研究員ブログ

翠小学校エコ改修検討会

伊予市双海町に県内で最も古い現役木造校舎があります。赤い屋根の翠小学校で、地区のシンボルとして生き続けています。

この翠小学校は昨年度、環境省から「学校エコ改修と環境教育事業」のモデル校に指定されました。木造校舎が同事業の対象となるのは初めてで、全国的に木造校舎が建て直しを迫られている中、長期使用のモデルケースになると期待が寄せられています。

同事業は、校舎取り壊しによる建築廃棄物の排出を抑え、地球温暖化防止に結びつけるため、耐震補強や断熱化、太陽光発電施設設置などのエコ改修をするものです。また、同時に学校と地域が協力して環境教育を推進するものです。

3ヵ年で行われる同事業の初年度の今年は、環境建築研究会と環境教育研究会での検討が進められています。昨日も暑い中、学校の図書室(和室)で環境建築研究会の検討会が行われていました。東京大学・慶應義塾大学の先生のご指導の下、「構造調査及び耐震診断の考え方」の講義や「夏の暑さと涼しさを測る」のワークショップがあり、参加者のディスカッションが行われました。また、同時進行で、東京大学・慶應義塾大学の学生たちによる「夏の環境調査」「構造調査・腐朽度・白蟻調査」が行われました。 

また昨夜は、地元の翠地区ほたる保存会の計らいで、日本建築学会の方々や調査・研究している学生さん、翠小学校の先生・PTAの役員さんたちと双海の食材で日中の朗を労いました。

今年の結果を受けて、来年度には改修工事が行われるようですが、地域の誇りである翠小学校を施設保存と環境教育だけにとどめるのではなく、今後も地域の活動拠点として更なる発展を願っています。

このエコ改修検討会の様子は、コチラから見ることができます。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 松本 宏 )

CBって何?

来る8月23日(木)に、当センターでは第25回政策研究セミナーを開催いたします。テーマはコミュニティ・ビジネス。講師にはコミュニティ・ビジネスの提唱者である細内信孝 氏をお招きします。

コミュニティビジネスとは、地域が抱えるさまざまな課題をビジネスの手法により解決し、またコミュニティの再生を通じて、その活動の利益を地域に還元するという事業のことで、自分たちの生活している地域を元気にすることを目的に、自分たちが主体となって行う事業といったところでしょうか。

一つの成功事例として言われているのが、はっぱビジネスで全国的に知られた徳島県上勝町でしょう。人口2,000人ほど、土地の86%が山という過疎と高齢化がすすむこの町から生まれた「株式会社いろどり」は、従業員の平均年齢78歳、年商2億5千万円という企業にまで成長しています。地域の財産である「はっぱ」を生かして、地域課題である高齢化問題と雇用の問題を解決したというコミュニティ・ビジネスの典型と言われています。

そんな成功例がきっと私たちの周りにも転がっているんだけど、私たちは当たり前だと思って気がついていないだけ。そんなネタ(=地域素材)を発見して、地域の抱える課題を解決するために起業にすることにより、結果として地域活性化につながてみましょうというご提案が、今回の政策研究セミナーの企画意図です。興味のある方、ぜひコチラからお申込ください。

さて、個人的なことですが、このコミュニティビジネスという言葉を略号で「CB」と表記することがありますが、はじめにこの略号を見たとき、てっきりサッカー用語の「Center Back(センターバック)」の略号だと思っていました。私はコミュニティ・ビジネスを学習する以前の問題のようです(汗)

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

街道灯篭祭り 天涯の道をゆく

7月26日付けの官報に告示され、正式に文化庁から宇和島市遊子地区にある「遊子水荷浦の段畑(だんばた)」が全国で3例目、四国でははじめての重要文化的景観に選定されました。

この重要文化的景観とは、平成16年改正(施行は平成17年4月1日)の文化財保護法によって生まれた重要文化財のひとつであり、文化的景観のうち特に国民共有の財産として特に重要なものを重要文化的景観に選定しています。

さて、その遊子水荷浦地区の段畑においても、四国西南地域一帯で開催されている「街道灯籠祭り」のひとつとして、8月7日に「段畑夕涼み会(主催:同実行委員会)」が開催され、来場者は普段は見ることが出来ない行灯に灯された「夜の段畑」の風景を味わいました。

段畑全景(昼) 段畑から見える遊子の風景

※遊子水荷浦の段畑とそこから広がる遊子の風景

設置作業の様子 取材の様子

※作業の様子(左)と取材の様子(右)

この段畑夕涼み会は昨年度から行われており、今年はおよそ1,000個の灯籠(昨年度は500個)が段畑に並べられ、段畑付近は幽玄な雰囲気に包まれており、この日はちょうど夜空に星がでており、段々畑の灯籠の灯りの先には満天の星空という、なんとも風情あふれる光景が広がっていました。

段々畑を形容する言葉に「耕して天に至る」という言葉がありますが、この日の夜はまさしく「灯籠の灯りを辿って見上げれば天の星空まで至る」といったたいへん美しい風景だったように思います。

ライトアップ1

※ライトアップの様子(まだ夕暮れ)

