研究員ブログ

路地から見えてくること。

最近公開された「ALWAYS 続 三丁目の夕日」という映画があります。すでにご覧になられた方もおられるのではないでしょうか。これは前作の評判がよくて続編がつくられたそうです。

筆者は続編については残念ながらまだ見たことがないのですが、前作に引き続き昭和30年代半ばの経済発展につきすすむ東京の下町に生きた庶民の交流を描く感動作品にしあがっているそうです。

この映画はもともとはマンガ「三丁目の夕日」が原作になっているそうで、このお話は中国の教科書にも掲載されているとかしないとか。

さて、私は前作の「ALWAYS 三丁目の夕日」を見てたいへん印象的な場面がありました。

それは俳優の堤真一さんが社長演じる(社長といっても小さな自営の自動車修理の町工場ですが)「鈴木オート」に、電気冷蔵庫がやってきたときの話です。それまでは氷屋さんがもってきた氷を木製の箱に入れて食べ物を保存していたのが、電気冷蔵庫の登場により路地裏の粗大ゴミのところに木製の箱をすてられてしまい、それを悲しげにピエール瀧さん演じる「氷屋さん」が眺めるシーンがあります。

その氷屋さんの表情になんとも言えない哀愁を感じるとともに、経済発展の名の下にどこか日本が置き忘れてしまった時代の流れの裏側を見た思いがしました。

さて、この作品、その氷屋さんのシーンに代表されるように多くの「路地」でのシーンが登場します。現在は車社会になってしまい、防災や救急医療、交通の関係もあり、法令等により土地区画整理がなされて、路地というものがだんだん少なくなってきており、「路地裏」という言葉さえも使われることが少なくなってきたような感がありますが、それにあわせて残念ながら「コミュニティ」というものもだんだんと薄くなってきたようにも思います。

路地というモノは当然道が狭いわけですから、お互いの顔が近くてその存在が見えるということです。ですが、現代はプライバシーの問題をいわれている時代となっており、車社会の現代では路地はただの狭い道でしかないようになってきました。

でも、この映画「三丁目の夕日」が描かれている世界は、そういうお互いの顔が見える路地裏があるこそ「コミュニティ」と呼ぶべきものがあったように見えましたが、みなさんはどのようにお考えですか?

さて、そういう「路地」をテーマにしたまちづくりの本もあります。興味のある方、ぜひご覧ください。

路地からのまちづくり

関連本

ちなみに、宇和島市津島町岩松地区では、「岩松横っちょストーリー」と呼ばれる岩松地区の古い町並みの狭い路地を利用したフリーマーケットが年に数回行われています。

また、当センターが主催する「地域づくり人養成講座」の「地域福祉」のテーマで現地研修で訪問した託老所「あんき」のある松山市西垣生地区も狭い路地が多い地区でもあります。

狭い路地だからこそお互いの顔が近くなり、会話が生まれ、交流が生まれる。そういうことを意識してみると、「路地」というものから教えられることはあるのかもしれませんね。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)