8月25日(土)、愛南町山出(やまいだし)地区で「街道灯篭祭りin愛南 山街道をゆく」があり、山出地区の棚田を灯籠でライトアップするイベントが行われました。
この事業は、6月に実施された「海街道をゆく」、7月に実施された「酒蔵の道をゆく」とつづいた3事業の最終イベントで、主催する実行委員会は当センターの「まちづくり活動アシスト事業」の平成19年度助成団体にもなっています。
イベント開催に先立ち、街道灯籠祭りの反省会を兼ねた「南伊予みち風景会議(事務局:大洲河川国道事務所)」の幹事会が山出交流センターで行われ、「街道灯篭祭り」と銘打った各地のイベントの概要説明の後、ワークショップを用いた事業の反省と今後の展望について協議いたしました。
※会場となった山出温泉交流施設(どこかお城を思わせるような建物の外観)
よかった点として、愛南町の灯籠祭りの実施団体からは、事業の成果として2つ挙げられていました。
1.地域を巻き込むことができた
※今回新しく作ったマップ
山出地区のある僧都(そうづ)小学校の子どもたちが、地域の人たちや学生さんたちと一緒に歩いて、自分たちのムラにあるものを見つめ、それを地図にし、その地図をもとにこれまた地元の方が書いたイラストを交えた地図を制作することができ、この灯籠祭りをきっかけに地域を巻き込む仕組みができ、地域内での交流ができた。
2. 他地域への広がりを見せた
今回の灯籠祭りとなった地域以外にも、「自分たちの地域の祭りでもライトアップ事業を取り入れてみたいので、灯籠を貸してほしい」という申し出があり、地域的な広がりを見せることができた。
次に、悪かった点については、PR不足や効率的な灯籠の設置や開催時期の見直しなどがありましたが、その多くの反省点は次回の開催時に修正できる課題といえるものでした。
今回のワークショップの中で浮き彫りにされたもっとも大きな今後の課題は、「事業の継続性をもたせるためにどういう方法を模索するのか」という意見だったように思います。
この「街道灯籠祭り」に関する事業は、大洲河川国道事務所の予算面と人的面のバックアップもあった事業であり、永続的にバックアップがあるわけではないため、継続的に各地で実施できる仕組みづくりが重要であり、岩松地区が行っているような「住民それぞれが灯籠を保管し、祭りになると設置してもらうといった参加の仕組み(=協働性)」を構築して、スタッフの負担をなるべく少なくする工夫や、参加者や来場者に一部費用を負担してもらうための仕組みづくりを構築し、持続的に事業を行えることが重要となってくるでしょう。
ただ、この灯籠祭り事業は、あくまで地域活性化のひとつの手段であり、この愛南町の取り組みのように「まずは地道に地域を巻き込んでいき」ながら、身の丈にあった事業を展開していき、少しずつ地域の理解を広げていくことが重要だと思われます。
今回、ずっとこの灯籠祭りを取材してきて感じたことですが、地域に学校がなくなるとその地域に元気がなくなるとよく言われます。それと同じように地域に祭りがなくなるとまた、その地域の元気が失われていくということを実感いたしました。
この「灯籠祭り」をひとつの地域の新しいお祭りとして、そして地域外の人たちとの交流の場として位置づけつつ、地域が自立的・能動的に行うことができれば、地域活性化の一役を担うことが十分に期待できる事業だと言えそうです。
そのためには、やはり地域の理解を得ながら地道に進めていくことが重要になってくると思います。会議の中では、「点から線へ、線から面へとどうやってつなげていくか」といった広域連携についても議論されていましたが、地域ごとに事情も異なることもありますので、まずは「点」がしっかりと独立して「点」とわかるくらいのものになり、それから「線」へとつないでも遅くはないように思いました。
※山出地区の棚田(左・中央)と山出周辺地区の村並み(右)
さて、その幹事会の後、いよいよ「街道灯籠祭り 山街道をゆく」が行われ、山出地区の棚田を利用して400個ほどの灯籠によってライトアップと参加者の交流会が行われました。
灯籠でライトアップされた棚田の風景は、宇和島市遊子地区で行われた段々畑のライトアップとその様子が似ていました。唯一の違いは田畑の前が海か川かの差くらいでしょうか。
※ライトアップ全景(左)と近景(右)
※交流会の様子
今回の事業を実施した愛南町の実行委員会のみなさん、おつかれさまでした。なお、この事業についてのお問合せ先は、同実行委員会(地域交流センタープラザじょうへん内:TEL&FAX 0895-73-2288)まで。
(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)
以前、研究員ブログで今治市のさいさいきて屋さんを取材した「水道の蛇口からみかんジュース」という記事を掲載いたしましたが、今度は「移動式の蛇口みかんジュース」のご紹介です。
※イケメン連のブースの様子
※移動式の「水道の蛇口からみかんジュース」
