研究員ブログ

秋山仁先生の教え

12月8日(土)に大洲市にある「大洲青少年交流の家」で行われた「大人を考えるフォーラム」のうち、数学者の秋山仁先生の講演を聴講いたしました。

大洲青少年交流の家は、もともとは「国立大洲青年の家」と呼ばれていた施設で国の政策で独立行政法人化した施設となり、名前を改称したみたいです。私も中学、高校時代に宿泊したことがあります。

さて、その会場でおもに高校生を中心とした若い人たちに対して、大人がエールを送るという趣旨のもとで行われていたようで、その最初の講義として秋山仁先生の講演があったのでした。

秋山先生からは、ご自分はじつは数学は苦手であったこと、それでも数学者になれたのは数学が好きで、あきらめなかったから、そしてあきらめたらそこで終わりであり、才能というものはもともとあるのではなく自分でつかみとっていくものであること、そして、夢や志をもって生きることの大切さ、自分の力量を高めることの大切さ、自分のやりたいこと、それが天職であり、それを誇って語ることの大事さを、数学の定理の楽しいお話を交えつつ講演していただきました。

最後には数年前からはじめたアコーディオンを演奏していただき、いつもハーモニカを講演の際にしのばせている若松進一さんもびっくりのプロ級(秋山先生談)の腕前を披露されていました(ちなみに、若松さんもこの場にいました)。

秋山先生がおっしゃられていた言葉の中で特に印象的だったのは次の言葉です(筆者なりに私的解釈してます)。

「青春とは、人生のある時期を言うのではなく、心の姿をいうのである。年を重ねただけでは人は老いることはない。自分の持つ夢や希望をあきらめたときに、志をあきらめたときに、はじめて「老い」がはじまるのである」

このほかにも、「うーん」とうなされるような含蓄のある深い言葉が数多く登場しておりましたが、「自己啓発」という意味において参加してみてよかったなあと思った次第です。

さて、この日は八幡浜高校の高校生たちもたくさん聴講していたようで、秋山先生の講演を聴いたのち、4人のパネラーの方のパネルディスカッションを通して、これからの進路について悩みごとの相談や、どういう自分になりたいかといった自分の生き方について振り返りを行いつつ、なんと青少年交流の家で夜を徹して学習をすすめていったようです。

ちなみに、このフォーラムの様子は、パネルディスカッションのコーディネーターをつとめた若松進一さんのブログや、パネラーとして登壇したNPO法人Eyesの横山さんのブログで簡単に紹介されていますので参考までに御紹介します。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

アイビックを訪問しました。

先日、今治市の地場産業振興センター内にあるインキュベーション施設「アイビック(IBIC)」を訪問いたしました。

この施設は、今治市を拠点として新たな事業や産業の活性化に取り組む企業や個人を支援するためのビジネス・インキュベーションオフィスとなっています。

ちなみに、アイビックとは、「IMABARI Business Incubation Center(今治ビジネスインキュベーションセンター)」のそれぞれの頭文字をとっており、「私が成長してビックになるという想い」もかけた施設の愛称名です。

このオフィスに入居した方は、常駐するマネージャーからさまざまなビジネス支援につながるソフトサービス(たとえば経営診断とか、異業種の交流会などのビジネスチャンスの提供など)を受けることができます。

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地盤産業振興センターが用意している部屋数は、以下の2種類があり、現在は(1)の1室を残しすべて埋まっているそうで、そのうちのいくつかの入居者は当センターともつながりのある方もチラホラ見ることが出来ました。

(1)メインインキュベーションオフィス(約14㎡/室×6室)
 起業したばかりなどの若い企業(個人・法人)で、支援が必要な方。最長3年入居が可能。備品として机があります。

