研究員ブログ

団塊世代はどの程度移動するか

「愛媛ふるさと暮らし応援センター」が当センター内に開所され、ポータルサイト「えひめe移住ネット」を新設し、団塊の世代の方を中心とした移住・交流の支援・促進に向けたサービス提供を開始して2週間あまりが過ぎた。

現在、当センターが行っているような県単位の団塊の世代の移住・交流を促進・支援する事業は全国的に行われるようになっており、北海道、沖縄県、長野県の移住人気先の御三家のほか、島根県や茨城県、山梨県といったところも移住・交流促進に向けた取り組みが熱心なところといわれているようで、愛媛県は全国的にいえば「どちらかというとやや後発の部類」のようである。

さて、そんな団塊の世代の移住・交流促進に関して動き始めたばかりの「愛媛県」であるが、

「全国の県庁所在地を比較する中で最も家賃が安いのは愛媛県(松山市)」

というプラス材料(ただ、とあるテレビ番組で放送されていただけで、筆者はこれについては確証を得ていないので参考情報と思っていただきたい)もあり、これからでも十分に巻き返すことが可能な「興味深いデータ」がひとつあるのでご紹介したい。

以下は、「2015年までに見込まれている団塊世代のシェア変動でランキングしたもの」のうち、団塊の世代の流入傾向が強い都道府県ベスト10である。

第1位 千葉県

第2位 鹿児島県

第3位 福岡県

第4位 茨城県

第5位 長野県

第6位 熊本県

第7位 青森県

第8位 高知県

第9位 愛媛県

第10位 宮城県

これは、大和総研が「都道府県の将来推計人口」(2002年3月推計、国立社会保障・人口問題研究所)をもとにした将来の都道府県別団塊世代人口の見通しについて調査したレポートに紹介されていたデータの抜粋であるが、これを見ると愛媛県は第9位という上位にランクされていることがわかる。

また、非常に意外だったのは移住先進地といわれる「沖縄県(19位)」や「北海道(21位)」が上位にランクインしていないという事実である。その理由についてはこのレポートにかかれていなかったため詳細は不明であるが、これから団塊の世代の移住・交流を積極的にすすめていこうとしている愛媛県にとっては心強いデータであることには間違いない。

実際のところ愛媛県への移住について、どれくらいのニーズがあるのかということは調査したことがないのでなんともいえない部分もあるが、団塊の世代のセカンドライフの地として「愛媛県は経済的・社会的に人々を引き付ける一定の力がある」とこのデータから言えるのではないだろうか。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

メイド・イン愛媛2007

愛媛県は、全国有数のおでん消費県だって知ってましたか。そういえば、うどん屋やラーメン店に行くとサイドメニューにおでんがあますよね。また、おでんダネにも県産のじゃこ天を入れたり、からしにおでん専用の味噌を使ったりしていますよね。

9月15日(日)にアイテム愛媛で開催された「メイド・イン愛媛」に谷本研究員と行ってきました。このイベントは、県産品や県内工業製品の販売拡大を目指す商談会として、愛媛銀行・愛媛県が開催したものです。前日の14日から2日間の開催で、初日の商談には、大手量販店や百貨店など約1,000社の参加があったそうです。商談コーナーも広く確保されていて、約4,400件の商談が行われたそうです。

15日は一般に公開されていましたので、興味本位に会場に入りました。会場は「食」「アグリビジネス」「ものづくり」「環境」「学校関係」「経営サポート」の6つのゾーンに分かれていました。

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(ゾーン毎に商品が紹介されていました)

もちろん私たちは、朝食抜きでの会場入りでしたので、真っ先に食ゾーンへ突入。ほとんど全店舗の「試食」をさせていただきました。その中で、冒頭のおでんの話になったのです。全国でB級グルメでまちおこしが活発に行われている昨今、「おでんでまちおこし」もありかなと思った瞬間でした。今売り出し中の八幡浜チャンポンも来ていて、試食には多くの人が並んでいました。

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(八幡浜チャンポンを紹介する会社)

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(特設コーナーでは、寿司カウンターが設けられ無料で試食)

他のゾーンも覗きましたが、県内にはこんなに企業があるのと思うぐらい148ブースそれぞれに特色のある展示になっていました。

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(菊間瓦で暦を抜き取った工芸品と地産地消のコロッケ)

新たな県産品の発掘を目指し、日夜、企業努力をかさねている皆さんに敬意を表する1日でした。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 松本 宏)

ジャズと日本酒に心癒されるひととき

去る8月25日(土)午後6時30分から、上浮穴郡久万高原町のふるさと旅行村で「古民家でジャズと日本酒を」が開催され、町内外から約80人が訪れました。
私にとって町GT協議会の事務局である久万高原町産業振興課が前任部署ということに加えて、古民家とジャズという、ある意味異色の組み合わせがどのようなハーモニーを奏でるのかに興味もあって参加してきました。 

