研究員ブログ

近代化遺産活用に関するフォーラム

7月5日(木)に新居浜市において、フォーラム「未来への鉱脈~近代化遺産・ルネサンス~」が開催されるということで、栗田所長とともに出席いたしました。このフォーラムは、全国近代化遺産活用連絡協議会(以下、「全近」とします)と新居浜市が主催して開催したもので、近代化遺産を有効に活用していくために行政や企業、市民といったさまざまな立場でどのようにしていったらよいかということについて提言がなされました。

新居浜市民文化センター 市民文化センター内

※会場となった新居浜市民文化センター(ちなみに、舞たうん93号で紹介した新居浜協働オフィスはここにあります)

まず、近代化遺産の語句の意味について簡単に説明しますと、

近代化遺産とは「幕末期から第二次世界大戦期までの間に、近代的手法によって建設され、わが国の近代化に貢献した産業、交通、土木に関係する遺産」全近HPより引用)のことで、建造物と一体となって価値を形成している土地や設備、機械といった付属的なものについても近代化遺産に含まれるようです。

この「全近」とは、「近代化遺産の所在する市区町村、都道府県のほか、会の趣旨に賛同する企業、NPO法人、任意団体、個人などの幅広い会員がつくる日本で唯一の近代化遺産の全国ネットワーク組織」同会HPより引用)で、現在は全国51の自治体が加盟し、愛媛県内で加盟しているのは「別子銅山」という産業遺産をもつ新居浜市だけです。

このフォーラムでは、まず住友史料館の末岡副館長さんが「近代化遺産の歴史的意義」と題して基調講演を行い、文化的な価値を高めることを通しての「地域づくり」を行うことの重要性を指摘されていました。

基調講演に続いて5名のパネラーによる「近代化遺産を守り、価値を伝えていくために」をテーマにしたパネルディスカッションがあり、新居浜市が現在行っている産業遺産を活用したまちづくりの取り組みを中心に、京都府舞鶴市の赤煉瓦を活かしたまちづくりの取り組みなどが紹介され、「歴史文化を基調とした総合的なまちづくり」を行うことの重要性を述べられていました。

さて、そのパネルディスカッションにおいて新居浜市の企画部長さんより新居浜市における産業遺産を活かす「まちづくり」に関する事業を紹介していくお話の中で、たいへん特色のあるものがありました。それは、

①「別子銅山文化遺産課」という単独の課を今年の4月から設置

②すべての市職員を対象にした「産業遺産」に関する研修事業(産業遺産となる前にそこに住んでいた人や産業遺産の研究をされている方の講話が主な内容)の実施

というものです。新居浜といえば別子銅山が代名詞と言われるようなまちづくりを目指すんだという新居浜市の意気込みが感じられるものだったように思われます。

なお、財団法人えひめ地域政策研究センターでは、「愛媛県内にある近代化遺産」を収録した冊子「愛媛温故紀行」を発行しております。興味のある方はこちらをご覧ください。また、冊子の購入を希望される方は最寄りの本屋さんでお買い求めが出来ます。定価は2,500円(税別)となっております。

愛媛温故紀行

※愛媛温故紀行

この新居浜市における取り組みについてのお問合せは、新居浜市役所(担当:別子銅山文化遺産課 (0897)65-1236)まで。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

日々改善

6月末に名古屋で開催された地方シンクタンクフォーラムに参加してきました。講演や事例発表など盛り沢山で、とても充実した内容でした。基調講演では「愛・地球博の成果及び経験からみた地球の活性化」と題して(前)財団法人2005年日本国際博覧会協会の事務局長 中村 利雄氏から愛知万博の時の経験や教訓などについてお話がありました。