(2)プレインキュベーションオフィス(約6㎡/室×3室)
 ビジネスアイディアはあるけれど、まだ起業をしておらず、これから起業を考えている方。最長1年入居可能。

どちらの部屋も24時間出入り可能だそうで、家賃も格安でありますし、マネージャーの方からさまざまな支援を得ることができることから人気なのでしょうか。

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その他、同センター内の2階にある「交流サロン」も拝見いたしました。ここでは、情報交換の場や交流活動の場として利用してほしいという趣旨で設置されたそうで、インターネットなどのパソコン機器や起業に関する書籍なども充実していて、立派なサロンとなっています。

職員の方にお聞きすると、この「交流サロン」はまだまだ十分には活用されていないのが課題のひとつだそうで、 IBICに比べて開放されている時間が限られている(この施設は午後6時まで)ため、それも原因のひとつとしてあげられるのではないかと思いました。

いずれにしても、この入居者の中から今治発のビックなベンチャー企業がここから誕生するかもしれませんね!詳しくは今治地場産業振興センターのサイトを参照してください。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

しまね農村未来会議

12月2日(日)に島根県飯南町というところで開催されました「しまね農村未来会議」に出席してきました。

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※会場となった島根県中山間地域研究センター 

この会議は、研究員ブログで以前ご紹介した「いなかインターンシップ」というプロジェクトを実施している南の風社という高知県の出版社の方にご紹介を受けたこともあったのですが、会議の全体テーマが「農村再生はなぜ必要か」ということであったので、愛媛県にもあてはまる共通課題ではないかと感じまして、午後の部だけですが参加いたしました。

島根県は現在、世界遺産となった石見銀山のおかげでメジャー観光地の道を歩み始めているようですが、隠岐島にある「海士町(詳しくは舞たうんを参照してください)」に代表されるようにそのいっぽうで移住の先進地でもあります。

そんな移住先進地である島根県の山間部と、中国山地を構成している広島県の山間部の自治体は、さまざまな共通する地域課題をかかえております。その地域課題解決のために、県境を越えて地域課題解決と連携を深めようと、「NPO法人ひろしまね」という団体を立ち上げて、地域づくり活動を実施しております。

さて、会議は午前中はNPO法人ETICさんが提唱されている「チャレンジコミュニティプロジェクト」と呼ばれる、若者が長期実践型のインターンシップをツールとした地域でチャレンジすることを通して、地域の活性化や若者の自己実現を図ろうという全国の事例報告や情報交換が行われ、午後からは「農村再生はなぜ必要か」というテーマで、4名のパネリストが登壇して会場の参加者とともに協議をすすめました。

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※パネルディスカッションの様子

登壇したパネリストは、農水省中四国農政局農村計画部農村振興課都市農村交流係長の竹内司氏、島根県中山間地域研究センター研究員の有田昭一郎氏、NPO法人ひろしまね理事の藤槻篤徳氏、NPO法人ETIC事務局長の由利吉隆氏の4名の方々。

みなさん、いずれも示唆に富んだ発言をしていただきましたが、私個人としては特に「ひろしまね」の方が発する言葉のひとつひとつが、実践にもとづく発言であったこともあり大変参考になりました。

「限界集落」と呼ばれる地域に住んでいる人たちにとって、「限界集落」という言葉はたいへん失礼な言葉であるため、わたしたちも「いわゆる限界集落」とか「限界集落」という標記をするよう心掛けていますが、「なぜ限界なのか」ということをよく考えて欲しいということでした。「限界集落」と決めているのは住んでいる人たちではなく、周囲からの視点ではないか?ということでした。

この「限界集落」の「限界」という言葉は、住んでいる人たちが「住んでいくのが限界」や「生きていくのが限界」と考えているのではなく、あくまで「集落を維持するためのシステムが限界に来ている」という意味であり、言葉だけが一人歩きすると、「限界集落」とよばれるような地域に住んでいる人たちが、かわいそうな存在というイメージに陥ってしまう可能性があるという指摘は、なるほどとうなずかされる言葉でした。