この移動式のみかんジュースを作ったのは、松山のまちづくりNPOの「イケメン連」のみなさん。ちょうど取材した日は、愛媛FCの試合でしたので、移動式みかんジュースを取材しにイケメン連の「応援ブース」もあわせて取材いたしました。
この移動式の蛇口みかんジュースの仕組みですが、もともとはビールなどの飲料を入れるサーバーの蛇口を水道の蛇口にかえたもので、そのまわりをかわいい愛媛らしく飾り付けしています。だいたい10リットルのオレンジジュースを貯蔵できます。ちなみに、このみかんジュースは1杯100円です。でも、100円を払っても蛇口をひねる価値はあると思いますので、ぜひお試しあれ。
また、この移動式みかんジュースですが、スタッフの方にお伺いすると出張サービスもしているそうで、最近では今治市の福祉施設の地域イベントに出張してブースを設置して販売し、来場者に大変人気だったそうです。
そして、「イケメン連」といえば、やはり愛媛が生んだご当地バーガー「じゃこかつバーガー」でしょう。さっそく研究員も愛媛FCの勝利を祈願し2種類の「じゃこ勝つバーガー」を購入してさっそく胃袋へ。たいへんおいしかったですが、この日の愛媛FCはザスパ草津に1対3で惜敗。次に期待したいものです。
※じゃこかつバーガー(タルタル味)
なお、この日、ちょうどイケメン連のみなさんは、今治市出身の画家・イラストレーターで「いよかん大使」でもある「MAYA MAXX」さんと一緒に愛媛FCを応援するツアーを企画しており、ツアーに参加した人は会場でMAYA MAXXさんといっしょになってイラスト入りの応援旗を作成して、愛媛FCの試合を盛り上げていました。
※MAYA MAXXさん
試合観戦の前には、MAYA MAXXさんと若者とのトークイベントも開催するなど、イケメン連さんの「地元をなんとかしたい」という行動力と元気に脱帽した一日でもあるとともに、スタッフの方が実に楽しそうにやっているのが印象的です。やはり「地域づくり活動は、活動している自分たちが一番楽しんでやらなければ!」が原則ですね。
この取り組みについてのお問い合わせは、イケメン連のサイトまで。なお、イケメン連は「地域づくり広場」の地域づくり活動ブログでもリンクをはっております。
(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)
8月19日、松山市久米地区において「来住廃寺まつり」が行われました。この来住廃寺まつりは、地域の歴史に親しむとともに、地域に誇りをもてるようにし、また、さらなる地域の発展をめざして、1995年に久米公民館を中心として始められたものです。古代の衣装の復元や雅楽久米舞、火起しなど来住廃寺にゆかりの行事を取り入れています。また、久米地区の小・中学生による水軍太鼓の演奏や久米芸能連による民謡・盆踊り、地元の各種団体によるバザーなどがあり、毎年2,000人以上が集うイベントです。
開会行事の様子
久米芸能連の「雅楽久米舞」
松明点火のための種火を熾す久米中学生
会場となった来住廃寺跡は、法隆寺式伽藍配置を持つ白鳳期の古代寺院跡で、昭和54年に国の史跡指定を受けています。これまでの調査によって、南側に八脚門をもち、内部の建物を2重の柱列によって取り囲んだ、一辺約100メートルの『回廊状遺構』と呼ばれる施設が廃絶した後(7世紀後半以降)に建立された古代寺院であることが分かっているようです。現在、調査によって確認されている主な遺構には、一辺が約9.75mをはかる塔の基壇および、その上面に残された柱の礎石、大型の石製露盤、僧坊と考えられる掘立柱建物跡、講堂に伴うと考えられる玉石組雨落溝などがあり、現在も継続して調査が続いているようです。
えひめ地域政策研究センターの平成19年度アシスト支援事業の助成団体である「久米はいじの会」が出店していることもあり、夕涼みがてら会場を覗いてみました。久米はいじの会は、このまつりのプレイベントしして8月4日に「シタールの演奏の夕べ」を開催しており、この日も会員総出で、地酒「久米舞」のオンザロックや久米の赤米を使ったポン菓子、オリジナルポストカードなど地域おこしとなる品々を販売していました。
久米はいじの会の出店
地酒「久米舞」の美味しい飲み方を研究中
久米はいじの会は、国史跡久米官衛遺跡(来住廃寺)に興味を持ち、遺跡を通して久米地区を活性化しようと集まった有志グループです。まだまだ少人数ですが、地域資源を最大限に活用し、自分達も楽しみながら活動されています。
(文責 まちづくり活動部門 研究員 松本 宏)
8月13日(月)に大洲市肱川町岩谷(いわや)地区で「山鳥坂の夜神楽」が開催されました。当地区の鎮縄神楽(しめかぐら)は愛媛県の無形文化財で、300年以上の歴史を持ち、平成10年にはロンドンで公演されたそうです。
この鎮縄神楽で地域を活性化しようと、山鳥坂夜神楽実行委員会(冨永清光委員長)が中心となって地元の自治会、鎮縄神楽保存会の皆さんが毎年8月13日に夜神楽を開催され、今年で十周年になります。
