研究員ブログ

学生の政策論文

先日、研究員ブログで紹介した松山大学の田村ゼミによる「地域調査報告会」では、南予の観光素材をテーマにしたゼミ発表のほか、松山市が募集していた学生による政策論文で受賞した学生さんによるプレゼンもありました。

この日、プレゼンを行ったのは、最優秀賞を受賞した松山大学法学部2回生の後藤さんと優秀賞を受賞した松山大学法学部田村ゼミの観光調査班のみなさんです。

後藤さんは、 「プラス一枚の工夫」=大人も使える子ども用パンフレット~施設をもっと活用しよう~というタイトルで、博物館や美術館などの文化教育施設を観覧する際に、クイズなどを取り入れながら楽しみながら施設めぐりができるパンフレットをあわせて配付したらどうかという提案がありました。

後藤さんが独自にアンケート調査を実施したところ、観光地へ行くときに事前に目的地の情報を収集したり学習をしていく人の割合(約57%)はまだしも、観光地の博物館や美術館を訪問する前に事前に勉強する人の割合(約16%)はとりわけ低いという結果から、あまり事前学習をせずに観光地を訪問している人が多いという実態を浮き上がらせました。

そこで、既存のパンフレットにあわせて、子どもが楽しめるようなクイズ形式の施設案内パンフレットを採用するなど、学習機能を高める補助教材をセットにして配付することで、来館者にその施設を含めた観光地への興味や関心を高めることが可能となり、そのクイズの内容も難易度を初級から上級まで用意するなどすれば、リピーターも期待できるのではないかという指摘をされていました。

この後藤さんの提案は、もともとは大阪城のパンフレットを見て思いついたそうで、これは平たくいうと文化施設内をまわるときに観光客にもクイズラリーのようなものをしてもらって理解度を高めてもらおうという発想だと思われますが、似たような事例として、すでにこの研究員ブログでもご紹介しておりますように、たとえば砥部動物園では、単発イベントとして携帯電話のQRコードを利用したモバイルクイズラリーを携帯電話会社との協働事業ですでに実施しており、ひとつの事務改善として傾聴する価値がある提案ではないでしょうか。

これは個人的な意見ですが、かりに私が観光・文化セクションの企画担当者でしたら、施設案内でもそうですが、もうひとつ応用して『御当地検定』とセットにしてフィールドワークに使うことを検討したいです。

観光客が実際に1日かけて観光地めぐりをしながら、その観光地に書かれてある観光案内板などから情報収集を行い、渡されたワークシートに回答を記述して採点してもらう。そして合格したら記念品(認定証)がもらえるというスタイルです。その問題も初級から上級までを用意することでリピーターや当該地住民にも対応できます。

また、観光客は1日かけて観光地めぐりとあわせて御当地検定を受験するわけですから、途中、休憩や昼食をとる必要があります。その場所すらも試験問題に含めることにして、当該店舗から事業収入を得ることができれば、事業経費的にも助かるのではないかなと思われます。

とまあ、最後は少し私の個人的な提案をいたしましたが、いずれにしても、この後藤さんの提案は実現の可能性が比較的高い提案として評価できるのではないかと思われますがどうでしょうか。

次に、優秀賞を受賞した松山大学田村ゼミ観光班の提案は、「石碑を観光資源として」と題して松山市内にあるさまざまな石碑を観光資源に利用したらどうかという提案です。

これは松山市内に限らずどこの自治体にも事業に関する記念碑や、地域の偉人を顕彰する頌徳碑など、数多くの石碑が設置されており、田村ゼミ観光班の提案はそういった石碑をもう一度見直そうというものでした。

普段に自分たちの身近なところに石碑がたてられているが、なぜそこにあるのかといった設置意義などを知らないままにすごしてはいないか、また石碑自体も風化して文字が読みにくくなっているところもあり、石碑の保存も含めて下の世代に伝えにくくなってしまっているのではないか、そういう課題認識があったようです。

その課題解決の手段として、単に石碑がぽんとおかれているだけではなくて、観光施策のひとつとして石碑の保存も含めて碑文の説明などを記した掲示板の設置などを行うことが提案されていました。

どちらの提案も、学生さんなりの発想ででてきたたいへんユニークなものであり、一生懸命自分たちの論を組み立てようと努力している姿がうかがえました。

私自身としては学生時代にはあまり地域というものに興味や関心がなかったので、こんな若い人たちが地域に興味や関心をもっていて勉強しているのはたいへんすばらしいなあと、感心しきりの時間を過ごさせていただきました。そんな学生さんたちの熱意に感謝、感謝です。

ちなみにこの学生さんたちの発表原稿や資料などは田村ゼミのHPで見ることが出来ます(観光班のページにあります)ので参考までにご覧ください。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)