万博のような大きなイベントは、用意周到な計画のもと万全な準備、体制で開会の日を迎え、トラブルが発生することなど考えられないのかと思っていました。

しかし現実は、かなり実験的な試みや創造的なアイデアがたくさん取り入れられたり、前例のないことも多いので、たびたび予期せぬトラブルに見舞われたとのことで少し驚きました。それらを克服したのは、“日々改善”を続けた現場の力だったそうです。それぞれの職員が、状況に応じた柔軟な対応をし、またモティベーションを高く持ち続けたことが、成功の一番の要因だったようです。

日々改善⇒TQC⇒トヨタを連想しました。

万博は、新しいことに挑戦するところに意義がありますから、トラブルは付きものです。2010年の上海万博は、史上最大規模になるらしいですから、トラブルもあるでしょうが、日々改善し、成功させてほしいと思います。

(文責 企画研究部門 研究員 河野 洋)

交流居住研修会(東京都)に参加しました。

去る7月3日(火)、4日(水)の2日間、総務省と(財)過疎地域問題調査会の共催による「交流居住研修会」が東京都千代田区の都市センターホテルで開催され、当センターから小方主任研究員と坂本が参加しました。
この研修会は、都市と田舎との地域間交流に関心のある自治体等の職員の研修と、情報交換を目的として開催されたもので、全国各地から約180名が出席しました。
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※主催者挨拶 末宗徹郎 総務省過疎対策室長

基調講演① 「遠野市における交流・定住の取り組みについて」

 全国第1号の認可を受けた「どぶろく特区」の取り組みを通じた交流人口の拡大、定住促進組織「で・くらす遠野」による、市民と行政が一体となった受入態勢構築の取り組みについてご説明をいただきました。

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※本田敏秋 岩手県遠野市長のご講演 

基調講演② 「新しい地域戦略と交流ビジネスモデルの研究」

 ビジネスモデルの視点から見た移住・交流について、アメリカで人気のサマースクールを日本流にカスタマイズした”シニアサマーカレッジ”の事例をご説明いただきました。
 サービス業として成立するには、一過性のイベントとして終わらせない、消費者をリピートさせる仕組みを構築することが大切であり、なぜ移住交流に取り組むのかという目的を明確化するために、共通言語としてのワンフレーズを持つことの重要性をご説明いただきました。
 また、単なる国民運動だけでは移住交流を定着させることはできず、新しいビジネスモデルとして儲けるシステムを構築しなければ一過性の取り組みで終わってしまうとも述べられました。

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※篠崎 宏 ㈱ツーリズム・マーケティング研究所主任研究員のご講演

 この後、交流居住の取り組みについて、総務省過疎対策室、ポータルサイト「交流居住のススメ」運用について(財)日本交通公社からそれぞれ説明が行われました。

翌日4日(水)は小方主任研究員が①「体験ツアー・お試し暮らしの実施を通じた取組み」、坂本が② 「空き家を活用した交流促進の取組み」についての事例発表を拝聴しました。

 タイトルは次のとおりです。

① 「たかが100人、されど100人の挑戦」
     徳島県美波町 伊座利の未来を考える推進協議会

  「交流居住推進プログラム事業の実践から」
     山形県小国町 政策企画室

  「白浜町日置川地域が進める交流居住」
     和歌山県白浜町 日置川事務所地域振興課

② 「空き家活用による農山村滞在と定住の促進」
     島根県江津市 農林商工課

  「農村振興のための空家再生活用ネットワーク構想」
     茨城県常陸太田市 里美ツーリズム探究会」

  「山梨市定住促進事業」
     山梨県山梨市 総合政策課

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※中川 哉 島根県江津市農林商工課総括主任の事例発表

 今回の出張では、移住交流をご担当されている各県担当者の方と意見交換の機会があり、それぞれの地理的条件等は異なるものの、愛媛県での移住促進を促進していくうえで参考となるお話が多々伺え、非常に有意な研修会でした。
 ※この研修会について詳しくお知りになりたい方は、小方または坂本までお問合せ下さい。
 
 平河町にある研修会場(都市センターホテル)の近くには都道府県会館があり、愛媛県東京事務所打合せの後、同会館15階の北海道移住情報センター(入口付近のみですが)を撮影してきました。

