長生きがしたい」「成功したい」という4つの願望があり、そういった願望をかなえた人たちは日々のコツコツした努力が実を結んでいるという事実をもっと知らなければならないといったことを教えていただきました。

トンボがとまった

※途中、指元に美男美女にしかとまらないというトンボが止まった「とっても男前」の方もいらっしゃいました(詳しくは若松さんのブログ参照)。 

なお、この日、夕日寄席を聞きにきたのは当センター職員のほか、夕日寄席をぜひ聞きたいという県庁の市町振興課や企画調整課の職員有志の方なども集まり、総勢でおよそ20名ほどで夕日寄席を鑑賞しました。

寄席を聞いている様子

ちなみに、この夕日寄席の様子については、若松さんのブログにも詳しく掲載されていますのであわせてご覧ください。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

バイオマス未活用エネルギー導入促進セミナー

 12月18日に開催された木質バイオマス導入促進関連セミナーに参加しました。

 セミナーでは、広島大学の松村教授による木質バイオマスの事業化に向けた課題と展望について総括的なお話の後、高知県での木質バイオマス利用状況についての報告がありました。

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 石油ショックの際、木質バイオマスへの注目が高まり燃料であるペレットの製造施設が全国で立ち上げられたものの、石油価格の安定とともに急速にその数を減らし、現在まで続いているのは3箇所のみとのこと。うち2箇所が四国にあり、ひとつは徳島、もうひとつが高知です。

 高知県は県土に占める森林率が84%で全国一。豊かではあるものの十分に活用されていない森林資源をいかに利用するかが永年の課題となっていますが、昨今の地球温暖化対策の動きや原油価格高騰により、少し明るい兆しが見えつつある状況です。高知県産業振興センターの松崎コーディネーターによると、計画中も含めると高知県内のペレット工場は近いうちに11箇所になる見込みとのことです。

 高知県ではハウスでの施設園芸が盛んですが、このところの石油高騰によりハウス加温用の燃料価格が上昇し苦戦を強いられています。豊かな森林資源の活用と地域産業の課題解決が一挙両得で実現できる新しい地域社会システムが構築できれば、地域活性化への効果はとても大きなものとなるでしょう。

 一方、木質バイオマスの活用には様々な課題が山積しているのも事実です。森林資源を取り出し運搬するコストをどうするかという問題がありますし、ペレットボイラーなどの設備もまだまだ高価です。最近では安価な海外製ペレット輸入の動きや、大手商社による国内大規模ペレット工場建設の動きもあり、地域の製造施設が対抗できるのか、懸念する声も聞かれます。

 しかし、エネルギーの地産地消が図られれば、地域のみならず地球全体でも大きなメリットが生まれることは間違いありません。愛媛県内でもバイオマスペレットの利活用に向けた取組みが進められています。豊かな地域づくり実現のためにも、今後の動きに注目したいところです。

(文責 企画研究部門 主任研究員 武智公博)