「田舎暮らし」ということばにどのようなイメージをもっていますか?都会で生活してきた人と都会以外の地域で生活してきた人とでは受け取り方が異なるのではないでしょうか?地方で暮らしてきた人が気にも留めない当たり前のことが、都会の人にとってはとても魅力的だったりします。新聞やテレビ番組では地方移住に関連するテーマを取り上げたものが多く見られるようになったことから、実際に行動を起こすかどうかは別にして、都会で長く働いていて、ゆくゆくは田舎で暮らそうかと考える人は多くなっているように感じられます。
実際のところはどうでしょうか。当センターでは、平成19年7月19日に佐藤信弘氏をお迎えしてえひめ移住交流促進協議会と共催で講演会を開催します。佐藤氏は平成8年から月刊「田舎暮らしの本」の編集長をされ、これまで数多くの移住経験者に接してこられました。講演会では、移住に関して最近の動向なども含めて具体的事例に基づいたお話をされますので、今後、このテーマを考える際に大いに役立つものと思います。
なお、講演会は座席数に限りがありますので、事前にファックスもしくは電子メールにて、こちらからお申し込みください。
(文責 企画研究部門 研究員 越智隆行)
森林保護の観点から飲食店で使い捨ての割りばしを使わないという「マイ箸(はし)運動」が、マスコミで取り上げられる機会が最近多い。森林破壊による地球温暖化などの環境被害を、割り箸の使用をやめ、「マイ箸」を使うことにより環境問題に興味を持ってもらう運動となっている。
こうした一連の報道を見聞きする時に、私の中では、「何か」釈然としない感情が絶えずあった。なぜならば、数年前に仕事の関係で、南予に割り箸工場ができる際、原料となる木材は、市場では流通しない間伐材や端材が使われるとの話しを聞いた覚えがあり、その時は、割り箸は日本人の「もったいない」精神の賜物ではないかと、妙に納得した気分になった記憶があるからである。
平成19年6月10日付けの毎日新聞に、田中淳夫著「割り箸はもったいない?」の藤森照信評が掲載されており、それを読んで、私の中の釈然としない「何か」が見事に解決していると妙に納得してしまった。
記事の関係箇所を抜粋すると、概ね次のような記載である。
「割り箸に関する今後の研究の展開によっては、江戸時代に新たに成立した日本独自の食文化を割り箸が支えた可能性も出てくる。」
「割り箸が森林を壊す説の根拠は、いまだにハッキリしていない。」
「東南アジア諸国から日本に輸出される木材のうち、割り箸用の割合は1%を切り誤差の範囲というしかない。」
「建築用や紙パルプ用に使用される木材量に比べれば、割り箸のそれは誤差の範囲を出ることはない。」
「定性的(性質としては)には箸は森林を壊す。しかし、定量的(量としては)には問題はない。」
日本の食文化として定着している割り箸を、森林(環境)破壊と考え、「マイ箸運動」するぐらいなら、床の食べこぼしを拭くときにティッシュペーパーの使用を止めて、使い古したタオルを雑巾としてリサイクル(再商品化)し、リユース(繰り返し使う)した方が、よほど環境のためになるのではないかと思うのは、私だけなのだろうか。
また、世論の動向に大きな影響力を持つ新聞等は、何を根拠に「マイ箸運動」を取り上げるのか、十分な検証を行った上で報道すべきでないのだろうか。
(文責 まちづくり活動部門 主任研究員 小方 悟)
6月24日(日)、NPO法人「起愛塾(きあいじゅく)」主催の特別シンポジウムが、愛媛大学の総合情報メディアセンターを会場に開催されました。
この「起愛塾」は、郷土愛媛に愛着を持つ関東在住愛媛県出身者を対象に、愛媛にユーターンして起業しようという志を持った人々を発掘し、支援することを目的に平成15年に開塾され、平成16年から18年の3年間は、愛媛県若年者就職支援センター「愛Work」の委託を受け、愛媛県内で同様の志をもつ人々も対象として松山校も開設し、東京と愛媛で「ニュービジネスの立ち上げ」をキーワードに塾の運営を行ったりもしており、起愛塾のユニークな活動は「起業」を志す人たちにとって県内外で広く知られています。
さて、そんな「起愛塾」の特別シンポジウムとして、起愛塾理事長の奥島孝康氏(元早稲田大学総長)と愛媛銀行頭取の中山紘治郎氏が、「愛媛(特に南予の)活性化」についてのトークセッションが行われるということで参加してまいりました。
この日のトークセッションは、奥島氏のいる東京と中山氏のいる愛媛をインターネットでつないで二元中継でトークセッションが行われるということで、時代はここまできているんだなあとアナログな私は感心しきりでした。
