研究員ブログ

地域づくり団体全国研修交流会

 昨年度愛媛県で開催した地域づくり団体全国研修交流会が、今年度は佐賀県で開催されましたので、県内の関係者37名で参加してきました。
 「もやい」でつなぐ「協働のまち」~平成まちづくり維新は佐賀から~をテーマに、前夜祭、全体会、13の分科会と内容の濃い研修となりました。佐賀大会も前年度に実行委員会組織を立ち上げ、事務局機能をNPO法人佐賀県CSO推進機構が務められました。
 佐賀県では、NPO法人、市民活動・ボランティア団体に限らず、自治会、町内会、婦人会、老人会、PTAといった組織・団体を含めて、Civil Society Organizations(市民社会組織)の略で「CSO」と呼称しているそうで、13の分科会もそれぞれの自治体にあるCSOの組織が運営に当たっていました。
 私は、第9分科会(鹿島市)に参加し、豊かな海・山・里の歴史文化を体験してきました。特に運営主体であった「フォーラム鹿島」が目指す『プロ市民』という言葉に共感を持ちました。行政や補助金に頼るばかりではなく、まず「自分自身が、ふるさと鹿島のまちづくりのために何ができるか考え、具体的に行動する」という考え方が鹿島の地域力を上げていると確信しました。
 地域づくり団体全国協議会に登録する団体は、年々増えていますが、こうした全国の地域づくり人が集まる研修会に参加することで、改めて自分のやらなければならないことを痛感する次第です。来年度は、11月に青森県で開催されることが決まっています。今から毎月積立して参加しようと思っています。
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(潟スキーの実演をしてくれた鹿島市の職員さん)

(まちづくり活動部門 研究員 松本 宏)

観光カリスマ塾に行ってきました

昨年、国土交通省主催の「観光カリスマ塾」が若松進一さんのおられる伊予市双海町の「人間牧場」で開催されましたが、今年度は高知県馬路村の東谷望史さんのところで11月20日・21日の両日で開催されました。

ところで「観光カリスマ」とは、国土交通省のHPには、

従来型の個性のない観光地が低迷する中、各観光地の魅力を高めるためには、観光振興を成功に導いた人々のたぐいまれな努力に学ぶことが極めて効果が高い。各地で観光振興にがんばる人を育てていくため、「『観光カリスマ百選』選定委員会」を設立し、その先達となる人々を『観光カリスマ百選』として選定する

と書かれてあり、観光カリスマもさまざまなジャンルにわかれていることがわかります。若松進一さんは「真似しない、真似できないアイデアで地域力を作り上げるカリスマ」であり、今回の東谷さんは「特産品(ゆず加工品)と共に村をまるごとブランド化に導いたカリスマ」であるそうです。

今回の東谷さんの観光カリスマ塾では、四国を中心に合計で12名の参加があり、そのうち立教大学観光学部の学生さんもひとりおられました。いまや大学には観光学部がある時代なんですね、おどろきました。

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東谷さんのカリスマ塾では、初日は馬路村と馬路村農協のまちづくりについて講義をしていただき、質疑応答を経て懇親会、翌日は魚梁瀬杉でも有名な魚梁瀬地区の山林をトレッキングし、森林鉄道の乗車などの現地視察を行いました。

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さて、余談ですが馬路村といえば、やはり「ごっくん馬路村」。この日も会場の馬路村農協で最初にお出ししていただきました。ちなみに視察に訪れた方にはどなたでも無料で一本飲むことができます。

馬路村訪問前の週に「地域づくり団体全国研修交流会愛媛大会」が開催されていた関係もあり、馬路村役場の木下課長さんともお話していたのですが、

「馬路村農協に行けば、蛇口をひねったら『ごっくん馬路村』がでてくる水道があって来訪者はタダで飲むことができるらしい」

ということができればおもしろいなあと冗談を言い合っておりました。もちろん、そんなことは現在の所ありませんが、願望を込めて今後の馬路村農協におおいに個人的に期待したいと思います。

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(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

オチャップ開催

10月11日に八幡浜市で開催されましたYGPのみなさんが行った「オチャップ」の取材をしてきました。

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以前、この研究員ブログでもご紹介いたしました「オチャップ」ですが、復習いたしますと「お茶をしながら行うワークショップ」の略です。

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この日、集まっていたのはおよそ30人ほどの市民のかたがた。高校生から年配の方々まで、まさしく老若男女とはこのことでしょうか。5つの班に分かれて八幡浜の「ここにはこんな人がいるよ」「このお店のこれはおいしい」などと言いながら、地図にさまざまな付箋をつけて、参加者同士たのしくおしゃべりをしていました。

それぞれ最後に発表をしながら、感想を出し合っていましたが、やはり世代間の感性の差というものがあり、若い人たちが思う「スゴイ」ことと、年配の方が思う「スゴイ」「スバラシイ」というもののギャップがあり、おたがいがとても新鮮に感じながら話をすすめていたのが印象的で、世代間の交流事業としてもよいワークショップになっていたのではないかと思います。

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この成果をもとに、YGPのみなさんは八幡浜高校の商業研究部(A★KIND)のみなさんや公募した編集委員とともに、月に2回編集委員会を開催しながら、1月末のまちづくり情報誌の制作を行っていく予定です。