場所は元岩谷小学校で、夕方6時から自治会まつり、続いて夜神楽公演と続き、この日ばかりは約300人(地区人口の何倍?)の見物客がやって来て、山郷も賑わっていました。
今年のメインは巨大な八岐大蛇が 山から会場に舞い降りるアトラクションです。参加された方も口々にスゴイという声があがり、効果満点でした。
神楽のストーリーは、神代の昔、天照大神が弟 の素盞嗚尊(すさのおのみこと)の乱暴を憤って天の岩屋へ籠もられたので、高天ヶ原に八百万の神々を集めて協議をして、岩谷の前で鈴や笛、庭火をたき、舞 を舞うお神楽をはじめたという神話が起源になっています。神楽はなんと言っても最後の「大蛇退治の舞」で本当に最高でした。
神楽を見るのは本当に久しぶりでしたが、無形文化財になるだけあり、なかなか面白く拝見しました。特に地元の人や帰郷した人達が神楽を通して交流し、 お酒を飲んだり歓談されてた様子は、さながら縁日や大祭のようで、なかなかいい感じでした。
お盆は、正月と並び国民的な民俗行事で、広辞苑によると帰省は 「故郷に帰って父母の安否を問うこと」だそうです。神楽を見ながら、久しぶりに親戚や近所の方、友人と顔を合わせてビールを片手に話に花を咲かせ、祖先の 墓前で手を合わせ、供養と感謝の気持ちを新たにする。「癒やし」の側面があり、お盆の行事でもある「夜神楽」は次世代にも受け継ぎたい風景です。
ただ、山鳥坂ダムができると会場である元岩谷小学校も埋没するようで、この夜神楽など地域のコミニュティの拠り所をどうするかなど、課題は多いようです。冨永委員長はじめ岩谷地区の皆さん、ご苦労様でした。
(文責 まちづくり活動部門 研究員 清水和繁)
街道灯籠祭りのひとつとして、8月16日に宇和島市津島町岩松地区で開催されましたイベント「つしま夏祭り前夜祭」(主催:岩松町並み保存会)に参加いたしました。
岩松地区ではこの街道灯籠祭りを4回実施予定(うち2回は既に実施)で、その内容も少しずつ異なっており、すでに何回か研究員ブログでも紹介していますが、宇和島圏域で「街道灯籠祭り」と銘打ったイベントを展開していても、灯籠の種類からその並べ方や開催方法において地域ごとに特色があり、そのあたりが画一的でなく地域の特性を生かしたとてもユニークな取り組みといえます。
この日のイベントは、翌日(17日)に開催される津島町の夏祭りのプレイベントとして開催され、街並みの灯籠によるライトアップと一部店舗による夜店の出店、岩松地区にある臨江寺において「こんちき」による和楽コンサートが催されました。
※左:臨江寺山門
(お寺とは思えない大正浪漫の香りがする建築物)
※右:お寺の境内(後姿は森田さんです)
※山門前のカキ氷屋(左)や寺境内のラムネ売り(右)も
※岩松地区の灯籠は長ロウソクを使用していました
(他地区のロウソクはキャンドルタイプを使用)
※「こんちき」さんの演奏の様子(この日は、佐渡おけさ、沖縄民謡、ソーラン節、津軽じょんがらなどを演奏していました)
※町並みライトアップの様子
このイベントは昨年度から実施されているそうで、今年は昨年度のおよそ倍の300個の灯籠が町並みとコンサート会場に設置されていました。コンサート会場である臨江寺には400人ほどのお客さんが訪れ、お寺の境内の中で奏でられる和楽と灯籠のゆらぎに酔いしれていたようです。
さて、この岩松地区の灯籠イベントの最大の特徴は、
町並みに設置する灯籠を各家々で保管してもらい、祭り当日の夕方になったらそれぞれが家の前に灯籠を設置して点灯してもらうという、地区住民全体が参加する仕組みがある
ということでしょうか。
これは他地区で行われている「街道灯籠祭り」の灯籠イベントにはない取り組みで、岩松町並み保存会の森田さん(えひめ地域づくり研究会議運営委員、元当センター研究員)にお話をお伺いすると、いずれはロウソクも各家々で用意してもらう形をとりたいといった話もされていました。
街道灯籠祭りのイベントではないですが、同時期に開催している西予市宇和町卯之町地区で開催している「卯のほたる」では、町歩きに使える竹でつくった手持ちの行灯を来場者向けに販売しており、その売上がイベント費用の一部にまわるという仕組みづくりを行っています。
このように、地区住民全体や来場者にイベントに参加してもらう仕組みづくりや、イベント費用の一部負担をしてもらう仕組みづくりは、持続的にイベントを開催していくために大変重要ななことといえるのではないでしょうか。
なお、岩松地区の灯籠イベントは31日にも開催されます。興味のある方はぜひ津島町岩松地区まで。このイベントに対するお問い合わせは岩松地区町並み保存会(0895-32-2721 内線332:事務局の森田さん)まで。
また、宇和島市のHPに岩松地区の概要がわかるページがありますので、そちらも参考にしてください。
(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)