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((財)北海道市町村振興協会が作成した移住Q&A)

また有楽町にある「ふるさと情報プラザ」へも立ち寄りました。
「田舎暮らし情報」コーナーには全国の移住情報パンフレットが所狭しと並べられていました。

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この情報プラザの催事として、今月は”和テイストで涼を呼ぶ”をテーマに各自治体が特色あるPRを行っており、昨日は滋賀県高島市が出展中でした。
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なお、来る7月23日(月)~27日(金)は愛媛県今治市「夏の肌、いたわりのタオル~いまばりタオルブティック~」と題して出展されますので、ご興味のある方は立ち寄られてみてはいかがでしょうか。 
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ふるさと情報プラザ

その後新橋へ移動し、愛媛県人としては外せないアンテナショップ「せとうち旬彩館」へも立ち寄り、2日間の東京出張を終えました。
終わりに写真をもう1枚。

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羽田空港第2ターミナルに到着し発見したのは北海道中標津町の広告です。
目を引くキャッチコピー、シンプルながらも印象に残るもので、まさに研修会で学んだ”ワンフレーズの大切さ”を感じる一幕でした。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 坂本耕紀)

「学生」発ニュービジネスの可能性!?

本日、松山大学と朝日新聞松山総局の協力講座「ベンチャービジネスと市場」を、企画研究部門の渡邊研究員と聴講してまいりました。この講座は市民公開講座(無料)でもあり、「ベンチャー企業の起業に必要な知識とスキルを学ぶ」内容となっており、松山大学の経済学部の学生さんと一緒に学習をすることができるのが大きな特徴です。

これまでの講座では、実際にベンチャービジネスを実践されている方のお話や、公認会計士、経済アナリストといった学外の講師の話を聞くというスタイルでしたが、この日の講座からはこれまでの講義の成果を活かして、学生さんたちによるビジネスプランのアイディアを最初に発表する会となっていましたので、学生さんたちの自由な発想による新鮮で奇抜なアイディアを聴講させていただこうと、久しぶりに学生気分に戻って(?)受講いたしました。

講座では、学生さんたちが4つのグループに分かれて、模造紙にどんなビジネスプランを考えてきたのかを書く作業を行い、そのあとで各グループごとにプレゼンを行うといった形ですすめられました。

さて、気になるビジネスプランですが、あまり詳しく説明するのは控えさせていただきますが、若者なりの視点でイベントを使った松山のロープウェー街の活性化、学生向けに特化した内容のフリーペーパーの配付、地産地消にこだわった給食スタイルの飲食店、地域防犯を行う民間企業、若手監督の映画活動を積極的に応援するプロデューサー業、などなどがありました。

受講した限りでは、今のプランのままではちょっとビジネスとするのには無理かなと感じましたが、これをもとにしてさまざまな人たちからアドバイスをもらいながら、次回、次々回の講座でプランをブラッシュアップしていき、夏休みにも各自が学習を行うそうですので、今後に期待したいと思います。ひょっとしたら、この中から学生発のニュービジネスが生まれるかもしれません。

あと、個人的な意見ではありますが、学生さんたちにとっては、このような講義・授業を通して「創造する(=物事を深く考える)という作業」が大事なのであり、自分たちの考えたビジネスプランが果たして儲かるかどうかは二の次でもいいように思います(儲かるに越したことはないですが)。

プランを立てて、それを検証し、そしてまたそれにそった行動を行い、また評価をするという、いわゆるPDCAサイクルを大学の学習の中で行えるということに意味があると言えるのではないでしょうか。

社会人の方ならお分かりでしょうが、このような経験は絶対に社会人になった際に役に立ちます。私が学生だったころには考えられないような授業形式です。そういった意味において、今の学生さんたちはうらやましい限りですし、しっかりと勉強してほしいと思いました。といっても、だいたいそう思うのは卒業したあとになってからなんですけどね。「後悔先に立たず」とはよく言ったものです。