そして、「限界集落」として呼ばれている地域に住んでいる人たちが、その生まれ育った場所でいきがいをもって生き、そして生まれたところで死にたいとおもって住んでいるという実態を目の当たりにして、そんな人たちを行政を含めて周りがどうやってサポートしていくか、場合によっては住民がいなくなって集落がなくなってしまっても、田畑などの農村風景は残していく、この考えは「ムラおさめ」とか「集落を看取る」と呼ばれるようですが、そのサポートするシステム作りが急務の課題であると述べられておられました。

では、どういうシステムをつくっていくのかということですが、それはこれから数年をめどに作り上げていくことであるということでしたので、愛媛県においてもこの「ひろしまね」さんがやろうとされていることから学ぶことが大いにありそうです。

このほか、全体テーマが「農村再生はなぜ必要か」という大きなテーマでしたが、農村と都市という対立軸、食料自給率の関係、国土保全に関する景観論、世代間の文化伝承、ふるさととは何か、田舎における地域素材の豊富さ、誰のために農村再生は必要か、といった様々なテーマなどが出され、非常に興味深い議論が繰り広げられていました。

また、高知県の南の風社さんでは、「いなか未来会議ネットワーク」という組織を立ち上げて、いなかで活動する人や団体をネットワーク化し、全国の仲間と知り合えるプラットホームをつくり、相互に情報交換できるツールやルート作り、年1回のフォーラムの開催などを予定しているそうですので、興味のある方はお問い合わせください。

なお、NPO法人「ひろしまね」の取り組みについてはこちらを参照してください。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

地域経済研究会

 11月29、30日と広島で開催された地域経済研究集会に参加してきました。

 統一テーマは「地域の再構築」で第1日目の第1部では、国土審議会委員でもある大西隆・東京大学教授の「国土形成計画と広域地方計画」についての記念講演があり、第2部では、大西教授の他、河部まゆみ・桜江いきいきプロジェクト事務局長、中村良平・岡山大学教授、作野広和・島根大学准教授による討論会が行われました。第2日目は中国・四国のシンクタンク関係者による研究報告会でした。

 統一テーマであった「地域の再構築」について多方面からの報告が行われ、いろいろ参考になりました。

 日本の国土計画は、その目的を「利用、開発、保全」から「利用、整備、保全」へと転換しており、開発から整備へという時代になっています。人口減少社会をむかえ、新たに山林などを開発するよりも今ある国土を有効に利用できるよう整備するということだと思います。そして時代に合わせて地域を再構築するということです。

 地域を再構築するということは、古き良き時代に戻ることではなく、今の時代に沿った前向きな姿勢で再構築されなければなりません。そのためには情報化が進んでいなかった地域でICT(情報通信技術)を活用することなども有効な方法であると思われます。

 今後は、再構築が不可能な地域も出てくると思われますので、そういう地域をいかに消滅させるかの「むらおさめ」について、もっと議論される必要があると思いました。

(文責 企画研究部門 研究員 河野 洋)

ふるさと水と土シンポジウム

12月1日(土)に松山市にあります県女性総合センターで行われました「ふるさと水と土シンポジウム」(主催:愛媛県)に参加してまいりました。

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※会場の様子

このシンポジウムは、『みんなで守ろう!ふるさとのたからもの』と題し、「自然と共存しながら維持されてきた中山間地域の農業農村の営みや地域の魅力について、広く県民の皆様にご紹介し、ふるさとの農地や農村を保全する住民活動の重要性について考える(県庁HP引用)」ために開催されました。

はじめに、宇和島市出身のキャスター宮川俊二さんが登壇し、キャスターからみた農村(ふるさと愛媛)の魅力と題して基調講演をしました。

宮川さんは、ご自身が過ごした少年時代の宇和島の風景について語られ、「自分にとっての原風景は何か?と問われたときに私は自分の家の前の海の沖合いにある九島という島に沈む夕日であると答えるだろう」と述べられていました。

また、その自分の原風景が故郷を訪れる度に変わっていってしまっていることに触れ、どうしてそのようになってしまったのかというと、農業以外の商工業が地域にはいってきて、農村風景や農村らしさが消えていったからであり、それは決して悪いことだとは言うつもりはないが、やはりどこかふるさとの風景がなくなるというのはさびしいと思うとも述べられておりました。