それで、気になるトークセッションの内容ですが、これからの愛媛の活性化のあり方を考えるということでお話があったのですが、お二人とも宇和島市にゆかりのある方(奥島氏は宇和島東高校出身、中山氏は宇和島南高出身)ということで、自然と内容も「宇和島を中心とした南予の活性化」という話題にうつっていきました。
奥島氏からは、企業においてはCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任のこと)がトレンドであり、企業が社会的責任を果すことは企業のイメージの向上、企業価値を高めることになっている現状をお話しいただき、司馬遼太郎氏がこよなく宇和島を愛し、「宇和島には文化の薫りがある」と述べたいう逸話から、これまでは「文明(=均一品質のものを大量生産)の時代」であったが、これからは「文化(=独創性、地域性のあるものを生産するといった手作り)の時代」へと移項しなければならないと述べ、愛媛にはその土壌があるという話をされていました。
また、中山氏からも同じく司馬遼太郎氏の話を出しながら、古きよきものが次第に失われつつある現状があり、それが文化力の低下を招いているというお話があったのち、南予の活性化は、南予がもつ強みである「豊かな自然」を活かさなければならないと述べられ、具体例として内子町にある「フレッシュパークからり」の事例を紹介していただき、養殖業のブランドイメージ向上(養殖魚という言葉のもつマイナスイメージ払拭)、団塊の世代の移住促進、一次産業と観光資源をあわせた新しい産業の創出といったところについて言及がありました。
その後、参加者から「都会で学んだことを地域(地元)に還元しようという取り組みは、現在どのようになされているのだろうか」と質問があり、奥島氏から早稲田大学で行われている学生による起業コンペの取り組みについてお話があり、教授が優秀な学生にベンチャーでがんばっている企業を就職の斡旋紹介をしても、その学生の親が反対して大手の企業に就職するケースが多く、どうしても企業のブランドで判断されてしまう傾向がまだ日本では根強いこと、起業しようと考えている学生にしても、たとえば自分の家業を継いでそれを発展させようということではなくて、世界に視野を向けて起業をしたいという学生の割合のほうが多い一方で、家業をきちんとまじめにやっている親のところには子どもは帰ってきていることが多いという事例もあるということも述べられていました。
最後に、これからの愛媛の発展には、「自分で考えて、自分で動くこと」、よい意味での「自立」が大切であると締めくくり、活性化については「食」というものがキーワードになってくるのではないかともおっしゃられていました。
Uターンして愛媛で起業をしたいなあと思われている方、起業について興味をもっておられる方、そういった方はNPO法人「起愛塾」の門を叩いてみてはどうでしょうか?
また秋からは「起業」についてのセミナーも東京で開催されるそうです。愛媛県内の在住の方で受講を希望される方も東京までの交通費(松山東京間の往復バスだそうです)が支給されるそうですので、興味のある方は「起愛塾」までお問い合わせしてみてはどうでしょうか。
(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)
6月19日に参加した講演会の感想を披露します。講演者は藻谷浩介氏で、テーマは“「地域間格差」は本当に拡大しているのか”でした。藻谷氏は日本政策投資銀行地域振興部の参事役で、政府関係委員を多数兼ねながら、各地で講演もされています。
内容は非常に面白いものでした。一例を挙げると、バブル崩壊後の「失われた10年」について、藻谷氏は全国的には少なくとも「失われた10年」の前半は「失われ」ていなかったのではないかと言います。個人所得や小売販売額は、バブル崩壊後も1996年頃までは増加基調で推移しており元気だったと。なぜか?大きな要因としては現役世代人口の増加です。その頃までは新規就業者数>退職者数でした。団塊ジュニアが社会に出て、得た収入を消費に回すことの方が、昭和一桁生まれの人たちが退職して、所得と消費を減少させることを上回っていたといいます。
また、地方に住んでいると、都会は地方とは違ってさぞかし景気が良いんだろうなあと思ってしまいますが、首都圏一都三県の人口動態を2000年と05年とで比較すると、“転入者数-転出者数”と“出生者数-死亡者数”はともにプラスで、総人口としては1百万人程度増加しているが、個人所得や消費に大きな影響を与える世代の人口(20~59才)は減少していることが確認できます。藻谷氏は、都会が一極集中的に繁栄しているのではなく、相対的な速度の差はあるものの、都会も地方も現役世代人口は総じて減少していることを指摘していました。