ちなみに、前も書きましたがこのYGPのみなさんの活動に対して、当センターの今年度の「まちづくり活動アシスト事業」に採択して活動助成しています。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

お接待の現場

9月19日(金)に、今治市玉川町にある仙遊寺で行われたお接待の現場に行ってきました。この日、お接待を行ったのは地元の地域づくりグループの「源流」のみなさんです。

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この日は雨の中での「お接待」でしたが、多数の参拝者に対して「おまんじゅう」と「お茶」のお接待をしていましたが、この日はちょうどNHKのロケが行われていて、卓球選手の四元奈緒美さんも参拝され、お接待を受けておられました。

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この源流のみなさんは、この「お接待」とともに里山の整備と間伐、竹林の整備も行い、竹丹や木炭、竹酢液を生産したり、間伐材をつかった看板設置などもしながら、お接待の日にあわせて製品を販売するなど、遍路文化の伝承と地域づくりをテーマにした取り組みをおり、今年度の当センターのまちづくり活動アシスト事業にも採択されています。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)

全国文化的景観地区連絡協議会総会

7月17日・18日にかけて宇和島市で行われました「全国文化的景観地区連絡協議会総会」に参加してきました。

この協議会は、「加盟する自治体が協同して文化的景観の保存整備に関する調査研究、施策の推進並びに情報交換を行い、もって文化的景観をはぐくみ地域住民の生活と文化の向上に資すること」を目的に設立されています。

そして、加盟自治体で持ち回りで年に1回総会を行うのですが、今年度は重要文化的景観に全国で3例目に選定された「遊子水荷浦の段畑」がある宇和島市で開催されたというわけです。

この総会にあわせて、全国の文化的景観選定地および選定候補地の紹介パネル展示や、記念講演、事例報告、情報交換会、現地視察が行われました。

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記念講演では、遊子水荷浦の段畑の保存管理計画策定委員会の委員をされていた広島大学大学院国際協力研究科教授の中越信和氏より「文化的景観への生態学的アプローチ-西四国の事例から-」という演題で、ドイツの文化的景観に関する事例と西四国の事例(遊子と高知県梼原町)を比較しながら、美しい景観を保存するまちづくりについて講演していただきました。

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総会が長引いた関係で当初の予定よりも若干講演時間が短くなったのは残念でしたが、ドイツの事例として、戦争で焼けた街を復興するのに、昔の写真にもとづいて同じ景色に復興した事例や、国土における文化的景観の選定エリアが1/4を占めていて日本が点であるのに対してドイツは面になっていること、景観保護指定地域で路上駐車をすると法律違反になるといったことなど、景観に対する認識の日独の差を紹介していただきました。

そして、遊子の景観保全を考える際に、古代日本では四国のことを「南海道」といっており、基盤は「陸」よりも「海」であったことに再度注目し、現代では陸(=陸上の生活)から海(=海の生活)を見ていることが多いが、もういちど海というものから陸をとらえなおすことが大事ではないか、「里山」ならぬ「里海」を目指していくべきでは?という指摘もいただき、文化的景観は世界遺産にもなる財産であることを述べられて話を締めくくられていました。

次に、事例報告では、すでに国の重要文化的景観に選定されている滋賀県の近江八幡市と高島市、そして今年度に選定される予定の熊本県山都町の3本の報告が行われました。

特に興味をひかれたのは熊本県山都町の文化的景観です。このたび選定される山都町の文化的景観は観光地としても有名になっている「放水する橋」である「通潤橋」を中心とした「通潤用水と白糸台地の棚田景観」です。

この「通潤橋」とは、嘉永7年(1854)に地元の惣庄屋(そうじょうや)であった布田保之助(ふたやすのすけ)が企画、石工達の当時の最高技術を駆使し、村民の献金と労力奉仕のもとに完成したもので、全国でも最大規模の単一アーチ式眼鏡橋として昭和35(1960)年に国の重要文化財に指定されています。

そして注目すべき点は、この通潤橋が「住民たちの献金と労力奉仕でできた橋」ということで、いまでも通潤橋の運営は江戸時代の運営方法を踏襲して住民のみなさんが主体的に行っているということです。

橋をかけるということは今では一般的に行政が行うこととされていますが、当時はこの橋をかけるために藩は一切協力をしていません。つまり「通潤橋」は「住民自治の結晶」ともいえるわけです。「地域の自立」ということが言われている中、この「通潤橋」の歴史から私たちが学ぶことは大きいなあと思うと同時に、近世後期の村落社会の改編について卒業論文を書いた学生時代を思い出しました。

その後行われました「情報交換会」では、全国の景観保存にかかわる方々と意見交換を行いまして、11月に愛媛県で行われる全国大会のPRもあわせて行いました。

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翌日は現地視察ということで水荷浦の視察を行い、はじめに段畑を守ろう会の松田副理事長より説明を行った後、宇和島市教委文化課職員の案内のもと、現地視察を行いました。参加者のみなさんは一様に段畑と宇和海が織りなす美しい風景にみとれていたように思います。

(文責 まちづくり活動部門 研究員 谷本英樹)