また、宮川さんの御兄弟は8人いるそうで、全員が市外ででており、御両親がのこしたわずかな畑を宮川さんが相続されたそうですが、そのわずかな土地を耕すことさえままならず、いわゆる「耕作放棄地」となり竹害などもでてきて山が荒れてしまっているのが現状だそうです。

これは、農地法によって安易に農地を売買できない仕組みができあがっていることも理由のひとつであろうと述べられ、日本の場合、農業は「農家」という言葉に代表されるように、「家」で行われるものという考えが根底にあり、農業というものが「家」と密接に結びついていることの一例ではないだろうかと述べられていました。

そんな荒れた山をどうやって元にもどすのか?ということについて宮川さんは、「都市の力を借りるのもひとつの方法」と述べられていました。単に都市から耕したい人を農村にあつめるというのではなく、農村風景を守ることは都市のためになるということを密接に考えてもらうことが必要であると述べられていました。

具体的な方法として、「環境税」の話をされていました。現在、地球規模の温暖化がすすんでおり、全世界で二酸化炭素の排出量をへらす取組がすすめられています。その際に、都市と田舎で考えた場合、圧倒的に都市のほうが二酸化炭素の排出量は多く、反対に田舎は二酸化炭素を排出もしますが、自然も多く吸収するところでもあります。

したがって、その二酸化炭素の排出量を算出し、それに応じて税金を賦課して、実際に二酸化炭素を吸収している自然のある地域に税金をまわすシステムを構築するのはどうだろうか。そうすれば都市は税金を賦課されないように排出量を減らす取り組みをするし、田舎は田舎で自然を大切にするようになるのではないかと述べられていました。

このほかにもメディアを利用した広報戦略で宮崎県の東国原知事のお話があったり、NHK時代のお話があったりと、たいへんユーモアあふれる非常に示唆にとんだお話をしていただきました。

ちなみに、愛媛県でも森林保護、環境保護を目的とした森林環境税が平成17年度より導入され、住民税の均等割に500円加算されています。

基調講演のあとには、愛媛大学の桜井先生をコーディネーターに、5名の方がパネリストとして登壇してパネルディスカッションが行われました。

パネルディスカッションでは、農村景観や環境を守る取り組みをされている方から活発な意見が出されていましたので、ここでは南海放送の永江孝子アナウンサーが述べられた「松山市日浦地区の話」をご紹介します。

松山市の日浦地区は、ちょうど松山市の水がめである石手川の上流域・水源地にあたり、取材した日はちょうど芸世地震の直後であったそうで、日浦地区の住民たちに地震で壊れた石垣を修理するのはなぜかと尋ねたら、田んぼを復活させるためでもあるが、自分たちがここで水を保全する機能をとりもどさないと下流の人たちが困るからだという話を聞かされたそうです。

このことから、都市住民が快適な生活をおくれているのはこういう農村のひとたちのおかげであることを忘れてはいけないという話をされていました。永江さんは、だからこそ農村をみんなで守っていく必要があり、自分たちでできること、たとえばボランティア活動ができないのであれば、県産品を買うことでフードマイレージをためないようにするとか、そういった小さなことでも積み重ねていくことが必要ではないだろうかと述べられていました。

最後に、農村景観を守っていくために今後どうしていくことが求められるのかということの総括として、コーディネーター役の桜井先生より、「都市住民の景観や生態系保全などに対する関心は高い。だが実際にその地域に住んで農村を守っていくためにはある程度の整備が必要であり(たとえば農作道などのコンクリートの道とか)、それにより美しい景観が壊れてしまって、それを見た都市住民が批判するという保全と整備の間で対立がうまれてしまうことがある。そこには保全する側が美しい農村景観を維持することがどれだけ大変であるかを知ってもらうことがたいへん重要であり、その実態を明確にして上手に都市に発信することが必要だ」と締めくくられていました。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)