ライトアップ2

※全景の夕暮れ

ライトアップ3

※もう少し暗くなった全景

ライトアップ4

※別の角度からの様子

そして、夕涼み会場では夜市や実行委員会主催による出店(先日研究員ブログで紹介した鯛バーガーも販売されていました)、尺八の演奏会なども催され、訪れたおよそ400人ほどの人たちは真夏の夜の段畑の風景とともに音楽に酔いしれていました。

尺八 

※尺八の演奏会

鯛バーガー

※これが噂の「鯛バーガー竜田味」(1個200円)
 この日に用意した150個はすぐに完売しました。その様子は愛媛女子短期大学のブログにも紹介されています。

また、この日はお座敷船も1艘でており、船から食事をしながらこの夕涼み会を楽しむというグループもあったようで、海から見る夜の段々畑というなんとも粋な味わい方をされている方もおられたようです。

この取り組みについてのお問い合わせは、NPO法人段畑を守ろう会(0895-62-0015)まで。

なお、宇和島市では重要文化的景観の選定を受けて、10月初旬にシンポジウムを開催する予定だそうです。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

「ご当地検定」花盛り

最近の新聞記事などを見ると、おもに団塊の世代以上の方をターゲットにした大学のシニアカレッジがブームのようで、地域の歴史や文化、風土、観光情報などを問題にした「ご当地検定」も同様のようだ。

この「ご当地検定」は、現在では70以上の地域で開催されており、本県関連では、宇和島市(四国で最初)、松山市、四国で実施されていて、今年度からは「タオルソムリエ(今治市)」なるユニークな検定も誕生するらしい。

このブームの火付け役を担ったのは、京都で行われている京都観光文化検定(略:京都検定)である。この京都検定は、さすが日本の歴史のメジャーともいうべき京都の歴史や文化を問う検定試験とあって、1万人ほどの受験者が毎年いるという。このほか金沢や長崎などの検定試験も数千人の規模となっている一方で、宇和島市などの小さな自治体で行われる、いわゆる「マイナー」な地域の検定は100人以下の受験者である。

これは、ご当地の人気(認知度)の差というものが一因であると考えられるが、ご当地検定を開催する側の開催目的のスタンスが大きく2つに分けられるからでもあるようだ。

京都検定のようなメジャーな検定の場合は、観光産業の人たちのおもてなしの質の向上や、検定を取り巻く旅行プランが検定そのものが観光事業となっているのに対し、マイナーな検定は、住んでいる人たちが自分たちの住む地域の良さをもう一度見直そうという「地域づくり活動の一環」という位置づけの要素で実施しているようである。

また、全国のご当地検定の検定合格者に対する扱いについて簡単に調査したところ、認定証のみの自己満足で終わっているところや、観光関係の割引クーポンが特典としてつくところが多いようである。

ただ、山口県萩市で実施している「萩ものしり博士検定」では、合格者に対して「修士」と「博士」の資格を与え、「博士」に対しては特別講演会などの合格者対象の事業を行い、博物館の解説員にも任命されるそうで、検定合格者を地域づくり活動に巻き込んでいこうという動きもあるようで、今後はこのような動きが活発化することが予想される。

検定試験というツールを上手に使い、地域づくり活動に活かす。それが「ご当地検定」を実施するうえでの今後の課題の一つのようである。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

大学の同窓会から思うこと

先日、愛媛県内に在住する自分の出身大学の同窓会を年に2回やっていることを知り、はじめて参加してみた。

自分の出身大学が関西の大学ということもあり、愛媛県で県内在住者のみで同窓会をやっているとは思いもよらなかったが、同窓会に参加して幹事の方からいただいた県内の卒業生名簿一覧をみてかなり驚いた。

かつて当センターに在籍した研究員が大学の大先輩であり、同窓会の際に名刺交換をさせていただいた先輩方と話をしていると、当センターの主任研究員とかつて机を並べて同じ仕事をしたことがある方などもおられ、世間は広いようで狭いものだと思うとともに、「縁」というものをたいへん感じた。

さて、その同窓会から数日後、自宅のポストに大学の学部同窓会名簿が到着した。名簿を開いて年度を追いながら卒業生の進路先のところを眺めていると、自分が大学を卒業した当時(平成10年度)は就職氷河期が続いている時期でもあり、かなり進路先に大学院進学や空白が目立ち、就職する人は少なかった。

その一方で、昨年度(平成18年度)に卒業した学生の進路先をみると、そのほとんどに進路先が記入されていて、就職している学生が多い。

これを眺めながら、学生の就職率が向上していて、景気が回復基調にあるという新聞報道などを思い出し、自分たち世代との差やギャップというものがあることを実感した。

それもそのはずである。わが身に振り返って教育環境を考えてみると、自分たちのときには全くなかった「総合的な学習の時間」なるものが小中高で導入され、また大学でも自分たちの学生時代には「研究者は研究だけしておけばよい」という風潮がまだまだ強かったが、現在の大学は地域貢献や産官学連携といった事業をやっていないところはない。

およそ10年で時代の流れというものはこんなにかわるものかと思うとともに、これからの10年はいったいどうなっていくのだろうか、果たして自分はこの急激な社会の流れについていけているのだろうかと自問する今日このごろである。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)