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このイベントは、自然をはじめとする久万高原町の魅力に触れてもらおうと、昨年12月に発足した「久万高原町グリーンツーリズム(GT)推進協議会」が手がける初めてのイベントです。
初開催にも関わらず、その手際の良さに驚かされましたが、町内で農家民宿を営んでいる方や、久万農業公園のクラインガルテン(市民農園)利用者、Iターンされた青年農業者など、協議会を構成する町内外の多様なメンバーの創意工夫・入念な打合せによって成り立っており、この催しを何とか成功させようという、協議会メンバーの強い意志が伝わってきました。

さて、会場となったふるさと村の「渡邊家」は明治12年建築(築128年!)、わら葺屋根の風格ある佇まいが特徴の古民家です。
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当日は久万高原町GT協議会のアドバイザーを務めていただいている香川大学の原直行助教授のお計らいで、沢山の学生さんが準備から運営、後片付けまでご協力いただきました。
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ご馳走の登場!
※久万高原町産にこだわった、高原の自然に育まれた魚や肉、野菜をつかった料理に舌鼓を打ちました。
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地元の酒造会社が限定で用意した3つの味が楽しめる日本酒セット
”利き酒”気分で楽しめました。
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もうひとつのご馳走、松山を拠点に活動するアマチュアバンド「グレッチ」によるジャズ演奏です。迫力ある、そして心に染みわたる演奏に参加者は聞き入り、ときには全員で手拍子を送って盛り上がりました。
およそ2時間ほどのイベント、意外な組み合わせに思えた「古民家とジャズ」ですが、涼しい風が吹き抜ける古民家での演奏は、初体験の音響効果(独特の雰囲気)があり、山の幸をふんだんに使った料理とともに、非常に満足感の高いイベントでした。
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松山から参加された女性の方に、次回開催への参加希望をお聞きしたところ、「美味しいお酒と料理、心のこもったもてなしに感激しました。次も必ず参加します!」との言葉をいただきました。

最近よく目にするライトアップ、空港の滑走路をイメージさせる演出です。今後のGT協議会による取り組みが、文字どおり久万高原町の「未来へ続く滑走路」になりそうな予感を感じた、夏の夜のひとときでした。
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なお、本イベントに関するご意見や、次回開催の予定などは久万高原町役場産業振興課までお問い合わせ下さい。
電話  0892-21-1111(同課 農業振興班)

(文責 まちづくり活動部門 研究員 坂本 耕紀)

人が集まる!行列ができる!講座、イベントの作り方

行政関係者のみなさん、講座やイベントの人集めで四苦八苦したことがありませんか? 人集めで動員をかけずに定員をオーバーしたことが何回ありますか? そんなイベント時の「人集め」に困っている方に強い味方となってくれる「本」が現れました。

それが、タイトルにもある「人が集まる!行列ができる!講座、イベントの作り方」という本です。著者は東京都大田区立男女平等推進センター、愛称「エセナおおた」と呼ばれる施設を指定管理者として運営しているNPO法人「男女共同参画おおた」の理事をしている「牟田静香(むたしずか)」さん。福岡県出身で元CA(キャビンアテンダント)という異色の経歴をもつ方です。

牟田さんの著書

※牟田さんの本

その牟田さんがおもに行政関係者を対象にして行う講演等で決まって使う「殺し文句(笑)」に、

「主催した講座やイベントで定員割れしたら、それは税金の無駄遣いであり、企画や広報が悪いので人が集まらない」

という言葉があります。私も含めてですが行政関係者としては耳が痛い言葉として受け止めましょう。

では、牟田さんが勤務している「エセナおおた」ではどうなのか。牟田さんの著書にはこう書かれています。

「年間の申込数約1300名、平均申込倍率3.3倍。しかもその講座はすべて男女共同参画社会の実現のための講座」

平均申込倍率が1倍を超える(しかも動員無し)という人気の講座を、いったいどのようにしたらつくることができるのでしょうか。そこにはどんな秘密が隠されているのでしょうか。詳しくは実際に本を手に取っていただいて、ご購入の上、ご覧ください(決して著者の回し者ではないですが)。

ここでは、牟田さんの著書の中で、とっても痛快な文章がありましたので一部分だけご紹介いたします。

これは、自治体の講座の担当者の人が集まらなかったときの言い訳と、その言い訳に対して牟田さんが返した言葉です。

言い訳①「ここは人口が少ないから」

→人口は関係ありません。

言い訳②「当日天気が悪かったので、人が来なかった。天気がよすぎて、みんなほかへ行ってしまった」

→天気のせいではありません。

言い訳③「住民の方の意識が低くて」

→意識を高めるための講座をやっているので、本末転倒な言い方です。人権や男女参画など意識改革を目的とした講座なのにこういういいわけが非常に多いのです。逆に「意識の高い」人だけが来る講座でよいのでしょうか? さらに言えば、意識が高い、低いではなく、意識のない人に参加してもらうことが必要なのではないでしょうか。

言い訳④「人が来なくてもよい、核となる人が育てばよい」

→人が来ない講座なのにどうして核となる人を発掘することができるのでしょうか。

言い訳⑤「人が来ないからこそ行政でやる意義がある」

→講座に人が集まらなければ税金の無駄遣いです。企画と広報が悪いので人が集まらないのです。人が集まらなかった言い訳を探すよりも、どうやったら人が集まる講座を作ることができるのかを考えましょう。

筆者も公民館主事をしていたこともあり、講座やイベントを企画・実施していた経験もありましたので、どの言い訳(特に⑤)に対する言葉を見ても耳が痛い思いがいたしますが、みなさんはいかがでしょうか?

