研究員ブログ

第24回政策研究セミナーを開催しました。

平成19年7月19日に第24回政策研究セミナーを開催しました。たくさんの方に来場いただき、おかげ様で大変盛況な講演会となりました。

セミナー会場の様子

講演は、株式会社宝島社月刊「田舎暮らしの本」編集長の佐藤信弘氏をお迎えして、「移住者誘致と地域の活性化~田舎暮らしのススメ~」と題してお話ししていただきました。参加された方は様々な感想をお持ちになったことと思いますが、この場を借りて個人的に印象に残った話について感想を交えながら3つ述べたいと思います。

1つ目は、優れたノウハウを持つ人が地域に来れば地域活性化の効果が高いということです。佐藤講師は、例えば、腕のいいシェフが地域に入ってきて、良いレストランが1軒できれば、全国から人が集まってくると言い、山形のイタリア料理店「アル・ケッチァーノ」を例に挙げられました。

この話は私には非常に斬新に感じられ、しかも得心しやすいものでした。家族で旅行に行く計画を立てる時に、妻は料理の評判で宿泊先を決める傾向があるし、また、先日NHKのプロフェッショナル-仕事の流儀-という番組で帝国ホテルの総料理長が取り上げられていましたが、彼が長野県上高地にある系列ホテルでオリジナルフルコースによる2日間限りの晩餐会を開いたところ、宿泊費込みで最低でも5万円でしたが、多くのお客さんがそのシェフの料理を目当てに集まり、中には九州など遠方からやって来た人もいました。「食は人を呼ぶ」です。

2つ目は、移住者と現地の人では“常識”が異なり、そこから発生するトラブルがたくさんあるということです。佐藤講師によると、都会の人は地域環境を維持するのは行政の役割だと思い込んでいるのに対して、地域の人は、主なことは行政がやるけれども、その他は全部自分たちでやるのが当然だという考え方が伝統的にあり、その対策としては、面倒見の良い人がよく説明して、初歩的な認識のずれを減らす努力をしたり、地域のマニュアルを作成して移住者に読んでもらい、お互いに納得したら地域協定のようなものを結んで地域に入ってもらうなどいろいろなやり方があるが、特別な解決策はないとのことでした。

私見ですが、都会の人は地縁のない土地に住宅を取得して生活してきた人が多く、コミュニティとの交流がなかったか、あったとしても田舎ほど関わり方が濃くなかったことが、認識のミスマッチが起こる一因ではないかと思いました。

3つ目は、四国は関西に住んでいる人には多少馴染みがあるかもしれないが、関東からは馴染みの薄い地域であるということです。ちなみに、「田舎暮らしの本」の読者が最も移住したい地域は長野県で、次いで千葉県や静岡県あたりなのだそうです。長野県が人気である理由は、関東圏、関西圏から良い位置にあること。子供の頃に林間学校などで学び、遊んだ経験を持つ場所であること。文化、歴史の集積があること。自然環境が良いことなどが考えられるとの話でした。

さて、次回の政策研究セミナーは平成19年8月23日に、有限会社コミュニティビジネス総合研究所代表取締役所長の細内信孝氏をお迎えして、「地域資源からビジネスへ~コミュニティ・ビジネスの可能性~」をテーマに講演していただきます。詳細ならびにお申込みはこちらからどうぞ。

(文責 企画研究部門 研究員 越智隆行)