藻谷氏は調査にあたって、統計数字は絶対数で捉える(他人が適当に係数をかけてつくった指標は信用しない)、先入観を排除する(先入観を持っていると、それに符合する事象にしか着目しなくなる)ことなどを心掛けているそうです。
私も当センターの研究員として、調査をおこなうにあたっては、先入観にとらわれず、事実を確実に積み上げていかなければならないと強く思いました。なお、藻谷氏の講演等はインターネットで検索すれば多数ヒットします。年間400回以上登壇しているそうですから。
(文責 企画研究部門 研究員 越智隆行)
6月19日(火)に東京出張の機会をいただき、当センターの越智研究員とともにアンテナショップ香川・愛媛「せとうち旬彩館」に行ってきました。まずは、「せとうち旬彩感」の概要について簡単にご紹介させていただきます。
「せとうち旬彩館」は、香川・愛媛両県の特産品の展示販売、観光案内、郷土料理、食材の提供を通して、物産の販路拡大や観光情報を発信するなど、両県のイメージアップを図ることを目的として、平成15年3月にオープンした施設です。ちなみに、都内には約30余りの自治体などがこうしたアンテナショップを開設していますが、二県共同での開設はここだけだそうです。
実は私、約6年ぶりの東京でございまして、羽田空港から高層ビル群と人波に軽いカルチャーショックを受けつつJR新橋駅へ。野生の勘が機能せず、お約束どおり?出口を間違え裏街道を彷徨うこと約10分。間違いに気付き、駐車場の警備員さんに道を尋ねようやく「せとうち旬彩館」の看板を発見し、何とも前途多難な東京出張の幕開けとなりました。
旬彩館は、新橋マリンビル内に出店され、1階には各県ごとの物産コーナーが設けられ、うどん、みかん製品、干物類など、両県の特産品が並んでおりました。商品は、タルト、じゃこ天など愛媛ではメジャー級の商品から、地元でしかお目見えできない逸品なども数多く見受けられました。中には初めて拝見する商品もあり、日帰り出張ではありましたが、東京にいながら郷土を身近に感じることができ、何だか嬉しい気持ちになりました。
また、店内にはイベントコーナーが設けられており、当日は「愛南町特産品フェア」が開催されておりました。宇和島地方局農政普及課の橋岡係長さんをはじめ愛南町ビジネスモデル研究協議会のメンバーが、愛南ブランドの特産品や農家民宿などのグリーンツーリズム活動について熱心にPRをされておりました。このコーナーでは、今後も両県各地のイベントが予定されているそうです。
2階には、瀬戸内の郷土料理が味わえる食事処「かおりひめ」と観光交流コーナーが設けられており、せとうち旬彩館(えひめ観光物産プラザ)の本橋業務課長さんと愛媛県東京事務所の塩梅えひめブランド推進課長さんから貴重なお話を伺うことができました。お話によると、旬彩館の平成18年度売上高は、都内約30件余りのアンテナショップの中でも、北海道、沖縄県、鹿児島県などとともに上位グループにランクするそうです。好調の要因として、香川・愛媛の共同出店による商品の多様化やJR新橋駅前という立地条件、特産品ショップだけでなく郷土料理が堪能できる食事処があることなどが考えられるそうです。また、昨年夏に全国東宝系の映画館で上映された映画「UDON」が好評であったことも大きいとか。最近はテレビ関係の取材も多いそうで、当日も雑誌の取材が予定されていました。
ちなみに、じゃこ天、ちりめん、タルト、六穀、うるめ丸干し、子いか、アジひもの、島いちごどら焼き、焼えび、松山あげ、玉ねぎサラダ、ゆずこしょう、みかんはちみつ、きざみめかぶ、わらび餅などの商品が売れているそうです。また、来館者の内訳は、県人関係者が約3割、一般が約7割とのことでリピーターも増えているそうです。
昼食は食事処「かおりひめ」にて、私は鯛めしの定食、越智研究員は釜揚げたらいうどんとあられ丼の定食を注文し美味しくいただきました。店内は昼前にもかかわらず満席状態で、かなりの盛況振りがうかがえました。
夕方、他県のアンテナショップも拝見しましたが、店内は広く商品も都会的というか洗練された感があり、まるでデパートの一角を思わせる雰囲気でした。多少愛媛びいきかもしれませんが、「せとうち旬彩館」で感じた素朴さや純粋さ。今まで漠然と使っていた「愛媛産には愛がある」というフレーズ。少しだけ理解できたような気がします。
(文責 企画研究部門 研究員 渡邊 赴仁)