特に講座やイベントの告知をするときのチラシのタイトルは重要で、これで人がやってくるかどうか決まるといっても過言ではないそうです。牟田さんの著書の中から「悪いタイトルの一例」をあげてみましょう。

①法律、条令の文言や講座目的そのまんまのタイトル
→目的を前面に出しすぎるとかえって目的が達成できない。

「明るいまちづくりへの参画」
「男性の家庭参画セミナー」
「男女共同参画セミナー」

②社会背景表現型
→受講する「私」に関係する内容がタイトルに表現されていないと、わざわざ講座に足を運ぶ気になれない。

「晩婚化と男女のゆくえ」
「男女共生社会を生きるわたし」
「変わりゆく社会と男女(ひと)」

その他、③疑問を投げかけるスタイル、④認知度の低い言葉を使っている、⑤受講者の立場を否定するスタイル、⑥レッツ系、⑦人に言えないタイトル、といったものを悪い一例としてあげられています。これを読んで「ドキ!?」とした人もきっと多いはずです。

よく「行政関係者」は「市民(国民)の目線に立って・・・」という言葉を使いますが、講座やイベントの企画・実施においては「自分が市民だったら自分がつくったチラシを見て、その講座やイベントに参加するか」ということであると牟田さんは述べられています。

さあ、国や県、市、町等の行政関係者で、講座・イベントの企画・実施を担当しているみなさん、自分が担当している講座やイベントの広報や企画をもう一度見直してみましょう。「定員割れは税金の無駄遣い」ですよ!

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

2007なんよ地域づくり事例発表会

 平成19年9月6日、西予市の愛媛県歴史文化博物館で「2007なんよ地域づくり事例発表会」(第26回政策研究セミナー)が行われました。今回は愛媛県と当センターが主催、愛媛大学が共催で開催されました。当日は行政やまちづくり関係者など約200名にご来場いただき、会場となった多目的ホールはほぼ満席となりました。

 はじめに県外先進地での取り組み事例の紹介として島根県江津市のNPO法人結まーるプラス理事長かわべまゆみ氏に、「無人駅が観光・定住・ITのサービス拠点に」と題して講演していただきました。島根県江津市へIターンした経緯やインターネットを利用した地場産品販売の秘訣などマーケティンのプロならではの貴重なお話を聞くことができました。

 その後、愛媛大学の有馬准教授から(財)えひめ産業振興財団や愛媛大学、井関農機などが連携して取り組んでいる「植物工場の現状」についての説明や他地域の植物工場の事例紹介がありました。

 そして休憩をはさみ「これからの南予の地域づくりについて」をテーマに地域づくり実践者によるパネルディスカッションが行われました。パネリストは八幡浜ちゃんぽんプロジェクトの仕掛人である八幡浜商工会議所青年部前会長の伊藤篤司氏と宇和島市の岩松地区でどぶろくの製造などで町づくりに取り組んでいる宇和島市役所津島支所の森田浩二氏に結まーるプラスのかわべ氏が加わり3名で行われました。八幡浜ちゃんぽんプロジェクトとどぶろく製造の取り組みについての苦労話や今後の展開などについて説明があり、最後に今後の南予地域活性化にむけての地域資源活用のポイントやネックなどについて意見交換が行われました。

 印象に残ったのはかわべ氏がIターンされた時の話でした。かわべ氏は、東京でマーケティングの仕事をしながら都会での生活を送っていましたが、夫の希望もあり夫の里にIターンされました。ただその時にはかわべ氏自身は田舎暮らしに何の興味もなかったとのことでした。ただ地方都市で生まれ、大都会の生活も経験したので、あと経験していないのは田舎の生活だけだから、それを経験できる良いチャンスだと考えたとのことでした。

 この発想の転換というか前向きの姿勢というか思い切りの良さは、なかなか真似ができないことだと思います。講演からは、かわべ氏のパワフルなオーラとプロ意識の高さが伝わってきました。

 もう一つ印象に残ったのは、マーティングの大切さです。同じ商品でもパッケージなどの見せ方次第で売れ行きが変わります。もちろん品質は大事ですが、良い商品を作りさえすれば売れるというものではありません。買う側がその商品を見て何を感じるかが重要です。これは売れないと思っても違う感性で見ると魅力的な商品になります。

 たとえば“一番”とか“大和魂”とか書かれた日本語のTシャツを私は買いませんが、外国人は日本のお土産として買っていくというようなことです。地域資源を地域ブランドとして売っていくためには、熱い思いだけではなくクールな感性と分析力も必要だと思いました。

(文責 企画研究部門 研究員 河野 洋)