研究員ブログ

地域づくり人養成講座(第4回)

9月22日(土)、地域づくり人(びと)養成講座の第4回目の講座が松山市の西垣生(にしはぶ)地区で行われました。

今回の講座のテーマは「地域福祉」。
高齢者や「障害」をもたれている方が地域の中で人らしく生きていける地域をつくっていくということはどういうことなのかについて、地元の地域づくりグループである託老所「あんき」の取り組みをとおして学習をすすめました。

この日の学習では、これまでの内容とは異なり受講生全員が「一日新聞記者」となって、地域を取材して聞き取りした内容をもとに紙面にまとめる「地域福祉新聞」づくりを行いました。

講座のはじめに清水研究員から講座の趣旨説明を行った後、託老所「あんき」の中矢代表から「あんき」の活動の概要について説明をしていただいたのち、垣生地区の地域性についてお話いただきました。

趣旨説明 中矢さん

※趣旨説明の様子(左)と託老所「あんき」の中矢代表(右)

その後、受講生は2班それぞれにわかれて地域に入って取材活動を開始しました。受講生が最初に訪れたのは中矢代表が運営されている託老所「あんき」。「あんき」は「指定居宅介護支援事業所」です。受講生はあんきを利用している方々にいろいろと質問をしていました。

あんき全景 基本理念

※託老所「あんき」全景と中矢さんの「あんき」への思い

あんきの取材活動の様子 

※あんきでの取材の様子

その後、受講生のみなさんは地区内をそれぞれ取材活動をしていた模様で、取材活動の合い間に同じ地区内の別の施設「こんまいあんき」で開催されているコミュニティレストラン「心のテーブル」で昼食をとりました。

この「心のテーブル」は年に数回実施しているもので、地域のお年寄りにあつまってもらいボランティアグループや子どもたちが料理でおもてなしをして三世代交流を図るというものです。このコミュニティレストラン「心のテーブル」に関しては、株式会社バッフォの稲田さんにもお世話になりました。

こんまいあんき

※コミュニティレストラン「心のテーブル」の会場
(こんまいあんきにて)

子どもたちもおてづだい

※子どもたちもお手伝い

食事の様子

※食事の様子

食事のあと、受講生のみなさんは取材活動を再開し、地区内をいろいろまわっていたようです。

この西垣生地区の特徴は、狭い路地が多く、地区内にはたいへん同じ姓の方が多く(「中矢」など)、それぞれを下の名前で呼び合うそうですが、それとは別に屋号もいくらか残っているそうで(ただ家の軒先に屋号を見ることが残念ながらなかったです)、松山市内の中心部とは異なるコミュニティのつながりを感じる地域ということでしょうか。

また一方で、新しい家と「あんき」のような古民家や古い家屋が並んでいるなど、古いものと新しいものが混在しているといった「温故知新」といった表現が正しいのかもしれません。

そんな西垣生地区の取材を終えた受講生のみなさんは、当番のファシリテーターを中心としてさっそく「福祉新聞づくり」に取り掛かりました。

作業の様子2 作業の様子

※新聞づくり作業の様子

新聞1 新聞2

※できあがった福祉新聞 

それぞれの班ができあがった「地域福祉新聞」を説明したのち、中矢さんに講評を含めて「ちっちゃなちっちゃな地域福祉の確立を目指して」と題して「あんきの目指すもの」について講話をしていただきました。

講話

※講話の様子 

中矢さんのお話の中では、なぜ「託老所あんき」や「こんまいあんき」で行われている活動が普通の民家をつかっているのかということを説明していただきました。そこには高齢者も障害をもっておられる方も、どんな人であってもひとりの住民であり生活者の一人なんだという思いがつまっています。

また、託老所「あんき」はバリアフリーという考えも敢えて取り入れていません。築80年の家ですので敷居は高いし、室内いたるところにでこぼこがあります。しかし、たとえば玄関の敷居をまたぐというその行為そのものが生活リハビリとなるという思いがあるからです。ここにも「ふつうの暮らしができる託老所」という考えが根底にあります。

そして、心のテーブルが「託老所あんき」とは違うところで催されるのにも理由があります。たとえば、いつも同じところで食事をとるのではなく、たまには違うところで外食をと思うことがあります。それはどんな人でも同じです。そういう生活者の思いを大切にして、いつも利用する「託老所あんき」とは別の場所で食事をとるようにしているのです。

年をとっても住み慣れた地域で自分らしく生きて、そして死にたい。それがみんなの願いであり、それをどう地域が支えていくか、それが「地域福祉」であると中矢さんは述べられました。中矢さんの言う「地域福祉」の根底にある「人が人らしく生きて、死にたいと思う地域づくり」という考えは、それはまさしく「人権」のまちづくりともいえるのではないでしょうか。

今回の講座は所長以下、センターの研究員を含めてたいへん勉強になったという感想が多かったように思います。次回の養成講座は10月24日(水)に内子町大瀬地区を訪問して学習を行います。また、今回の地元受け入れをしていただいた託老所「あんき」の取り組みについては、こちらを参照してください。

なお、今回つくった福祉新聞は場合によれば再編集をしてセンターのWEBで紹介する予定ですのでお楽しみに。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)