研究員ブログ

住民自治組織「されだに」の現場から

先日、伊予市中山町の住民自治組織「されだに」の発足式に参加した。行政に頼らない、地域の人たちが自分たちで主体的にムラを守って、持続的に発展させていくんだという、佐礼谷地区の人々の意欲を目の当たりにする中で、大学時代に日本近世史を少々かじった程度の研究者ではあるが、現在の住民自治、新たな公ともいうべき動きに、「江戸時代の村請制度」の姿を見た思いがした(そのあたりの詳しい話はマニアックになるので割愛する)。

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さて、最近、協働という言葉を行政関係文書で頻繁に読んだり聞いたりする。特に自治体計画や基本構想には「市民協働」「協働のまちづくり」といった文言は頻繁に登場するようになった。それだけこれからの自治体施策のキーワードということなのだろう。

そんな中で、月刊ガバナンス6月号に、「協働」は自治体スリム化の道具か?と題した特集記事が掲載されていた。

記事によると、協働の出発点は民間の発想や手法を利用しながら公共サービスを提供していくという「質の改善」を図るものであったのに対し、近年では、行財政改革という理由から、「『経済性・効率性の改善』を図るへの期待が『質的改善』への期待を大きく上回っている」という状況になっていることが指摘されている。

ゆえに、「市民活動団体・NPOに対して企業と同等あるいはそれ以上に、経済性・効率性を重視した行政代替型のサービス供給を期待する自治体」も少なくなく、「NPOを『安易な下請け』のように扱うという現象も生じさせている」ようだ。

また、「既存の協働施策のほとんどが行政サイドの発意により着手され、時に市民の意向を置き去りにしたまま、行政主導で淡々と事業化が進行している例も少なからず見られる」そうである。

「地域協働」というスタンスで、市民に公共サービスの一部を任せることを予定するのであれば、その「前提条件として政策形成過程における市民の参加が不可欠」との意見が寄せられていた。

そして、結論的に「協働施策」を実施していくためには、NPOや市民活動団体と接触する機会の設定など、市民との対話を頻繁に行う「対話型職員」を育てることを推奨している。役所側の一方的なおしつけではない、市民サイドとの対話の中から協働に必要な職員の能力を積極的に開発していく必要性が問われているとしているのだ。

さて、住民自治組織「されだに」の事例に戻ってみると、この組織を立ち上げるまでに、伊予市では専門のスタッフとして職員を配置して、住民といっしょになって議論をしたそうで、これまでのように佐礼谷地区にかかりっきりということにはならないそうであるが、住民と対話を続けながら組織が自立できるように応援していくそうである。これからの「佐礼谷地域」と伊予市の将来に期待したい。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)