この講座のこれまでの講義内容や様子についてはこちらを、またこの講座そのものについては、こちらを参照してください。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

研究員の休日

先日、休暇を利用して宇和島市にある愛媛女子短期大学を訪問しました。訪問の目的は、愛媛女子短期大学と宇和島市遊子(ゆす)地区の有志のみなさんによる調理実習の見学です。

愛媛女子短期大学のHPはコチラ

愛媛女子短期大学では、「大学と地域の連携」ということで、遊子地区の代表的な産物である「養殖鯛」と「馬鈴薯」をつかった地創作料理のレシピづくりを栄養課程学科の授業として取り組んでおり、昨年度より学生さんたちがオリジナルの「遊子の名物料理」を考えてレシピ作りに取り組んでいます。

このほど、そのレシピの成果がある程度まとまったとの連絡が愛媛女子短期大学からあり、それを地元の人たちに調理方法を教える調理実習が行われるようになったわけです。

この日集まった地元の人は、NPO法人「段畑を守ろう会」の女性部と遊子漁協女性部の役員のみなさんで、調理実習では、実際にレシピを考えてくれた愛媛女子短期大学の学生さんが指導役となり、遊子地区のみなさんに「創作料理の作り方」を教えておられました。ただし、「鯛をさばくこと」だけは、さすがに遊子の人たちの方が一枚も二枚も上。逆に学生さんたちに捌き方を教えてあげるなど、相互学習による交流が出来ていたようです。

魚を捌いた図

※調理実習の様子(鯛をさばいてます)

この日の調理実習でつくった新メニューは、次の3種類です。

①鯛の春巻き

鯛の春巻き

※中身の具はにんじんとじゃがいも、鯛の切り身をごま油や豆板醤で炒めてます

②鯛のライスコロッケ

ライスコロッケ

※鯛のあら汁とごはん、および鯛の切り身を炒めて、それをふかし芋でくるんであげてます。

③鯛バーガー(タルタル味、竜田味)

鯛バーガー

※左がタルタル味、右が竜田味です。 

 

調理実習をしたのちに、さっそく試食会を実施したのですが、遊子地区の人に味についてもお聞きすると、すべてのメニューともに「おいしい」と好評で、特に「鯛の春巻き」が一番人気でした。「ビールのつまみに最高」とおっしゃられていた方も(※もちろんこの場では飲酒などしておりません)いました。調理に手間がかからずに家庭でも気軽にすぐ作れることができることが評価が高かった要因のようです。

試食のテーブル

※机に並べるとなんとも豪華な食卓

さて、このあとの取り組みの予定としては、この日の調理実習に参加した女性のみなさんが今度は先生役となり、地元の住民の人たちを対象に調理実習兼試食会を7月に実施し、8月7日に開催される「段畑夕涼み会」では愛媛女子短期大学の学生さんたちと共同で販売することも検討するそうで、ゆくゆくは「遊子の名物」として販売することにより多くの人たちに食べてもらうようにしていくとのことです。この中から「じゃこかつバーガー」のような「ご当地グルメ」がうまれるかもしれませんね。

また、以前から「学社融合」の推進について教育現場では声高に言われていますが、最近は「産官学連携」といった「大学と地域の連携」についてもクローズアップされてきています。

「産官学連携」といえば、大学や研究機関がもつノウハウや技術を行政や企業とが共同で活用しながら新しい産業を創出しようといった工業関係の「大規模なプロジェクト型の事業」をなんとなく思い浮かべがちですが、この愛媛女子短期大学のような地元に密着した取り組みもまた、「大学と地域の連携」におけるひとつのモデルケースと言えるのではないでしょうか。

なお、愛媛女子短期大学のブログにもこの調理実習の様子が紹介されています。

この取り組みについてのお問合せは、愛媛女子短期大学(0895-22-0156)まで。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)